-Practice makes perfect-
二章 -Practice makes perfect-
シャルが入署してきた日の翌日。
クルは不機嫌そうな顔をして廊下を歩いていた。
既に皆は食堂でそれぞれ食事を取っている。そこへ来ていないのは、631号室の3人だけだ。
「ったく……。面倒くさい仕事増やすなよ」
631号室の前に立ってドアをノックする。
「起きろー。起床時間20分経過まで後5秒……」
中が騒々しい。バタバタと足音が響き、焦っているような声が聞こえる。
「4……3……2……1……」
時計に目をやっていたクルが顔を上げる。
「タイムアッ」
「起きました!!」
ドアが勢いよく開いた。カーサだ。いつもはバッチリきめてある髪の毛が今日はボサボサである。その後ろには、レイマンがいる。そしてそのレイマンに両脇を支えられるようにして、半分夢の中のシャルが立っていた。
「……」
クルは睨むようにカーサを見る。
その視線にカーサは大きな声で謝った。
「すみません!」
「昨日の夜、何してた?」
カーサは苦笑する。
「シャルの、ちょっとした歓迎会です」
「就寝時刻は?」
「ちゃんと十二時に寝ましたよ。でもちょっと騒ぎすぎて疲れて……」
クルは呆れたように息を吐いた。
「ま、大目に見るけど」
「ありがとうございます!」
後ろでレイマンもホッと胸を撫で下ろしていた。
クルは部屋を覗き込んでレイマンを見る。
「レイマン先輩も、ちゃんとしてくださいよ」
「すまない」
心底申し訳なさそうに言う彼に、クルは呆れたように踵を返し、カーサに言った。
「早めに来いよ。ネアン達が困ってる」
「はい」
ドアを閉めるとカーサは大きく息を吐く。
「危なかった……」
そしてまだ眠そうなシャルを見た。
「起きてるか?」
シャルは何やら寝言を言っている。
「寝ているな」
レイマンが苦笑すると、カーサはシャルに近づいて彼の頭を思いっきり叩いた。
「いたっ!」
夢から現実に引き戻されたシャルの耳にカーサの声が飛び込んでくる。
「起きろ。起床時間から20分過ぎたぜ」
シャルは目を丸くさせながら頭をさする。
「え?あ、すみません」
「いや。私たちも実際さっきまで寝ていたからな。だが覚えておいた方がいいよ。起床時間から20分過ぎても食堂に行かなかったら罰が下される」
「え!?」
「大丈夫だ。今日はクルが大目に見てくれたから、寮長には黙っておいてくれるだろう」
「そうなんですか?」
するとカーサが言った。
「ほら、さっさと着替えろ。食堂行くぞ」
「あ、はい」
シャルが着替えている間にカーサは手際よく髪をセットしていた。
「着替え、終わりました」
「んじゃ出発」
そう言ってカーサはドアを開ける。足早に食堂へ向かった。皆は既に席についていて、食べ終わっている者もたくさんいた。
「遅いぜ。お寝坊トリオ」
3人が並んで座ったその前にディーズがいて、ニヤニヤと笑っている。
カーサは軽く舌打ちをした。
「……しばらく言われるな」
レイマンは苦笑いを浮かべる。
「しょうがないさ。悪いのは私たちだからね」
ディーズはテーブルに肘をついてシャルを見た。
「よう、俊足無鉄砲バカ。調子はどうだ?」
「……ボチボチ?」
ディーズはクスクス笑う。
