謎のギルドカード
わんこと合流して後、雫はわんこが持っていた謎のギルドカードのことをに聞くことにしたのだった。
「まあ別にいいですけど何でこのカードに私の名前が入ってるです?」
雫の一番の疑問はそこであった。わんこが持ってきたギルドカードなのに登録名には「シズ」と記載されていたのだ。
「わんわん」
「代理?何ですかそれ?もう少し分かりやくす説明をしてくれです。私はギルドとやらに行った記憶は無いんですよ。」
何度か説明を聞くが、そもそもゲームの用語に疎い雫がそこまで詳しく分からないわんこに説明を受けても難しいものであった。
そうこうしていると遅れて鉄ちゃんもやって来た。これでようやく雫たちパーティーが全員終結したのだった。
「おお、鉄ちゃん。良いところに来たです。わんこの説明だとワケわからんですから、鉄ちゃんも、と言うか鉄ちゃんが連れてる奴等は小鉄たちですか?どうしたんですか。何があったらそんなに色とりどりになるです。」
ここでまさかの雫の優先順位がギルドカードから小鉄たちに入れ替わってしまう。
「………………」
「キュウ、キュウ」
「ガブガブ」
「グワゥグワゥ」
「凄いです。さっそく何かお祝いでもするです。何が良いですかね。キノコパーティーでもするです?」
もはやギルドカードなど眼中になくなってしまった雫にわんこが注意するが雫は、
「まあそれはもういいです。貰えるのなら貰っとくです。それより今は小鉄たちです。」
結局雫はギルドカードについてほとんど分からないことだらけなのだったのだが、あまり気にすることもなく、そんな事よりも雫にとっては、小鉄たちの大変貌を遂げたことの方が大切なのであった。
しかし雫がわんこから受け取ったギルドカードにはもう一つ重要な情報が記載されていた。
所属クラン ノーネーム
役職 盟主
しかしもはやギルドカードのことなど頭に無い雫では、気づくはずもなくこの記載に雫が気付くのはもう少し先のことであった。
そんな頃、鈴が所属しているクラン「黄昏の巫女」のホームではクランメンバーが全員終結していた。
「結局リューノ、貴方はシズさんに何をさせたかったんですか?折角ギルドに登録させたのならば、私たちのクランに入ってもらえば良かったのではないのですか?シズさんたちの実力は本物でしょうし、今回のクラン対抗戦は陣地取りでしょう。それならば人数は多いに越したことはないでしょう?」
発言した人物はゆりと言う女性プレイヤーであった。このクランでも発言力のあるプレイヤーであったため今回のリューノの回りくどい方法に疑問を抱いていた。
メンバーの中にはシズというプレイヤーを知らないものもいるが、雫を知っている者は皆頷いていた。いつもは他人を認めようともしないウロフでさえ嫌そうな顔をしながらも頷いているのを見ても、その信憑性は上がる。
しかしリューノはゆりの言葉を即座に否定する。
「ふふ。あれは私たちが制御できるレベルのモノではありませんよ。思い通りにさせようとすればするほど、訳のわからない所に行き着いてしまうでしょうし、わんこ殿や鉄ちゃん殿に恨みを買ってしまうでしょう。それならば自由に暴れてもらう方が得策でしょう。
私たちのクランは残念ながら小規模クランですから、勝利にはしっかりとした作戦をある程度こなしてもらわねばなりません。でもそれだけじゃ足りないんですよ。今回のイベントに勝つには大規模クランをも巻き込む波乱が必要なんですよ、出来るだけ大きな波乱がね。」
そう言ったリューノの口元には笑みが浮かんでいた。




