アイテムの性能調節
エリクサーという伝説級の回復アイテムを作り出すことに成功した雫だったのだが、雫の中では完全な失敗作となってしまっており、雫はそれから何度かエリクサーではなく、今までよりも効果が高いポーションの作成に力を入れていた。完全にいらない子扱いのエリクサーであるが、実際の効果は凄いのだ。特にモンスターの中には部位破壊攻撃をしてくるモノも存在し、体力はポーションで回復出来るがそういう欠損は治せないため、そういった場合に重宝するのだ。
しかし雫はそういったことは関係無く攻撃を食らえばほぼ終わりのため他のプレイヤーに比べれば少ないかもしれない。そして雫は謎の探求心を発揮し、ポーション作成を続けていた。ただし全力でポーションを作成するとエリクサーが出来てしまったのでどうにか出来ないかと試行錯誤していた。その甲斐あってか雫はエリクサーを作り出した素材でポーションを作り出すことに成功した。
そのポーションの名は「聖級ポーション」これを使えば対象者を全快させるだけでなく、一定時間自然治癒力を大幅に底上げ出来ると言う代物であった。回復、治癒という観点から見るとエリクサーよりも数段劣っているが雫たちのパーティーで使用することを考えたらちょうど良い性能であった。
「長かったです。錬成の時に少し力を抜く感覚だったですけど、なかなか難しかったです。」
雫はポーション作成を通してスキルの威力の調節を習得したのであった。これはスキルの欄には表れないモノだが有用な技能であった。
「この方法を使えばボムの威力とか爆発の範囲を調節することが出来るかもしれないです。」
この事に気がついた雫は怒濤のポーション作成による疲れも忘れてボム製作に乗り出すのだった。
そんな感じで数日間、雫は久しぶりに生産作業に没頭していたのだ。しかしその作業中、アンフェとシロはいつも通り雫と一緒にいたのだが、わんこと鉄ちゃんの別行動は未だに続いていた。雫も不思議には思いつつも作業に夢中であまり追求はしなかったが、一段落ついた今、気になってきていた。
「コーンコン」
「ねっ本当です。わんこも鉄ちゃんも私を放っておいて何処にいるんですかね?二人ともモンスターの素材が増えたと思ったらすぐ無くなるです。変わってるです。」
雫が調べられることと言えばわんこたちの持ち物くらいなのでチェックしてると、モンスターの素材等が貯まっては消え貯まっては消えるを繰り返しているのだ。意味不明なこの現象に雫は少し戸惑ってしまうがすぐに、
「まあ別にいいけどです。わんこたちにも私から離れて一人で何かしたくなる時もあるです。反抗期ってやつかもですし、そっとしとくです。よし私たちもわんこたちに負けないように頑張っていこうです。」
「~♪~♪」
「コンコン」
雫たちは久しぶりにフィールドで活動をするのであった。
ずーとフィールドでモンスター狩りと素材採取を行った雫は威力調節をしたボムの性能検査も十分にできたため満足な様子であった。結局今日もわんこたちは戻ってこなかったなと、考えながら歩いていると前から訳知り顔の青年、リューノが現れる。
「シズさん。お久しぶりです。少しお話宜しいでしょうか。わんこ殿と鉄ちゃん殿についての話なんですけど。」
しかしリューノは雫の特性を知らない。
「興味ないです。」
そのまま歩き去ってしまいそうになる。リューノは慌てて雫を捕まえる。
「ま、待ってください。話を聞いてください。」
「お前、誰です?馴れ馴れしいです。」
「えっ?」
リューノは考え違いをしている。雫が一回会っただけの人を覚えているはずがないのだ。残念ながらリューノは雫の興味の対象には入っていない。
「それじゃあです。アンフェ」
「ちょっと待ってくだ…」
リューノが最後まで言い切る前にリューノの目の前から雫は消え去ってしまうのだった。
「な、なんて人だ。全く思い通りにならないなんて。仲良さそうにしているからいけると踏んだんですけどね。しかも突然消失しましたか。本当に面白い人だ。」
取り残されたリューノはそれでも笑みを浮かべるのだった。
「ふぅ、なんだったんですかあれ。訳わかんねぇーです。」
リューノを振り切った雫は先程のリューノの言葉を思い出していた。
「何で見ず知らずの人にわんこたちのことを聞かなくちゃならんのです。聞きたかったらわんこたちを再召喚して直接聞くですよ。」
雫は独り言を呟きながら歩いていった。