「そうか。今日ははりきっていけよ。入署2日目にして総監とご対面だからな」
「総監とですか?」
「ああ。お前がどこの課に入るかが決定した。飯食って7時に13階の一番奥の部屋に行け」
「はい!」
シャルは敬礼をしながら元気よく言った。
「お?ついにか。同じ課だといいな」
カーサが笑って横から言ってきた。
「はい」
シャルは微笑んで返す。
急いで朝食を終えるとシャルは寮から署へ走った。
「えーっと……13階の一番奥の部屋」
エレベータを降り、キョロキョロと周囲を見回しながら奥へ進む。突き当たりに、ドアが見えた。
シャルは腕時計に目をやる。予定時間の5分前だった。
「……入ってもいいのかな?」
小さく呟く。
すると、中から突然女の声がした。
「入りなさい」
「!」
驚いたシャルは思わず顔を上げて背筋を伸ばした。
「どうしたの?入りなさい」
再び声が聞こえて、シャルはガチガチのまま返事をした。
「は、はい!失礼します!」
そしてぎこちない動きでドアを開けた。
中には円形のテーブルがあり、そこに女が一人座っていた。明るい茶色の髪を流し、茶色の瞳は微笑んでいるが、どこか恐ろしさを感じさせる美しさを持っていた。
彼女はスッとシャルを見た。その目力と有無を言わせぬ気迫にシャルは思わず右足が少し下がった。
「シャル・レンダー君ね?」
「はい!昨日入所しました、シャル・レンダーです」
姿勢を正し、敬礼をする。
「ごめんなさいね。あとの2人は仕事で抜けているの」
「いいえ」
「さて、貴方の所属する課が決まったわ」
シャルはゴクリと唾を飲む。
「あなたの所属する課は」
その瞳がスッとシャルの瞳を捕らえた。
「交通課」
「交通課……」
彼女は優しく笑った。
「交通課班長はディーズ・レイト。会ったことあるわね?」
「はい」
「では、後は彼に任せるわ。下がりなさい」
「はい!」
再び敬礼をするとシャルは静かに部屋を出た。
そしてしばらく行った所で角を曲がる。そこで気が抜けて、その場に座り込んだ。バクバク鳴っている心臓を抑えようと、左胸に手を当てた。
「……なんなんだ……あの圧迫感」
あの部屋だけ、空気が違った。入った瞬間ピリピリとした感じが襲ってきて、何か重い物がのしかかったような。
総監は笑ってはいたが、しかしとても穏やかな雰囲気とは言えない。
それに、あの時。
『入りなさい』
まるで自分の動きや言葉、そして心までもが見透かされていたようだった。
「総監って……何者だ?」
「さぁ?」
突然上から声がしてシャルは飛び上がった。
「うわぁ!?」
「何?そんなビックリした?」
そこにいたのはディーズだった。
「先輩」
「総監からお前が交通課に入ったからよろしくって連絡来たから迎えにきたんだよ」
「あ、ありがとうございます」
彼はニッと笑う。
「お前も今日から交通課。よろしくな」
「はい。よろしくお願いします!」
「しっかり働けよ」
「はい!」
彼はシャルに背を向けるとスタスタと歩き出す。
「じゃ、交通課の部屋行くぜ」
シャルは慌てて彼に着いて行った。
部屋は3階にあった。『交通課』と書かれたプレートの下のドアをディーズが開けた。
「新人さん到着」
ディーズがそう言って中へ入り、シャルもそれに続こうと部屋の中へ足を一歩踏み出した瞬間、
パァーン!
