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第85話

「これでいくつ目だよ?」

「4つ目だ。」

「ここら辺にある野盗の拠点では最後ですね。」

「はぁ~、疲れた。」

「おい、もっとやる気を出せよ。こっちも萎えてくるだろ。」

ゼオンがそういうとネシルも頷いて集に発破をかける。

「これで最後なんですから気合を入れてください。」

流石に後輩ランカーにまで言われたら少しはやる気を出さないといけなくなる。それでも集の肩に止まっている朱雀は疲れたようにあくびをしている。

「それにしてもくじ運が悪かったな。」

「もっとしっかりと下調べをすれば問題なかったんですよ。」

「それはゼオンが我慢できないから仕方ないだろ。それにしても相手はこちらの察知しているのに逃げる気配がないな。」

集が気を取り直しながらガンランの拠点の廃城を観察する。集たちはすでに気配を隠していない。3つ目ぐらいから隠密を捨てて正面から普通に動き始めていた。

「なめてくれてんだなぁ~。」

そう受け取ったゼオンがイライラした口調で話すとゼオンの短気さにネシルと集はため息をつく。

「ネシル、奴隷たちをまた任せるけど大丈夫?」

「はい。とはいっても一方的に私たちが集さんに奴隷の所有権を渡したんですからこれぐらいなら当然です。」

そう言って3人が振り返ると馬車に転がされている野盗の塊に御者台で不安そうにこちらを見ている奴隷たちがいた。奴隷は合計で8人。そのうちの4人は不正規な奴隷であるためギルドに着き次第解放することになっている。残りの4人は集が受け取ることになっていた。

「私は、まだ収入も安定していませんしゼオンさんはそもそも根無し草です。消去法になりますが集さんにしか頼めませんから。」

申し訳なさそうに話すネシルを見て集は逆に申し訳なくなる。

「そうだぜ。消去法とはいえ一番ランクが高いんだから問題ねえよ。」

無駄に胸を張っているしゃべるゼオンを見ると集は殴りたい衝動を抑える。

「ふぅ~。さっさと終わらせよう。さすがに疲れた。」

そういうと集は懐から砂鉄を出してショートソードの形にまとめる。

「行くか。」

「そうだな。」

「じゃあ、私は相変わらず後方で見張りですね。」

そういうと集とゼオンが廃城の門をくぐって中に入る。

「「ッ!!」」

くぐった途端、集とゼオンが足を止めて見るからに警戒を強める。

「クソッ!幻術かよ!」

「それも強力な奴だな。これは思考誘導型の幻術か・・。」

ゼオンが憤慨して突っ込もうとするのを集が片手で止める。

「落ち着け、ガンランは幻術が使えない。つまり、俺たちにしっかりとした効果を示す幻術使いがいることになる。こんなに大きな廃城を最後に回させるほどの幻術だ。慎重に行かないと囚われるぞ。」

囚われるとは幻術の精神侵食型のことだ。一般的な思考誘導型とはいえここまで大きな廃城に掛けていることが脅威だった。

「幻術掛けられる前につぶしゃあ問題ねえよ。」

流石に片手では止まらないのか集は引きずられながら説得するがゼオンがそれを聞き入れずにどんどん進んでいく。

「なら、いいか。じゃあ、頑張れ。」

呆気なく集が手を離すとものすごい勢いでゼオンが走り抜けていく。集はそれを見送ってから周りを見渡す。

「いい加減出てこいよ。さすがにゼオンと違って幻術に掛かりまくらないぞ。」

集が突然しゃべりだすと廃城の一角が歪みそこから人が出てくる。

「気付いていのか、異世界人。」

「お前もだろ。」

軽口でお互いの重要な部分をいきなり暴露する集と幻術使い。

「元々は類稀なる才能の持ち主の高校生で神に無理やりこちらの世界も引きづりこまれたか。」

「10億以上儲けた異世界の詐欺師が野心溢れた国の犬に成り果てて何の用だ?」

幻術使いの洞察力で集の個人情報を暴露するが集の情報はもっと細かい情報に幻術使いは眉を動かす。

「ふむ、いろいろ情報を持っているみたいだな。少し吐かせるか。」

「ふぅ~、あまり異世界人には関わらないようにしてたのに意味がないじゃないか。しかも、月詠が連れてきた奴じゃん。面倒すぎる。相性が悪すぎる。」

どんどんテンションを下げている集に訝しむように見ていた幻術使いが先に動き出す。

「まあ、いいか。『無実有幻』」

そのまま幻術使いが幻術を使い始めると周りの風景が一変する。

「これは、闇か・・・。趣味が悪いな。」

『そういうな。人が最も恐怖するのが闇だ。こういう演出にした方が精神を侵食しやすい。』

どこからともなく声が響いて来る。その声はまるで全体から聞こえてくるように集には相手の場所が検討もつかなかった。

(クソ、自分が立っているのかどうかもわからなくなってきた。)

集は幻術系には弱かった。まだまだ神として未熟すぎるところもあるが何よりも集の力が物理的なものしかないからだ。

「他人を幻術の空間に閉じ込めているのか。」

『まあ、確かにここは幻術の空間だが相手に怪我を負わせることはできるさ。』

その声が響いた瞬間、集は咄嗟に後ろに跳ぶ。

『へえ、まさかこの空間でそこまで動けるだなんてさすがは異世界人だな。』

「ふぅ、さっさとゼオンの手伝いをしに行かないといけないのに厄介な相手だな。」

『あくまで上から言うか。まあ、いい死ね!』

流石にまずいと感じたのか集は『全知』を解放して次々と襲い掛かる見えない攻撃を回避し続ける。

「なあ、俺の武器どこ行ったと思う?」

突然の集の独白に視線が腕に行くのを感じて集は一気に力を解放する。

『なんだぁ!これは!』

「とりあえず、縛られてろ。」

そういうと突然幻術が解けて砂鉄で雁字搦めにされた幻術使いと何事もなく立つ集が元の景色の中心に立っていた。

「とりあえず、ゼオンの援護に行くか。」

気絶している幻術使いを放置して集はそのまま廃城の中に入っていった。


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