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「ふ、ふつつかな兄ですが、どうぞよ――ぶへっ」
全部言い終わる前に、忍兄にしばかれました。
だって忍兄が彼氏(?)や彼女(?)を自宅に連れてきたのって初めてだったから、粗相がないようにご挨拶しただけなのに。まあ、自発的に「捨てないでぇ」と乗り込んできた方々は過去いましたがね。
朝帰りした忍兄に同行したセスレシアさんは、背中の白い羽が美しい翼人さんだ。少し癖っ毛のある蜂蜜色の髪にガラス細工のような水色の瞳の、柔らかい雰囲気をまとった天使ちゃんがリビングのソファにちょこんと腰掛けている。
「忍兄ぃ……今日仕事は?」
「ダルイから休む……臨時休業」
夕べどんだけハッスルしたんだよ。
というか忍兄の色気がめっちゃ駄々漏れしている。アル君が頬染めて思わず目を逸らせる位なのだが、この状態でよく無事に帰宅できたなぁ。一体昨晩、兄の身に何が起こったのかが気になるところだ。
同じことを考えているのだろう、柱の影からセッカが怪しい笑みでこちらを見ている。
あれ?一応ではあるが、対外的には家で保護されてる魔人族の子供が花人族だって事、内緒なんじゃないでしたっけ?
「ああ、既に2人の事情は話した。セスのコネで2人の保護者に連絡が取れないかと思って」
「忍兄ぃにしては、随分簡単に信用するんだね?」
「信用というか信頼はしてるぞ。それにセスにはセッカを利用する動機がない。花人族の子を権力者に売って売名行為なんぞしなくても、あいつは十分有名らしいし、金に執着するやつでもない」
ああ、忍兄に執着してるんですね。はい、分かります。
「子供が欲しくなったとしたら?」
「セスがか?」
魔力の高い魔人族は子が出来難い、だからこそ子を孕み易い花人族は貴重なのだ。
「セス……お前、子供欲しいか?」
ちょっ!!兄ぃ…お子様達がいる前でなんてストレートな質問するのさ。
「―――えっ?」
頬染めて恥じらいながら天使さんが答えました。
「忍の子供なら……う、産みたいかな?」
いやいや、あんた子供産めないし、子宮無いから。こらそこの腐女子。嬉しそうな顔してるんじゃないの!!うわぁ~兄のドヤ顔ウザイわぁー。確かに、花人族は相手の性別に合わせて身体を変化させるし、セスさんが相手なら花人族は女性化するはずで―――はいはい理解しましたよ。彼はバイではなくて、ゲイなんですね。
セスさんは有名な音楽家さんなので、魔族国内の色んな都市を演奏会で訪れる機会が多いのだとか、その際、各地の資産家やお貴族さまと顔を繋ぐ機会も多々あるので、助けになれるかもしれないという事らしい。
シャール様も独自のルートで、2人を送り届ける方法を模索しているが、まかせっきりにする訳にもいかないしね。
「確かに花人族の子供だね。微かだけど香りが漂ってる」
「……香り?」
コウじゃあるまいし、セスさんて随分と鼻が利くのでしょうか?私の疑問を察したのか、説明してくださった。
「花人族はその名の通り、魔力に花の様な香りを帯びているんだよ。子供の内は殆ど感じられないけど、大人になるにつれ香りが強くなる。特に、運命の相手と出会うと馥郁とした香りが立ち込めると言われているね。セッカちゃんは13歳だって事だから、これからどんどん香りが強くなるんじゃないかな?」
「ええ、わたくしが成人を迎えたら、是非シズクおねーさまをお嫁さんに欲しいですわ」
ええっーーー!?私ですか?セッカの見た目がアレなので、妹の様な気分で接してましたが、そうか男の子になる可能性もあったのね。
「アル…ライバル出現だな」
「な、な、な……何を……こ、こ、子供の言う事…などぉ…」
「じゃ、セッカは腐女子ぢゃなくて、腐男子??いや、まだ性別未分化だし??」
「…そこかよ」
「おねーさまとは趣味も合いますから、上手くやっていけると思いますわぁ」
「あれ?コウ、前に私の事【俺の女】発言したよね?」
「なななな、なんですとぉ?」
アル君、もう君…唾飛ばさないでよ。
「お、俺……」
コウ!!何故、忍兄の服を掴んで恥らっているのだ。ほらセスさん笑顔が怖いぞ!!
確かに、忍兄とシャール様の濃すぎるフェロモンやら【魅了】やらに晒されて心変わりしても仕方ないわね。私としては、そのどちらかと1度カップリングしてくれればそれで満足だから。
「雫、良かったな。モテモテじゃないか!!」
「雫もいい匂いがするぞ……俺好きだ」
「お?コウも参戦か?」
「では、コウもわたくしとアルさんの好敵手ですわね」
これはモテ気到来なの?そうなの??




