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雫は亜人の街と孤児院のどちらに植えるかを迷ったが結局孤児院に植えることを決めた。理由としたらよく考えたら亜人の街に安心して植えられる所を雫が知らなかったためであった。
また聖樹の側にいると色々と良いことが多いので折角ならばと雫は思ったのであった。
その旨を孤児院の管理者であるマリアに話すと大変恐縮した様子であった。
「シズさん。色々とやっていただけるのは、嬉しいのですが今回は本当に貴重なものじゃあないですか。聖樹なんて私たちでも知っていますよ。」
「まあ大丈夫です。正直そんな大したもんでもないですし、雑な扱いで構わないです。」
「そんなこと申されましても。」
雫がフォローしてもマリアは終始そんな感じであった。しかし他に候補も特に思い付かないのでほとんど勝手に雫は孤児院に植えるのであった。本当に勝手に物を植える子である。
そんな聖樹の苗の植え替えを終えた雫は当初の予定通り錬金術関連のスキルを中心に研究をするため先輩錬金術師のリクの所に訪れていた。
「へー。聖樹の苗ですか。伝説級のアイテムじゃないですか。薬師が手に入れたら泣いて喜びますよ。全財産売り払っても買いたい人がいると思いますよ。聖樹の苗くらい貴重なアイテムってそう無いですよ…って今更でしたね、龍や九尾。極めつけは御使い様ですからね。シズさんの所に集中しすぎな気がしますよ。」
リクは一人で納得したように頷き話を終わらせた。
「まあ聖樹が育ったら素材は基本的に私の物ですし、少しお裾分けするです。」
「本当ですか。楽しみに待ってますね。聖樹の素材ってレアなだけじゃなくてエルフの独占で希少価値が高まってるんですよね。」
その代わりと言うことではないが雫はリクに錬金術関連のスキルについて色々と教わっていく。
「ってことがあったです。それで精製術が病気の回復に役立ったならもっと他にも応用が利くかもって思ったです。」
「そうですか。とはいえ僕もさすがに精製術を人体に向けて放った経験は無いので言えることは少ないですけど、確かこの街に昔いた錬金術の人でモンスター同士に錬成を使ってキメラを作り出そうと研究していた人がいましたね。まあ成功したのか失敗に終わったのかはわかりませんが…まあとりあえず色々と試してみましょう。」
雫の反応を見てさすがにキメラは無いと悟ったリクは話題を変え早速スキルを試してみることにしたのだった。
『封印』は元からモンスターに向かって使えるスキルであったため今度は発動された魔法に対してスキルが発動するかを確かめてみた。すると一応成功することができた。しかし飛んでくる魔法に触れないといけずタイミングがシビアであった。それは『分解』も同様であった。また『分解』は生身にはさすがに発動しなかったが武器や防具を分解することはできた。しかし、発動してから分解されるまでの時間が長く装備破壊への道のりは険しそうであった。
雫が色々なスキルを実験している間わんこたちも進化して手に入れたが使っていなかったスキルなどの使い方を練習していた。進化した時に影魔法等を吸収してできた上位魔法、「闇夜魔法」の影系統以外の魔法。 鉄ちゃんのフィールド全体を対象にしたスキル『鉄の世界』や威嚇や威圧感等の上位スキルである『王の風格』。アンフェの「神聖魔法」唯一の攻撃魔法「光撃」を使用した戦闘の参加。等々やることはいっぱいなのであった。
そうやって雫たちが色々と新しいことを試していたら久し振りに雫の身にあることが起こった。それは、スキルの進化である。もしかしたら新しいことを色々としたお陰でスキルの経験値が大幅に貯まったのかもしれない。
進化したスキルはいつも使用している『錬成術』と『精製術』である。それらはそれぞれの『錬成の極意』『精製の極意』と名称を変化させた。
「極意ですか。なんかカッコいいです。やったです。」
「す、凄いですね。こんなにも早く2種の極意を手に入れるなんてとんなペースで錬成したらそんななるんですかね。僕もさすがに『精製の極意』は持ってませんよ。」
「まあ頑張ったですしね。」
錬金術師としてもう一段レベルアップした瞬間であった。




