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ハイエルフと行く異世界の旅  作者: めたるぞんび
第6章:宮廷秘書官の探索と救出作戦の旅 [前篇]
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道すがらの反省会と成績結果の旅

 瑛斗vs.ドラッセルとの対人戦闘訓練――もとい、模擬決闘が幕を閉じて。

 アーデライードの手によって治療と休息を終え、結束を再び固めて合流した探索一行は、名も無き隠れ里へと向かう途中である。


 期末テストが無事に終わり、今日から三日間は試験休みの真っ只中となった。瑛斗の自己採点によると、全教科は平均点以上の成果を収めた手応えあり。徹夜をしてまで猛勉強した甲斐はあった。これで赤点さえ免れれば、エルヴィーラ探索の達成を目指して、大手を振って異世界中を闊歩できるというものだ。


「そうか、なるほどな。だから猛勉強とやらをしつつ、戦士技能(ファイタースキル)の連続技も考えてた……って、そういうことだな」

「そう。剣術もそうだけど、技能(スキル)の組み合わせも考えないとね」


 瑛斗は隠れ里へと続く石畳を踏みつつ、ドラッセルと肩を並べて歩く。

 どうやら戦士技能の談義にて、会話に花が咲いたようである。


「だから机にかじりついてても、つい考えちゃうんだ」

「ううむ、やはり技能の連続技は必要不可欠か……もう再考せんといかんな」

「でも技能を連発すると反動で、体力消耗や技能再時間(クールダウン)なんかの時間差もあるんだぜ?」


 もう失敗は繰り返せんと、真面目な瑛斗は口唇を噛み締める改悛のような顔をした。

 ドラッセルも腕組みしながら顎を触りつつ、思案しつつ私見を述べる。


「そうだな……しかしな、魔力(オド)精気(マナ)の代償はあれど、今回の件でエイトが放った流れるような連続攻撃は、かなり役に立ったと認識したぞ」

「嬉しい話だな。でも技能の単発か、それとも組み合わせの連発か。時や状況によってどちらを選択できるか……ううーん、なかなか難しいな」

「いや、それが戦闘における最高潮の極意なんだよ。いや、今回は技能の連携との釣り合いこそが大事だなと、オレは痛感したんだぜ?」

「最高潮の極意か……そうなると俄然、やる気が出るな」

「ぷっ……ワッハハハッ! エイトらしいや!」


 これはいつもの定番通りに、ドラッセルが瑛斗の背中をバンバンと叩く。

 カッコ良さげな言葉につい反応しちゃう、ちょっぴりお茶目な『中二病』気味であった。

 どうやら会話に花が咲くどころか、春満開で咲き誇っているようだ。


「ふふっ」


 その和気藹々な後ろ姿を眺めていた女性陣は、心の中で微笑んでいた。

 ソフィアは顔をニヨニヨしながら「やっぱり二人とも仲良くなってるなぁ」と何故か感心する。その一方、ホクホク顔で「若さって大事よねぇ」と謎の親目線とともに「辛くも決闘なる重大異常事態(インシデント)は免れたのだ……ヨシ!」と、現場猫みたいに自らを褒めるアーデライード。それを横目に眺めながら冷ややかな笑みで「こんなダメエルフになってはならない」と心に誓うレイシャである。


「ところで話は変わるけど、捜査の進捗はどうだった?」

「まぁ、芳しくはないね。捜査を進めるたびに、ドツボにハマっている感じだ」

「今回の建前と真の目的は?」

「言っちゃ悪い話だが、表向きは隠れ里の視察や警備、防衛と称してだ。でも実際は、隠れ里の身元や身辺調査、状況や環境など。それに例の屋敷やお香の件もあるしな……現場百遍、地味であり丹念な作業なんだよ」


