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第63話

鞭、縦横無尽に走るその線がアリアナを近づけさせない。アリアナの剣『氷姫(ひょうき)の細剣』は意味をなさない。

「この!卑怯だぞ!!」

「冒険者の戦いは勝つか死ぬかだよ。そのためにはなんでもする。それが冒険者の本質。」

体にいくつもの切り傷を作って防戦一方だったアリアナは集を罵る。詭弁を唱えるアリアナに集は冷静に近づけないように隙を作らないように鞭を振るう。

砂鉄で作られたその鞭は砂鉄同士で高温の摩擦熱を発してアリアナの氷を瞬時に溶かす。アリアナの剣は纏う氷の魔力で辛うじてその熱に耐えている。けど、集も余裕のわけではなかった。

(剣を巻き取れるのは技術が必要だとしても、初めてだな!)

普通の鞭とは違ってそれこそ自分の意思通りに形を変えることができるその攻撃を捌ききるアリアナの技術に驚愕する。集の中でこれ以上時間をかけるわけにいかないと結論付けて鞭からまた形を変える

「それは、鎌か?」

「正式には戦闘用大鎌だけどね。」

集が見られない構えをしながらアリアナの視線を受け流す。集の構えは右手に鎌の柄を持って背を通して左手で鎌の刃を掴んでいる。

「時間がもったいないからこの一撃で防げたらそっちの勝ちってことでいい?」

「・・・・・、いいだろう。やれるならやってみろ。」

顔にわかりやすい怒りの表情を浮かべて安い勝負に簡単に乗る。ほくそ笑むのを止められそうになくなって集の表情に笑みが現れる。

「なめるなよ。」

その笑みを挑発と受け取ったアリアナはさらに激昂する。その手に持つ剣から出る冷気も次第に増えてきてアリアナの体を覆う。

「目を覚ましたのか?」

その現象を見て集は自分が間に合わなかったことを認識する。集がしゃべっている間にも冷気は白く霧のように濃くなっていくアリアナを隠していく。

その瞬間、集が一気に加速してアリアナに接近する。まだ、アリアナの霧は晴れていない。勢いよくその鎌は振りぬかれる。

キン!!

甲高い音と一緒にアリアナが霧から吹き飛ばされて修練場の壁際で俊の隣まで吹き飛ばされる。

苦しそうにアリアナが起き上がって剣を支えに集を睨みつける。

「わたしの、「俺の負けだね。」なッ!!」

集に台詞をかぶせられて、さらに勝ちを譲られたように感じたアリアナは叫ぼうとするが、体に力が入らなくてよろめく。

「最後の勝負の内容は防ぎきれたら隊長の勝ちというものでした。五体満足でいる隊長の勝利ですよ。それに、鎌が壊れています。」

俊がすかさず2人の間に入って説明をする。一応、アリアナの勝因は武器破壊という面目だった。

集は壊れた鎌を球状に戻して袋にしまう。

「じゃあ、この後用事があるからこのまま帰るね~。」

軽い雰囲気で修練場から集は姿を消してそこには黒い砂のようなものだけが残っていた。

「砂鉄を回収しきる前に変えるほどの予定って何だ?」

俊のつぶやきが聞こえたのは近くにいたアリアナだけだったが、アリアナはなんとなく予想はついていた。


「♪~そろそろかな~。」

今、集がいるのはただの森の中。しかし、修練場から1週間はかかる場所にいる。

「なんじゃ、来たのか。」

その場に人影は3つ。

「久しぶり、ゼウス。」

3人ともこの世の理に囚われない存在。

「準備は?」

「問題ないよ。予定通り、一時的に空間を切り取って独立した空間にしたよ。」

「そして、切り取った空間に近寄る生物が出ないように本能に働きかけたわよ。」

「いいじゃろう、始めよう。儂らの暇をつぶすための喜劇を。」

「「・・・・・・。」」

(ノリノリだね。)

(ノリノリね。)

集とアフロディーテはアイテールのノリノリっぷりに少し引いて力を維持する。

「生まれよ!魔王!!」

2人しか聞く人間が居ない声と同時に切り離された空間が再び接合して世界に変わり果てた1つの場所を顕現させる。

「物語は誰の手でもない。」

「己の手で紡がれていく。」

「我々がするのは導きだけ。」

「さあ、この世界は異物を受け入れるか。それとも・・・。」

「「「ああ、楽しみだ。」」」


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