第66話
「最高神が全員そろうなどなかなかないんじゃが、何故こんなことになったのじゃ?」
「全員そろったからじゃないのか?」
「そろそろ納めないでいいのか?」
「俺は別にいいんだけど、ていうか地皇その姿何?」
いつも通りの席にアイテール、月詠、地皇、ゼウスが座ってお茶を飲んで目の前の出来事を見ている。
「脳筋たちに何言っても仕方がないみたいね。」
「お前らの方こそ、ひたすら理屈こねるような真似をしやがって!」
「そうだ、別に力づくで解決することの何がいけない?」
「センスがないのよ。つまらないことあまり言わせないで。」
上からアフロディーテ、建御雷、プロメーテウス、セレネ―。
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問題は、魔王の今後の教育方針の話し合いの時の建御雷の発言からだった。
「たかが、教育方針でここまで話が脱線して白熱するなんて子供かよ。」
「建御雷のいきなり実戦投入させる意見には反対じゃな。」
「そうか?拙者は問題ないと思うぞ?」
「素の人間相手なら十分だが転移者というイレギュラーを考えるとそうでもない。」
「そうじゃ、地皇の言うとおり魔王は常に相手を圧倒できる存在でないといけなんじゃ。」
アイテールが発言すると同時に色とりどりな力がその空間に満たされる。
「なんか、プロメーテウスと建御雷がやる気満々だな。」
「戦闘向きじゃないアフロディーテには厳しいだろうね。」
「セレネーは?」
「年の功で何とかするじゃろうな。」
下級神だと生きることですら厳しくなるほどの力に変わらずに談笑する4人?の最高神は動くそぶりを見せない。
「悪いけど、話し合いが終わらないならそろそろ俺は帰るよ。」
「なんじゃ、ゼウス。最後まで付き合えばよかろうに。」
「明日から俺は教師の仕事があるんだよ。」
「教えるという事はなかなか面白いぞ。」
「地皇、それは人それぞれじゃないか。しかも俺の場合は予定より多めに仕事をやらされるんだよ。てか、なんでモグラの姿?」
「次の世界では、動物として生きようと思ってな。ちょうどいいのがこの土竜だったのだ。」
「土竜だったのかよ。」
ゼウスのつぶやきは近くの争う音で消えて、誰にも聞こえなかった。
「それじゃあ、俺はこれで。」
「ああ、教える楽しさを実感してくるといい。」
その地皇の言葉を最後にゼウスがその場から消える。
「ゼウスはつれないの~。」
「拙者らの中でも1番のイレギュラーな存在だ。まだまだ経験が足りないんだ。」
「ほとんどの神が、最低でも下級神から上り詰めているのに対して人間からいきなり最高神だ。なかなか恐ろしいな。」
「本人はまだ最高神の力を行使していないのが面白い。」
「そうじゃな、地皇の時など下っ端の神共から泣き付かれるほどいろいろやらかしてたの~。」
「言うな。若気の至りだ。」
「あれに比べるとゼウスは本当に大人しい。」
「頼むから掘り下げるな。」
アイテールが懐かしそうにふった昔話に地皇が短い手で顔を隠しながら恥ずかしがる。
「拙者の私見としては、今後拙者らが何かしたら下っ端どもが最初に泣き付くのはゼウスになるだろう。」
月詠の発言に1人と1匹の神が頷く。
「嫌いな儂のお願いも聞いてくれるようなお人よしじゃ。泣き付かれたら滅多なことがない限り助けるじゃろうな。」
アイテールが苦笑いとともに言うとなぜかジト目を向けられる。
「アイテールは、ゼウスが最高神になれるとわかっていて転移させたのか?」
それは全員が疑問に思ってたこと、聞くタイミングがなかなか来なかったものだった。
「いつでも最高神の発生は突然じゃ。儂でもわからんよ。全知が万能でないことは周知の事実じゃが、わからないことの1つが最高神の発生理由じゃな。」
「アイテールが1番長生きしてるんだからどうにかしろよ。」
「無茶言うでない。」
結局、近くで起きている怒号に力の余波など全てを無視して椅子に座った最高神たちの話し合いは続いていった。