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「サルジュ・ザフラ?…ごめん、聞いた事ないや」
サルジュ・ザフラ。それがセッカの父親の名だ。上流階級の魔人族と会う機会が多いセスさんならば、角無しとなったセッカの父親の手がかりがあるかもしれないと尋ねてみたのだ。
「もしかすると…クエルノ…という名でしたら分かりますか?」
「……クエルノ?」
「はい、ザフラは母、リュージュ・ザフラの家名なのですわ。父は家を捨て母と一緒になりましたから―――父からはこの名は口にしてはいけないと言われていたのですが」
「と言う事は、サルジュ・クエルノ?……クエルノ?どこかで…」
首をこてんっと傾けて脳内検索するセスさん、見目が良いだけにその仕草も可愛らしい。
「確かクエルノ家って、昔は王制に関わってた一族じゃないかな?王宮で演奏した時にそういう噂を聞いた気が…」
「本当ですのっ!?」
「ああ…でも…」
セスさんが困った表情でセッカと忍兄を交互に見る。どうも何か言い難い事があるらしい。まあ、角無しとなった父親の実家なのだとしたら、子供の前で話し難い内容なのかもしれない。セッカもその事はよく理解しているのだろう。教えてくださいとセスさんに頭を下げた。
「僕も詳しいことは知らないよ。ただ、クエルノ家の話題は王宮では禁忌とされているんだ。昔、王室絡みのスキャンダルがあったってくらいしか知らない。その事が原因で、クエルノ家の役職がなくなったって事だったかな?」
「それがセッカの父親の件だという可能性は高いな。そのスキャンダルとやらの内容が詳しく分かれば、セッカを狙う相手も見えてくるんだが」
「セッカの父親の実家だっけ?そのクエルノさん家に保護してもらえばいいんじゃないの?自分の家の子が困ってるなら助けてくれないかな?」
セッカとコウが無事に村へ帰るには、魔人族国内の有力者による手助けが必要となる。花人族の子供だとバレて権力者達からの横槍が入れば、村へ帰る所か今度は魔人族に拉致される可能性があるからだ。
「いや、父親が家を捨てたってんなら、実家の力も充てには出来ん。下手したら、過去の栄光ってのを取り戻すためにセッカを人身御供として使うかもしれんぞ」
「俺とセッカが来た道で帰ればいいんじゃなのか?」
「奴隷商が使ったルートで送り返すってことか」
「それって不法侵入だよね?バレたらシャール様の立場が悪くなるんじゃないの?」
コウが問題発言をしたので、勝手に他国へ進入するのは違法行為だよと伝えてみた。
「バレなきゃ平気だな」
「ですね…」
忍兄とアル君が肯定しちゃったよ。
「まあ最悪、奴隷商に吐かせたルートで2人を帰すことも考えてる」
「セスさんの付き人として、ってのは?」
演奏活動で各地に行くなら、村の近くまで送り届ける事が出来るのではないだろうか?
「良いけど、旅券はあるの?」
「…パ、パスポートかぁ」
やっぱ異世界でもそれ必要なんですね。
「持ってませんわ」「なにそれ?」
コウはパスポートの定義さえ知らなかった。
「まあ、シャール様が伝手のある魔族国内の有力者を通じて、2人の村へコンタクトを取ろうとしてますかますから、その内情報が入ってくると思いますよ」
「やっぱり、そこに話が戻るんだよなぁ」
アル君の発言に忍兄が溜息を漏らす。忍兄は結果を待つのが嫌いだからね。元ヤンはすぐに白黒はっきりつけたがる。
「まあ、僕も一度、魔族国へ戻らなきゃいけないし、それと無くクエルノ家のことを聞いてみるよ」
「えっ?セスさん魔族国に帰っちゃうの??」
ぷぷぷっ♪兄ってばもう捨てられるの??
「うん、今度王宮で演奏しなきゃならなくて…王族相手じゃなきゃ断ってるんだけどね」
忍兄と離れるのが嫌だからお断りしたいそうですが、相手は王族さんなので仕方なく行くのだとか。いやいや、それは断っちゃ不味いですよ。
「セス…まあ確かに助かるんだが、相手は貴族連中だ。やばそうなら止めておけよ」
「うん、僕のパトロネスは幸い王宮の権力に興味のない方だし、助けになってくれると思うよ」
「信用できるのか?」
「大丈夫。あの方、15歳以下の少年にしか興味ないから」
おいおいおいおい。何処の変態だ?
「それってセッカもやばいんじゃない?」
「いや、花人族なら対象外だと思うよ」
セスさんと同様の理由で対象外となるそうです。




