第50話
50話まで来ました!
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「機は熟した。我らはジュリカ国に逆に攻め入ることに方針を変える。異論のあるものは前へ出ろ。」
王の突然な方針の変更に家臣たちはざわついて戸惑う。
「王よ、あまりにも突然ですぞ。もう少し段階というものを考えてくだされ。」
「うるさい!我は今まで貴様たちの意見を聞いて大人しくしておったが、我慢の限界じゃ!さっさとジュリカ国を黙らせてしまえ!!」
臣下たちはさっと周りを見渡して頷き合う。武官は武官同士で文官は文官同士で王を止める方法がないことを悟って重々しく頭を下げる。
「かしこまりました。すぐに準備いたします。」
「うむ。それにはサンも同行しなさい。」
「なっ!!」
これに一番驚いたのは本人であった。
「サンのところには優秀な騎士が多いから戦いもすぐに終わらせられるだろう。」
「承りました。」
おおっと周りの臣下たちがざわめき立つ。そのせいか、頭を下げていたサンテリアの笑みに気付くものはいなかった。
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「という事で前線で戦うわよ。」
「は?!何を突然おっしゃっているんですか?」
サンテリアが近衛騎士の執務室でアリアナ自分の耳を疑いながら聞き返す。
「だ、か、ら、ついに私が前線で指揮を執るのよ!!」
「王も正気ですか?自分の娘を前線に送り出すなんて。」
アリアナは頭を抱えてこの場所にはいない王に文句を言う。
「兵法を習ったことはありますか?」
「ん?ないわよ、そんなの。」
ゴン!っとアリアナは机に頭をぶつける。
「姫様、これはお願いなのですけど絶対に前に出ないでください。」
「それじゃあ、指揮が執れないじゃない!!」
「指揮は前ではなくても執ることはできます。そして近衛のうち最低4人を必ず常に何が何でも絶対に引き連れてください。」
アリアナの助け舟となるこれを提案するのは俊。いきなりの俊の提案にサンテリアは不服そうな顔をする。
「それができないのであれば冒険者も雇って無理やりにでも護衛を付けさせますよ。」
「え?!」
流石のサンテリアも顔を引きつかせる。
高ランクの冒険者になるほど依頼に忠実な人間が多い。自由を提唱する冒険者にサンテリアが王家であるという事は無視されてただの護衛対象として扱われる。
「・・・・・・・・・わかったわ。その条件でいいわ。」
過去に冒険者に護衛の任務を頼んでいろいろ縛られる経験をしているサンテリアは苦渋の決断のように了承をする。
「ありがとうございます。それでは護衛には私と隊長、それに第3席、第4席が受け持つことにしましょう。」
(わざわざ前線に出ていくからと言って敵を殺さないといけないわけじゃなからな。護衛を言う名のサボりをやらせてもらおうか。)
実際、俊の頭の中には自分が楽する方法が受け入れられるようにうまく誘導する。
「ちょ、それじゃあ、主戦力が私の護衛になるじゃない。」
「私たちはあなたの近衛ですよ。もともとあなたから離れて剣を振るうなどあってはならないことですよ?」
アリアナも好機と見てサンテリアを黙らせる。
「そ、それじゃあ、この前の冒険者を絶対にこの戦いに呼びなさいよ?」
「「は?」」
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「という事で今回の反撃に集も加わってくれ。」
「いや、話が見えないんだけど・・。」
「なんか姫様が、お前のことを調べさせてAランクだってことを知ってたらしくて自分の手勢として参加させたいらしい。」
「そういう話はギルド通してよ。」
「それだと冒険者として参加することになるから個人的に依頼したいらしい。」
そういって集は作業をやめる。ちょうど集は自分の納得のいく剣を完成させて研いでいたところだった。
「正直に言うと、めんどくさい。ていうか、兄さんついに忠誠とかいうのに目覚めた?」
「そうなんだよ。」
集は胡散臭いものを見る目で俊を見る。
「本音は?」
「安定した給料くれて、ある程度自由にしてくれる雇い主が早々いるとは思えないから失うには惜しい。」
「忠誠誓えよ、騎士だろ?」
「俺の忠誠は金で買える!っていう奴だよ。」
(前からこんなのだったっけ?いや、もともとこんなのだな。)