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このファンタジーな世界には、人間の他に獣人族、魔人族、妖精族、魚人族など様々な種が存在するらしい。


獣人とはその名の通り、身体の一部が獣の様相をしており、身体能力に優れた種族だが、この世界での地位が低く、奴隷身分として売り買いされる者も多いとか。けしからん!!もふもふはもっと愛されるべきだ!!

で、魔人族というのは、魔力が強く、寿命も長い種族で、竜人や鬼、翼人等、色んな種族がいるらしい。獣人との違いは、寿命の長さと魔力の有無なんだとか。

妖精族はファンタジーお約束のエルフさん、魔人族同様に長寿で、精霊を使役した精霊術の使い手。魚人族は海底、湖底の都市に住む、まあエラ呼吸できる種族だね。


ここはアヴァンディール王国の東、ルーキス=オルトゥス辺境伯領の都市ノクスだ。

ノクスは辺境といわれながらもこの国では2番目に栄えている。ルーキス=オルトゥス辺境伯は本来は伯爵位でありながら、その実は侯爵位を認められているそうだから、随分とやり手な御領主様らしい。


ルーキス=オルトゥス辺境伯領の北には魔人族が住む魔族国がある。魔族国とルーキス=オルトゥス辺境伯領を隔てる北の森には、魔窟と呼ばれる魔獣がわんさか湧き出る地下迷宮がある為、北の森には危険な害獣・魔獣が多く生息している。


魔族国と辺境伯領との関係は友好で、年に1度、共同で増えすぎた魔獣の討伐も行っているそうだ。魔獣って何さ?と聞いたら、所謂、害獣やファンタジーでいうところのモンスターでした。


で、西もこれまた魔獣がウヨウヨいる森と魔石鉱山。東には港があって、東の大陸との交易の重要な拠点。南西の本街道を下ると、大きな山河を越えて他領へと続くらしい。

あら、我が家は結構危険な地帯に立地しているのね。


アル君はその辺境伯領の領主様からの依頼で、騎士達に同行してきたらしい。お抱え魔術師かと思ったらフリーランスなのだそうだ。何でも王宮魔術師への推挙を断って、自由気ままに、魔術研究やら冒険者紛いなことをしているらしい。

領主様とは昔からの既知という事もあり、ここルーキス=オルトゥス領をホームとして活動しているそうだ。

まあ、王宮からの要請を断った時点で、王都での生活は難しいでしょうね。


「で、その御領主様とやらが俺達に会いたいと?」

「はい、異界からの渡り人を保護したいとおっしゃっておいでです」

「保護ねぇ………」


兄は眼下に座っている一同を見下ろして、冷やかに言い放つ。


「たった一晩で突如現れた異世界の建築物。どんな技術があるのか分からないよなぁ。もしかしたら、自分達には考えもつかない大量殺人兵器なんかを持ってる可能性だってある。やってきた異世界人が友好的かつ平和的人種だとも限らない、好戦的民族なのかもしれないし、殺人鬼かもしれない。大方、警戒対象として斥候に来てみたが、特に危険な人種ではなさそうだから、一応は取り込んでおこうって魂胆か?役に立ちそうな異世界の技術が手に入れば良し。なくても損はしない。万一、不利益が生じそうな状況だったら、さっさと処分してしまえばいいか―――ってところか?」


言い終えてニコリと笑みを向けるが、兄の後ろには「おびオドロの効果線」が見えるようだ。魔王様降臨!?


「………け、けして…敵意があった訳ではなく」

「そういや、たいちょー。結界に弾かれてたよね」

「シ…シズク殿…それは…」


隊長、副隊長がうろたえる。仮にも騎士様がパンピーの忍兄に気押されてどうする!


「シノブ様―――誤解させてしまったことはお詫びいたします。しかし我々にお2人を傷付ける意向はありません。騎士達の武装は市内巡回時と同じものですし、西の森入口のこの付近で、魔獣を目撃したという話もよく聞きます。異界からの渡り人を保護し、護衛する為に必要な武装だったと御理解いただきたく………シュルツ隊長の件については、未知な魔道具を警戒するあまりに、過剰反応してしまったこちらの対応に問題があったと理解します。お望みであれば、それ相応の処罰を伯爵に進言しておきますが?」


アル君が謝罪し、さらには隊長であるシュルツさんを処罰してもいいと言い切った。

それはアル君がそれなりのしかも騎士達よりも上の権限を持っているという事だ。


「ああぁー分かった。アルフレッドとその他2名の謝罪を受け入れよう」


あ、隊長、副隊長…その他扱い。


「だがしかし、今後如何なる理由があろうとも、妹に手を出したら殺す!」


はい、うちの兄はシスコンです。


「ねえ、アル君?さっき外にいたのってゴブリンだよね。この辺りは多いの?」

「いえ、森の奥で見かける事はありますが、都市の近くにまで来ることは稀です。おそらくですが、この家が出現した際に共に発生した魔素…えっと、魔素とは魔力の元になる物質ですが、次元の歪みや、転移魔術式の展開による空間の歪の影響で、磁場が狂い魔素が濃くなることがあります。あれらの魔獣はその魔素に惹かれてやって来たのだと思います。魔獣は魔力が好きですから…我々が異界人の渡りに気付いたのも、その魔素を探知したからなんですよ」

「へぇー」


魔力かー、私にも魔力はあるのだろうか?せっかく異世界トリップしたのだから、チートでなくてもいい!魔法を使ってみたい!魔法で空を飛んでみたいし、あ?姿を消す魔法ってあるのかな?光学迷彩とか、透明マント的な?そしたらあんなことやこんなこと…ムフフ。よし!機会があったらアル君に頼んで魔法を教えてもらおう――と、密かな野望を抱き独り妄想していると、「ところで…」と兄が真剣な面持ちで一同を見据えて言った。


「あの緑のやつは食えるのか?」

「…………」

「…………」

「…………」


兄と私以外の3人がフリーズ。


「………ゴ、ゴブリンの話だよな?」

「…っ!くっ、食う気だったのか!?」

「……た、食べるという話は聞きませんが」


「―――そうか、食えないのか。ならいいんだ、悪いが適当に処分しといてくれ」


「「「………で、ですよねー」」」


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