気の合う友人
鈴が転校してきてから数日が経過した。鈴は頭も良く運動神経も抜群で容姿が優れているの相まって凄い人気となっていたが、本人は周りの評価など興味がないようで授業以外の時間は読書に興じるのであった。
「やっぱりこの前会ったのってリンですか。まあ顔とかそっくりですし、見てすぐわかったです。」
「…私も。」
雫と鈴は、読書好きや他人との会話が苦手など似ている点が多くすぐに仲良くなれた。とわいえ端から見ると2人とも自分の世界に入り込んでいるため仲良さそうには見えないのだが。
雫と鈴の間にはあまり会話が無いが小枝が混じるとその限りではない。
「それにしてもしずちゃんとこんなに息が合ってる人って珍しい気がするよ。」
「そうですか?私は小枝とも仲良くしてるつもりです。」
「まあそうなんだけどね。そういうのとは違く て、まあ何て言うか似た者同士ってことかな?」
小枝がそうまとめるも納得できない雫が鈴に尋ねる。
「って小枝が言ってるですけど鈴はどう思うです?」
すると鈴は、
「…何が?」
読書に夢中で雫たちの会話を全く聞いていなかった。
「ほら。そういうマイペースなところとかしずちゃんにそっくりだよ。他にも…そう言えば鈴ちゃんってVVOでも有名だよね。ファンも多いし、私たちのクランでも勧誘したいって噂になってたからね。」
「…そう。」
こうして雫が学校で会話できる友人がまた1人増えたのであった。
そうやって鈴と仲良くなってすぐのこと、雫は第4の街の孤児院に食料を届けたついでに久し振りに第4のフィールドである森のフィールドの中に入って行くことにしたのだったが、森の中を進んでいくと雫の目の前には雫が今までに見た中で一番と言っていいほど綺麗な剣捌きを披露している鈴の姿があった。圧倒的な物量で襲い掛かってくるモンスターたちを的確に切り裂いていくその鈴の姿は流石の一言であった。
雫は鈴がモンスターを倒しきったタイミングを見計らって声をかけた。
「凄いですリン。正直どうやったらあんなにスムーズに動けるか訳わかんねぇーですけど、私でもなんか凄いってことは理解できるです。」
いきなり声をかけられた鈴は、少し警戒したように身構えるがすぐに雫だと気づき警戒を解いて答える。
「…別に」
雫はこの返答に対して嬉しそうに、
「それにしても奇遇ですね。私はゲーム内で知り合いに会うことってあんまり無いんです。リンは、ここで何してるんですか?」
「…レベル上げ。」
鈴にとってはフィールドに出る理由は自明の理なのでそんなことを聞いてきた雫の意図がわからなかった。
「レベル…ああそう言えばかなり前に私の傾向通りにステータスを振ってくれるシステムを見つけてからレベルを考えたことなかったです。そうですか。私はあれです。この頃辛気くさいフィールドでばっかり活動してたですから、まあほんの気晴らしですね。」
レベルの存在を忘れたり気晴らしにフィールドを闊歩していたりしている雫は、鈴の知っているゲーマーとは少しタイプの違うプレイヤーのようであった。これが小枝の言うマイペースなのだと思うのであった。
「ちょうどいいですし、一緒にどこか行かないですか?私あんまりゲームの中で現実の知り合いに会うことって珍しいんです。」
「…そう。…でも」
とはいえ雫は、見た感じパーティーを組んでいるようであったため鈴は特に鉄ちゃんを見て躊躇するが、
「ダメですか?」
雫がじっと見詰めると鈴は、
「…わかった。」
こうやって鈴も了承してくれたため雫は一緒にプレイすることにした。
こうやってパーティーに入った鈴は、いくら第4のフィールドと言ってもわんこや鉄ちゃんに追随して戦闘を行っていた。鈴の戦闘スタイルは二刀流を用いての高速戦闘を軸にしていた。二刀流は、スキルを取得していないプレイヤーでも出来るのだが、剣術スキルなどを上手く扱いきれず逆に弱くなってしまうプレイヤーが多いのだ。しかし鈴はそれらを巧みに操りスキル『二刀流』を正式に取得したプレイヤーであった。
そんな感じで前衛が奮闘している中、アンフェとシロは新スキルを使用したサポートをしていた。アンフェは味方が自動的に回復する領域を作り出し、シロは「妖術」による攪乱と「仙術」による味方の強化を主にしていた。 本当はシロも前に出たいのだが今回は我慢する形となった。
そんな中、雫は、『血操作』を応用して攻撃を繰り出そうとしていた。
「わんこ、鉄ちゃんあとリン。ちょっと退くです。」
そう言われたため鈴たちは退きながら雫を見ると、雫の回りを取り囲むように十数本の短剣が宙を浮いていた。
「…えっ」
「ふふふです。いくです全弾発射です。」
その掛け声と同時に短剣がモンスターたちに向かって発射される。ものの見事に全て命中する。
リンは雫の姿を見て感心するのだった。
雫は、このスキルを実験する中であることを発見する。さすがに体内の血液は操作できないが、血を操りたい物体と錬成する事でこの現象を引き起こすことが出来るのであった。とわいえある程度の量の血液を錬成しないと使えないのが欠点ではあるが、これによって今まで同時に2つまでが限度だった投擲の幅が広かったのであった。




