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戦う錬金術師です(涙目)  作者: 和ふー
第1章 王国編
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吸血鬼の苦難

まず吸血鬼がとった行動は、自分自身の身体を傷つけ血液をばらまくことであった。しかもさすがは吸血鬼の親玉である。血液が撒き散っていることを雫たちが視認した頃には、傷はどこにも見当たらないほど完璧に塞がってしまっていた。そしてすぐさまその血液を武器に変化させる。吸血鬼が作り出したのは巨大な鎌であった。

「私が作り出したこの血鎌を普通の鎌と思わないことですね。」

と話ながら雫たちに接近してくる。その忠告通り、真っ赤な鎌は普通の鎌と違い元々液体であったことが見ただけでわかるようにか、流動的に少しずつ形を変化させていた。

「いきますよ。『首刈り』」

吸血鬼は、鎌のスキルである『首刈り』により凄いスピードで雫の首に向かって鎌を振る。しかも柄の部分が伸びることで予想していた攻撃範囲よりも広がってしまい、雫は反応が出来ないでいた。しかしそんなことはさせまいとわんこがその鎌を影の刃で受け止める。吸血鬼の鎌の形状が変化するのだろうが、変化の度合いで言えばわんこの影には勝てないのであった。

「なっ、影使いですか。厄介ですね。」

「……………」

吸血鬼はそんなことを呟いているがそんな余裕はない。鎌を止められて生じた一瞬の硬直。その隙を狙って鉄ちゃんが吸血鬼に殴りかかる。それは間一髪『蝙蝠化』により、大量の蝙蝠となり回避する。しかしその蝙蝠たちは、移動中にしっかりと補給しておいた魔法銃で狙い打つ。いつもなら縦横無尽に飛び回る蝙蝠に攻撃を食らわせられることはないのだが、雫は正確に1匹ずつ倒していくため、慌てて元の人型に戻るのだった。


吸血鬼は混乱していた。確かに今までにも戦闘で苦戦するときはあったが、ここまで一方的にやられることは無かった。自分よりも応用力のある攻撃を仕掛けてくる狼に、攻撃がほとんど通用しない男、正確無比な援護射撃を続けてくる女の子、極めつけは吸血鬼の最大の特性である再生能力を鈍らせてくる妖精。自分も隠しているスキルなどの奥の手はまだ存在するが、正直ここまで追い込まれるそれらを使っても挽回する策は思い付かないのであった。そのため吸血鬼がとった行動は、時間稼ぎであった。

「すばらしい。本当に貴方たちは称賛に値しますよ。このままだとじきに限界が来てしまうでしょう。ですからね、「パチンッ」」

吸血鬼が指を鳴らすと培養カプセルのガラスが一斉に割れ、中に入っていた人たちが飛び出してきた。

「貴方たちは、私の眷属でも相手取っていて下さい。その隙に…」

と言いながら出てきた眷属から血液を抜き始める。

「なんかやるみたいです。すぐに止めるです。アンフェ。結界を最大で展開です。」

アンフェは自身の魔法で最大出力を誇る「神聖域」を発動する。消費MPは莫大だが、この中に入った眷属たちの動きが著しく落ちる。眷属の中でも位が低い者は領域内にいるだけ倒されるものまで存在した。そんな状態でわんこたちを抑え込むことなど出来ず、すぐに全部の眷属が塵になってしまった。

予想よりも早くに眷属が倒されていく吸血鬼は、焦りながらも迅速に血液を集める。そして最後の眷属が倒されたときギリギリのタイミングで準備が整う。

「ふぅ。危ない危ない。それではいきますよ『血池地獄』」

すると大量の血液が何処からともなく流れ込んでくる。その凄まじい血圧に飲まれまいとわんこは影を使い、雫は鉄ちゃんに抱き抱えてもらい上に逃れる。

「やれやれ、これまでに貯めに貯めた血液と、眷属がほとんど消えてしまいましたよ。これだからこれは使いたくなかったんですよ。しかしこれで血液を操れる私の勝ちが決まったようなものですね。」

と吸血鬼が漏らす。そんな血の池を見ながら雫はというと、

「こんな技使ってこの部屋、潰れないです?」

と吸血鬼に聞くと、大分余裕が出てきた吸血鬼は素直に答えてくれる。

「この部屋はこんなときのためにかなり丈夫に作ってあるからね。」

それを聞いた雫はにっこりと微笑む。

「そうですか。それを聞いて安心したです。この屋敷に来てやっとこれが使えるです。」

雫の台詞に危機感を感じた吸血鬼であったがもう遅い、

「ていっ」

「ドッカーーーーン」

雫が使用したのはマグマボム、威力は普通のボムと変わらないが本当の意味での火力が凄く、血液がすぐさま蒸発してしまった。幸いスキルによって操れていた血液も液体ではなくなってしまったら操れなくなり、消えてしまうようで吸血鬼の奥の手は瞬く間に消失してしまった。

「な、なんだって。血の池が消えた…」

奥の手を潰された吸血鬼にもう次の手は残されていなかった。そして雫たちに立ち向かおうとする気力も残念ながらもう存在しなかったのである。





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