突如鳴り響いた破裂音に、何事かとシャルが目を丸くし身構えると、髪の毛に紙の細い帯が絡みつく。紙ふぶきもチラホラ舞っていた。
「……へ?」
呆然としているシャルの目に、クラッカーを持つ目の前の男女はそれぞれ腹を抱えて笑った。
「あっはっは!大成功や」
「なにその顔。サイコー!」
「……?」
どういう意味か、と目でディーズに問うが彼はもう机についてノートを開いていた。こちらのことなどまるで無視である。
もう一度目の前の男女に視線を移す。
男は短髪でかなり背が高く、体格もガッチリしている。顎に髭を生やしていて、右の眉に小さな傷があった。
女の、エメラルド色をしたセミロングの髪はひどいクセ毛で、あちこち好き放題にハネていた。
呆然としていると大男がクスクス笑いながらなまった口調で言う。
「悪いなぁ。ディーズがからかい甲斐のある新人やって言うもんやから」
今度は女が、
「早速、余ってたクラッカー持ち出したってわけ」
まだ呆然としていると、今度は部屋の隅からため息交じりの声が聞こえた。
「ほら、やっぱり困ってるじゃないですか」
見ると眼鏡をかけた女がいる。茶髪で三つ編みの真面目そうな人だ。
男はケラケラ笑う。
「ええやないか。歓迎会は盛大に」
三つ編みの女が眼鏡を上げながら言った。
「掃除は先輩達でしてくださいよ」
クラッカーを持っていた女はニコリと笑う。
「そういうのは、後輩ちゃんがやるもんじゃないの?」
「どうして私が」
「後輩ちゃんだから」
「理由になってないです」
「あのぉ……」
訳が分からなくなってきたシャルはおずおずと声を発する。
すると男がニカッと笑う。
「おう、悪いな。俺はラウナル・イオン。この課では一番年上で、勤務年数も一番長いんや。よろしく頼むで」
「シャル・レンダーです。よろしくお願いします」
今度はクラッカーを持っていた女が微笑んだ。
「キール・エナだよ。よろしくー」
「よろしくお願いします」
最後に眼鏡の女が、
「モカ・テキンソンです」
するとディーズがそこでやっとシャルを見る。
「交通課にはあと一人いるけど今は出てる」
キールはニコニコ笑った。
「今日から我らが交通課も総勢六人だね」
シャルは目を丸くする。
「え……?自分を入れてもたった六人なんですか?」
「そやで。なんや、悪いんか?」
「いいえ。……ただ、交通課って忙しそうなのにそんなに少なくて大丈夫なのかなぁ……と」
「特に問題はないです」
あっさりとモカが流す。
「どうしてですか?」
するとディーズがニヤリと笑った。
「俺たちの仕事ぶりがいいから」
キールもまた笑っている。
「総監サマにはいっつも褒められてんだよ」
ラウナルは得意げに言った。
「交通課の仕事ぶりには毎回驚かされる。その少ない人数でよおこれだけ早く的確に仕事ができるもんや、ってな」
「……」
呆然としているシャルの顔を、モカのその大きな飴色の瞳が覗き込んできた。
「どうしましたか?具合でも悪いんですか?」
「いいえ。……ただ、そんなすごい人達ばかりで、自分は足引っ張らないかなと」
「平気平気」
キールが笑って言った。
「慣れたら失敗したことなんていい思い出になるって」
シャルは苦笑する。
「失敗すること前提ですか……」
「当たり前。だって君」
彼女は楽しそうだ。
「俊足無鉄砲バカなんでしょ?」
「先輩!?」
ディーズを見た。彼は肩をすくめる。
「事実だろ?嘘は言ってねぇよ」
「な……」
言葉を失ったシャルをキールは指差して笑う。
「あっはは。君ホントサイコー!」
するとモカが割り込んできた。
「新人いじりもいい加減にしてください。早く制服に着替えてもらって課の説明してくださいよ。キール先輩に任された仕事なんですから」
キールは口を尖らせた。
「後輩ちゃんはマジメだねぇ」
「義務です」
「そっか。じゃ、ラウナル、後はよろしく」
ラウナルは軽くキールを睨む。
「あんた後輩のくせに生意気やで」
