マイペース
鉄竜の鉄ちゃんを加えての素材集めは快調であった。
今まで雫を気にして全力を出せなかったわんこも鉄ちゃんのお陰で気にせず戦えるようになったことが大きい。
雫は『知識の到達者』と『到達者』それとレベルアップでのDEXの上がりによっての恩智を感じていた。
「すごいです。今までできなかった組み合わせがどんどんできるです。」
雫の主武器である爆発石は爆発石(大)まで錬成が成功した。
薬草系統にいたっては、上級を飛び越え特級までを錬成できたのだった。
「うーんやっぱりDEXを上げると錬成が上手くいくです。やったです。わんこ、鉄ちゃん」
「わんわん」
「……」
鉄ちゃんからの返事はないが雫は嬉しそうである。
「でもあんまり人がいないです。どうかしたのかです?」
鉄ちゃんを仲間にくわえた雫は、
ある程度奥地まで行動範囲を広げていた。森の方向でなく正規の、一撃熊がいるルートである。
しかしプレイヤーをほとんど見ていないのだ。
図書館などの特殊なフィールドではわかるのだが、普通のフィールドでこれは明らかにおかしい。
「うーん街にはいっぱいプレイヤーいたです。なんかあったです?」
なんかあったのである。
ゲームの一般的なプレイヤーは生産職と戦闘職に別れている。基本的に戦闘職が街の外で戦って素材を集め、生産職に手渡し、生産職がそれから作り出す。そのサイクルで動いているため。生産職は戦闘職が持ってきた素材のレベルに応じた生産しかできないという問題がある。
それは戦闘職にも言えることであるか、
装備が弱いと強いフィールドに行けないのだ。
錬金術師などは個人でプレイするのは不遇職なのだが、こういったとき役に立つのだ。
ただ個人ではやれないため人気がでないのである。
ここで雫がグレードアップした素材をプレイヤーに売ればこの問題は解決するのだが。
雫は基本的にNPCとプレイヤーの区別からできておらず、全部の素材をNPCに売っている。
そういったことがあり、プレイヤーが問題を抱えていた。
しかしそれだけではない。そういった問題はアックス達といったトッププレイヤーではないプレイヤーたちが抱えている問題であった。
トッププレイヤー達は何をしてるかというと
知識の守護者を探すため、正規のルートではないフィールドを探索していたのだった。
何もないフィールドを。
そんなことは露知らず雫はフィールドを進んでいた。
「うーんポーションってのを作りたいです。そのためには水がほしいです。なんかないかです。」
図書館で手に入れた本のなかには錬成のためのレシピのようなものが載っていた。
それによると回復のアイテムもたくさんあることがわかってきた。
「よし水があるところを探すです。いくです。わんこ、鉄ちゃん」
「わんわん」
「……」
雫はやはり周りがどうでもいつも通りマイペースなのであった。