 何かを感じとった瑛斗が「ふむ」と小首を傾げながら、後ろの方を指差した。


「ところでドラッセル、さっき戻ってきたあの馬は?」

「ああ、それはだな……」

「私の愛馬よ。私がエルヴィーラ探索を開始して三日目だわ」


 そこで耳聡いソフィアが、打って変ってブツクサと文句を垂れる。


「昨日は森の外れで野営を取っていたドラッセルに、会いに行ったからね」

「ああ、だから取り急ぎ、森の野営地から馬を戻しに来たんだな」

「私の愛馬を、放置しておくわけにもいかないからね……!」


 確かに――馬の手綱を持って誘導したのは、ソフィアである。

 他にもテントなどの荷物が馬の背にはきちんと乗せてある。世話好きなソフィアが、そこに残されていた野営の用品などを、あらかた片付けたのであろう。

 そこでソフィアとドラッセルが、火花散る臨戦態勢に入り始めていた。


「なのに、無茶で無謀な事をし始めて、私をほっぽっといて、これ」

「そりゃ悪かったな」

「あなたを引き留めるのに、馬を置いておくしかないじゃない!」


 ソフィアとドラッセルは、昨日の夕刻から夜通し話し合ったという。

 人気(ひとけ)が少ない森を狙って待ち合わせ、情報をすり合わせるためである。

 それでも決着はつかず。そこで一度は、仮眠をとったらしいが――


「そんなことだから気が気じゃなくて、休日返上してまで顔を出したのに!」

「ほぅ、休日出勤でお気に召さなかったか?」

「だ、か、ら、平日でも休日でも公都の激務が終わったら、エルヴィーラ探索のために這いつくばってでも、ここへ足を運んだつもりなんだけれど?」


 さらに仏頂面となったソフィアが、蔑むようにジト目する。

 公国府から食料や資材の搬入、里の仮宿舎設営など、準備に時間が掛かったらしい。要するに、山のような仕事でイライラが溜まっているのだ。


「当然だけど、証拠や検証などのために、わざわざ一人でここまで来たのよ?」

「あーはいはい。チクチクと棘のあるポニーちゃんが、わざわざどーも」


 ポニーちゃんとは、騎士学校時代からずっとポニーテールをつけていたソフィアの愛称である。

 それにお気に召さないご様子で、双方とも何かがプツンと切れた。


「短気なのよ、この猪武者の大男」

「いちいち煩いんだよ、軽口女」


 すぐさま反応したか、ソフィアは元の定位置へと踵を返す。

 もちろん、天下より誉れ高き森の貴婦人なるお方のお隣である。


「ちょっと聞いてよ、アデルさん!」

「なにさ?」


 すぐ隣に並んで歩くアーデライードへ陰口――もとい、報告する。


「このバカ、こんな感じで朝っぱらからちょっとした言い合いでイザコザ始めちゃって! そしたら突然「隠れ里の屋敷へ乗り込む!」とか、無謀なことを言い出したのよ!」

「ほほぅ?」

「それで「もういい!」とか自棄(ヤケ)になって、とっとと出て行っちゃって。おかげで追いかけなきゃならなくて。結局は愛馬や荷物や野営の状況も、そのまんま置いたままだし、全てが元の木阿弥だったしで、本ッ当に散々だったわ!」

「いやいやいや、待て待て……」


 その後ろから振り返ったドラッセルが、困惑気味に口を挟む。

 六英雄の一人であるアーデライードの御前では、流石に恐れ入る他になし。


「元はと言えば、ソフィアが「今日の休暇が台無し」とか呟いていたからだろ!」

「それはそれ、これはこれ! 職場の愚痴くらい寛容にしなさいよ! そもそも私だって休みたい時は休みたいわよ! それでも私が尊敬してるエルヴィーラ探索に行くべきところは行くわ! けれど、何で急に救出の探索と実況見分の解明、根拠や事実の裏付けもなしに、何で自分勝手に考えもなくズケズケと首を突っ込んでいくわけ?!」

「それは、その、あの、なんだな……」


 口で捲し立てたソフィアに対して、しどろもどろのドラッセルはドン引きした。


「それはその、野生の勘というか、直感を信じてだな……」

「まずは現況や真相を見極めて、物的証拠を基に客観的事実を示すべきだわ!」

「ぐっぬ、それは……」


 正論である。ドラッセル以外の全員がソフィアに拍手を送った。

 よって憐れにも、窮屈に身体を縮めてタジタジとなった、ただの大男である。

 それを見た瑛斗は、うすら笑いを浮かべてこう言い切った。


「今回はソフィアの圧勝だな、ドラ」

「うっく……」


 審査結果の瑛斗に続き、アーデライードが筆頭に女性陣の賛成票が続々と届く。


「ま、それはそうよね。デカブツの莫迦だもん」

「そうよ、大バカよ……ドラッセルのバカ」

「しっ、失敬な!」

「ばか」

「レ、レイシャまで、そう言うなよ……」


 さらに端を発した審査長の瑛斗が追い打ちをかける。


「ほらな、みんなの尻に敷かれているよ」

「う、うるせー!」


 恥ずかしさを隠したドラッセルは、さっさと先へと進んでしまった。

 それを尻目に、アーデライードが瑛斗の隣に音もなくつつつっと寄ってきた。


「で?」


 最短文の疑問に対し、瑛斗は馴染んだように判っている。

 恐らくは、第一学期の期末テストの答案についてであろう。


「バッチリだったよ。答え合わせを何度も確認したしね」

「んふー、ならばよろしい!」


 と、向日葵の花のように喜々満面と咲き誇るアーデライード。

 もちろん、瑛斗の帰りをずっと待ちに待ちかねていたからである。

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