「いーじゃないの。今に始まったことじゃなし」
「反省しろや」
「シテマスヨォ」
「……」
「ほらほら、早く新人君に指示してクダサイヨォ」
するとラウナルはディーズに目をやる。彼は黙々と何やら書類に目を通している。ラウナルはため息をついた。そしてそのすぐ後に、ニコニコ笑いながらモカを見る。
「モカ」
「……なんですか?」
嫌な予感がし、僅かに反応が遅れる。モカのその予感は的中した。
「ほな、頼むで」
「私には先ほどラウナル先輩とキール先輩に押し付けられた別の仕事が」
「生意気やで。後輩のくせに」
「……」
モカは睨むようにラウナルを見た後、部屋の隅にあるロッカーを開けた。そしてそこからラベル警察署の制服を取り出すと、シャルの前まで来る。
「制服です。奥の資料室で着替えてください」
「はい」
それを受け取るとシャルは奥の部屋へ入った。
制服は紺色で丈夫な物だった。ズボンをはいて上着を着る。新しい物だからか、なんとも動きにくい。ピストルを入れるホルダーを右腰に、小物を入れるポーチを左腰にして部屋を出る。
「着替え終わりました」
するとモカが小さくシャルを呼ぶ。そっちへ行くと、彼女は目の前の机に手を置いた。
「こちらがシャルさんの机です」
何も置かれていないきれいな机だった。
この部屋は物が多く、そこら中に本や書類が置いてあってかなり散らかっている。そんな中今までずっとこの机の上に何も置かれていなかったとは考えにくい。
シャルは首を傾げた。
「……ここ、ひょっとして今まで物置状態でした?」
「はい。そうです」
彼女が頷いた。
まだ彼らとは少ししか関わっていないが、先ほどのこの交通課メンバーの会話を聞いている限りでは、とてもディーズやキールやラウナルが物置状態だった机の上を片付けたとは思えない。
「ひょっとして、モカ先輩が片付けてくれたんですか?」
「はい。そうですけど、それがどうかしましたか?」
シャルは微笑んだ。
「ありがとうございます」
モカは目を丸くした。呆然としている。
「?」
突然動かなくなった彼女にシャルはキョトンとする。
すると、シャルの机の前の席についていたキールが、立ててある本の奥から楽しそうに言った。
「あれれ?どうしたの?後輩ちゃんと新人くん。小さなことから恋が芽生えた?」
「な!」
モカが顔を真っ赤にしてキールを見た。
「何言ってるんですか先輩!」
彼女はケラケラ笑う。
「ほんと我が後輩は二人ともサイコーだね。からかいがいがあって毎日楽しみだ」
「遊ばないで仕事してください!」
「はいはーい。こう見えても今日はちゃんと仕事してるんだけどなぁー」
「だったら入ってこないでください」
「君達の愛の領域に?」
「先輩!!」
これにはさすがにシャルも怒鳴った。
するとシャルの机の隣の席にいたラウナルが声を上げて笑った。
「あんたらほんまおもろいわ」
「からかわないでください」
「からかい甲斐のある奴からかわんかったら損やで損」
「もう……。ディーズ先輩!班長として何か言ってください」
モカの呼びかけに彼は顔を上げると、微笑んだ。
「悪いな。俺は優しいから恋に落ちた君達の邪魔はできないぜ」
「先輩!!」
シャルは軽い疲労を感じてため息をついた。
しかしモカは彼らの言うことにいちいち歯向かっている。そんな必死な彼女を見ていたら、ラウナル達がからかう理由も分かる気がする。
シャルは思わず小さく笑ってしまった。
「笑い事ではないです。あなたも被害者なのですよ」
「すみません」
モカは咳払いを一つした。
「先輩たちは放って置いて、説明の続きをします」
「あ、後輩ちゃんひどーい」
キールがふくれっ面をしたがモカは完全に無視をした。
「基本的に交通課は仕事の指示があるまでこの部屋で仕事をします。その内容は、書類整理や検問時の分担の確認などです。外の仕事では事故などがあった場合の車の誘導、検問、パトロールなどです。パトロールは毎日午前中と午後に別れて二人一組で行います。飲酒運転などの取締りをする検問は定期的に行います」
