謎の鍵
アンフェの活躍もあり吸血鬼たちをどんどんと倒して進んでいく雫たちであったが、
「カチッカチッ」
室内に急に無機質な音が響く。
「あれ?ヤバイです。弾切れです。」
その音の正体は雫の手にある魔法銃の貯蓄してあった魔力が尽きたことを報せる音であった。いつもの雫たちの戦闘体制は、わんこと鉄ちゃんをシロかアンフェがサポートし、雫が後ろから援護射撃する。そしてサポートを担当しないどちらか一方が魔力のリロードを担当するのだ。
しかし現在シロは不在であり、わんこと鉄ちゃんは、どんどん湧いてくる吸血鬼を倒すのに掛かりっきりであり、その要を今はアンフェが担っているため魔力の再装填が出来ないことを悟った雫は、攻撃方法を失ってしまう。ここでもしもいつものようにボムをぶっぱなすと、最悪の場合は屋敷が倒壊し雫たちは下敷きになってしまうためそれも使えないのであった。
「うう。不味いです。なんとかしないと。…シロ。早く戻ってくるです。」
雫は泣き言を言いながら魔法銃をしまい、その代わりにいくつかの玉を取り出す。わんこたちが吸血鬼の殲滅をしているため、今雫を守る者がいないため、自衛しなければならない雫は牽制のために様々な効果を持つ茸で作り出した玉で突然の襲撃に備えておくのだった。
雫は、茸玉を何回か使用したがこれは対象者にダメージを与える物ではないため、これを食らった吸血鬼たちは眠ったり踊ったり頭にキノコを生やしたりしていたが、雫は吸血鬼たちに危害を加えられることもなく4階の吸血鬼たちも粗方片付いたため上に進もうとしたのだが、
「そういえばこの階も大体見て回ったですけど階段は無かったですね。ということはここで終わりですか。」
上に進むことは出来そうにないため一階に下に通じる階段があったことを思い出しそこに進むことにしたのだが、
「わんわん」
とわんこが雫の元に駆け寄ってくる。口に何かをくわえている様子であった。
「どうしたですわんこ。何ですかこれ。えーと…鍵みたいですね。」
わんこがくわえていたのはこの屋敷のだと思われる鍵。しかしどこの鍵かは全くわからなかった。
「うーん。わんこもこれがどこの鍵かは知らんですか。まあならこれが使える部屋も探しながら下に下がるです。」
と言い。階段を降りていく雫たちであった。
しかし結局この鍵で閉じられた部屋を見つけることはできず、一階に辿り着いた雫たちは、名残惜しいがしょうがなく下に降りていくのだった。
階段を降りていった雫たちが着いた地下一階は、今までの階層とは違い雫たちの目の前に重厚な扉があるだけであった。
「もしかしたらこの扉の鍵です?」
と雫が思うのも無理はないのだが、この扉のどこにも鍵穴はないため雫の考えは違っていた。
そして驚くべきことにこの扉は、雫たち全員がこの扉の前に立つと、
「ギギィィィ。」
と音をたてながら誰も触れていないのに自動で開き始める。それに圧倒されながらも折角開いた扉のため雫たちも中に入っていく。するとその先の部屋の周りにはよくアニメとかに人工生命体とかが保存されていそうな培養カプセルに人が入っている。それが1個だけではなくたくさん並んでいた。
そしてこんな部屋の奥から1人の男が姿を現す。
「おやおや、こんな所にようこそお越しいただきました。」
今までに出てきた吸血鬼たちは言葉を発していなかったため、この屋敷の親玉であると当たりをつけ、雫は気になっていることを尋ねる。
「ここに入ってる人達って行方不明の住民ですか?」
「ええ。そうですね。いつもは夜にこの屋敷を出て近くにいる人族を拐うのですから面倒なんですけどね。今日はそう考えるとついてますね。まさか人族の方がこの屋敷に入って来てくれるとは。あなた方ももうすぐこれらと同じように大事に培養してあげますよ。」
と言う。
「ここの人達って生きてるですか?」
「ええ。私の食用の人族はほかにいますからね。ちゃんと生きていますよ。ただし吸血鬼としてね。私の能力である『眷属化』を使ってね。ここにいるということは屋敷にいた私の眷属たちを見たのではないですか?あれはここにいるようなやつらから生み出されているんですよ。」
と言う。それを聞いた雫は、
「そうですか。」
とだけ呟き戦闘体制を整える。こうして吸血鬼の親玉との戦闘が開始するのだった。




