第52話
「おいしそうだな。」
俊は目の前に広がる食事に目を輝かせる。
「あれ、これ誰が作ったの?」
「今日はフェンに作らせてみました。・・・・クス、大丈夫ですよ。毒見はしてあります。」
「ちょっと待ってよ。毒見って何よ!そこまで私信用ない?!」
集がフェンの名前を聞いて心配そうな顔をレイナに向けると少し笑って心配ないことを告げる。
「そっか、それって食べれるから大丈夫なのか。うまいから大丈夫なのか。どっち?」
「え?また私を無視して話を進めるパターン?ていうか、失礼じゃないそれ!」
「いや、無視してるんじゃなくてスルーしてるんだよ。てか、キッチン吹き飛ばさなかったか?」
「集がどういう目で私を見ているのかが少しわかったわっ!」
スパン。
「何よ、レイナ!」
「自分の雇い主を呼び捨てる侍女がどこにいるんですか?」
「それでも、こいつg、ひっ!!」
集を呼び捨てにしたフェンがレイナにはたかれて反論しようとしたフェンにレイナは絶対零度の笑みを向ける。
「申し訳ございません。お食事の途中ですが退席させていただきます。少々、この子と話さないといけないことができましたので。」
「ほ、ほどほどにね。」
レイナの笑みに引いていた集はぎこちない顔で見送る。
「いつもあんなのか?」
「うん、にぎやかでしょ?」
「まあな。でも、レンはしゃべらないな。」
「レンも学習したんだよ。逆らっちゃいけない人はいるんだってことに。」
いきなり話を振られたレナは少し蒼い顔をする。
「・・・・集、どうにかならない?」
「俺たちには彼女が必要だからね。それに俺はレイナのこと好きだよ?」
(彼女の過去を知っている俺としては彼女に幸せになってほしいしね。)
集は、自分が神としてのスキルで知っていることを誰にも話さないで自分の胸の中にとどめていた。
基本、集は身内を人一倍大事にする。そして、スキルでレイナが信頼できると知っているから集はレイナを身内と認めていた。
「ムゥ。」
集の気も知らずにレンは集の優しげな表情がレイナに向けられていることに少し不満を感じた。
「大丈夫だよ。レンのことも好きだから。」
レンは俯いて集の言葉を噛みしめる。
(好き、好き、好き、好き、好き、好き、・・・・・・・・・・。)
そのレンをチラッと見て俊が食いながら集に訝しげな目線を送る。
「お前、変わった?」
「いや、家族を大事にするのは前からでしょ?」
「ま~、そうだな。」
(身内が多くなりすぎたから節操なしに見えるだけか?)
「一応、言っとくけど節操なしじゃないよ。」
「読むなよ。」
「顔に出てるよ。それよりうまい?」
「あ?ああ、うまい。しっかり味付けされてて王道って感じの味だな。」
「本人も喜ぶと思うよ。今はお仕置きされてるけどね。」
「ご馳走様。じゃあ、あの件頼んだよ。」
「いつ顔合わせればいい?」
「明日の昼前に顔だしてくれ。話は通しておくから。」
「オッケ。」
そのまま仕事が残っているからと俊は集邸から離れていく。
敷地から出る途中に悲鳴が聞こえた気がして後ろを振り返る。
「お仕置きって何してんだよ?」
誰もいない場所で呟いて答えを聞きたくないとばかりに早足でいなくなる。
・
「お兄様は御帰りになられたのですか?」
「うん、それでしばらく出かけることになる。」
「また、突然ですね。お兄様からのですか?」
「すごく面倒だけど、了承したからにはちゃんと仕事するよ。」
「わかりました。準備いたしますね。」
「お願い。1週間ぐらいになると思う。」
「わかりました。」
「は~、俺はあのわがまま姫さんの相手か。」
集は準備をレイナに任せて明日の予定を頭で組み立てた。