「はい」
「シャルさんは今日の午後からラウナル先輩とパトロールに行ってください」
「わかりました」
「それから、もしパトロール中に何か事件を目撃したらよく考えて行動してください」
「事件?」
「万引きや引ったくり、痴漢などの現行犯でしか逮捕できない場合は直ちに犯人の追跡をお願いします。二人で対応できない場合はこちらに連絡を入れてください」
「分かりました」
「シャルさんはまだ拳銃の使い方を教わっていないので、拳銃は渡すことはできませんが、手錠と鍵を渡しておきます」
モカはそれらをシャルに手渡した。受け取ると腰のポーチに入れる。
そこでシャルは首を傾げた。
「拳銃の使い方なら、警察学校で教わりましたけど……」
「警察学校での拳銃の試験に合格しても、規則として署でも射撃の練習を受けてからでないと、拳銃が使用できないことになっているんです。射撃の練習については、今日の仕事が終わり次第受付に行ってください。そこで訓練の日時と教師を設定してもらえます」
「はい」
すると、部屋のドアが開いた。キールはそちらを見もしないでニッと笑う。
「交通課、全員集合」
ドアを開けて入ってきたのは二十代後半と思われる男だった。細く鋭い黒い瞳を持ち、茶色の髪の、肩幅の広い男である。
彼は一歩部屋へ入るなり、床を睨んだ。そこには先ほどキールとラウナルが使ったクラッカーから飛び出した紙ふぶきや紙の帯が、ゴミとなって散乱していた。
「……」
彼は顔を上げるとキールとラウナルを睨む。
「キール、ラウナル、掃除しろ」
低い声だった。不機嫌そうで、逆らってはいけないとシャルは直感で思った。
だが、キールは平然と首を横に振る。
「あたしじゃないよ。それはディーズがやったの」
ラウナルも両手を顔の横まで上げて首を横へ振る。
「俺もちゃうで。モカや」
「なっ!」
モカが目を見開いてラウナルを見た。
男はその切れ長の細い目を一層細くした。冷たい視線がキールとラウナルを捕らえる。
「嘘を付くな。どうせモカが入所した時に使ったクラッカーの余りだろう。以前もお前達2人がやっていたではないか」
「証拠はあるのー?」
「せやせや」
男は口の端を上げて冷たく笑う。
「それなら、指紋検査をしても文句は言うなよ」
「そないなことに指紋検査するほど署は暇ちゃうで」
するとシャルがおずおずと言った。
「あの……。自分が掃除しましょうか?」
男はスッとシャルを見た。そしてディーズに視線を移す。
「こいつが昨日お前の言っていた新人か?」
ディーズは頷く。
「そ。我らが交通課に入ることになったんだ」
男はシャルの前まで来ると、笑いもせずに言った。
「交通課副班長のヴァウェル・オリントだ」
「シャル・レンダーです。よろしくお願いします」
愛想よく笑って自己紹介をしたが、ヴァウェルはクルリと踵を返すとラウナルを見下ろす。
「さっさと掃除しろ」
ラウナルは頭をかきながらゆっくりと立ち上がった。
「キール、やるで」
「えぇ?面倒臭いなぁ……」
ゆっくりと掃除用具の入ったロッカーを開ける二人の背にヴァウェルの鋭い声が飛ぶ。
「お前たちがやったんだろう。面倒臭がるな」
「ホント、副班長サンは厳しいんだから」
「お前がいい加減すぎるだけだ」
吐き捨てるように言うとヴァウェルは自分の席に座って地図を広げた。
モカはシャルの方を向く。
「では、シャルさんには書類の整理をお願いします。まずこの書類を――」
机に置いた書類の山を前に、モカは仕事を教えてくれた。
入口付近ではキールとラウナルがぶつぶつ言いながら、時折ふざけ合いながら掃除をし、ディーズとヴァウェルはもくもくと仕事をこなしている。
個性的なメンバーに囲まれ、果たしてこの課でやっていけるのだろうか。
そんな不安がふとよぎったが、モカの丁寧な説明を聞き逃すまいと、シャルは気を引き締めた。