第64話
世界に突如現れた物は5つの建造物。4つの砦にその中心にある城。確認できているのはそれだけだった。4つの砦は正方形の頂点になっており、その正方形の線に入った途端、遭遇する魔物はありえないぐらい強い存在になっていた。多くの国が教会にもたらされたお告げの魔王誕生を信じ、自国の強化に励みそれは学園にも影響していった。人はそれを『パンドラの箱』と呼んだ。奇しくも、国王たちの間で定められたその名前はアイテールがノリノリで考えた名前と同じものだった。
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「まー、俺たちは共犯だけどね。」
「私たちは頼まれたからやっただけよ。報酬はもらったけどね。」
今、集がいるのは自宅で庭で椅子と机を並べてアイテール、アフロディーテと共にお茶を楽しんでいた。ここしばらく2人?は集の家で寛いでいた。
なぜか、アフロディーテと集の椅子の位置が近いように感じるがそれは気のせいという事で集は区切りをつけた。
「ま、この世界がいきなりあの『パンドラの箱』を異物扱いして拒絶反応を起こさなかっただけよいとしよう。」
「ていうけどさ、この世界との同調率はまだ70%だろ?」
「他の下っ端の神がどうにかしてくれるんじゃない?」
既にアフロディーテは『パンドラの箱』の話より目の前の茶菓子に興味をそそられている様だった。
「お前は、もう知識で持ってるだろ?」
「持ってるからと言って、実際に体験したわけじゃないから食は少ない娯楽なのよ。」
集はそれ以上興味を示さずにアイテールに視線を送る。その素っ気なさにアフロディーテは少しムッとしたけど、菓子を食べてすぐに機嫌を直す。
「俺は、まだ報酬もらってないけど?」
「ボランティアじゃダメかの?」
「ケンカ売ってるのか?一応、貸し1つってことにしといてやるよ。」
すぐにほしいものがあるわけじゃない集はすぐに引き下がって席を立つ。
「あれ、どこに行くの?」
「そろそろ、学園に方に行かないといけないんだよ。」
「私も行ってみたい。」
「全知で知識を集めればいいだろ?」
「ゼウスってたまに最低な事言うわよね。」
アフロディーテの心外な言葉に本気で首を傾げる集はアイテールに視線を送るが目を逸らされる。庇う余地がないようだ。
「うーん、何が悪いのかわかないけど。利用できるものは利用した方が良くない?」
「じゃあ、ゼウスは手間暇かけてやる方が面白いものを全知ですぐに終わらせちゃうの?」
「そういわれると、そうだな。」
集は納得しないまま納得したふりをしてすぐにその話題から逃げる。それに気が付いたのか、アイテールがにやけてアフロディーテは口先を尖らせる。
「まあ、いいわ。学園に行くのは馬車?」
「いや、普通に転移するよ?」
アフロディーテが机に突っ伏す。
「なんでよ?!」
「今からだと、馬車じゃあ間に合わないし。旅行じゃなくて仕事で行くんだからわざわざ道中の景色をみるつもりもないし、なにしろと?」
「・・・。」
アフロディーテが何も今なくなって話が終わりだと思った集はさっさと家の中に入って荷物の持って再び庭に戻るとアイテールが居なくなっていた。
「帰ったの?」
「ええ、帰ったわよ。」
「それじゃあ、行こうか。」
アイテールが帰ったことに何も言わずにアフロディーテに声をかける。
「やっぱり、私はいいわ。」
「そうなのか?」
「ええ、妙に疲れたから帰るわ。」
「そっか、体に気を付けろよ。」
素っ気なく集は答えてレイナに出発する旨を伝えて集は学園へと消えた。
「は~、ゼウスは鈍感なのかな?それともわざとなのかな?」
アフロディーテは独り言を呟いてから庭から姿を消した。
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「話が違いますよ。」
「こちらにも、都合があるんですよ。」
「一度、そちらは依頼を受けたんですからお願いしますよ。」
集が学園に着いて学園長と話すと不都合なことを言われた。
「受け持つ授業の数が増えるなんて嫌ですよ。」
「しかし、王城からの指令を我々は受けているんです。」
あまりなことに天を仰いでしまう。
「面倒だな~。」