第45話
あれから1週間たって集は3人がいる宿へと歩いていく。背中には布に包まれた槍のようなものを背負い近くにはどれも連れずに歩いている。
「準備はいい?」
宿の前まで来て待ち構えていた俊、葵、薫に声をかける。
「いいぞ。」
代表して俊が答えてくるが集は薫に視線を送る。
「薫もそっちに付くのか?」
「ええ、だから勝ったら私もここにいることを許してね。」
「は~、マジか。」
「どうせ、それも予想済みでしょ?」
「ま~、一応予想して対策もあるけど嫌な予想が当たるな~。」
嫌そうな顔を隠さずに3人を引き攣れて街から出る。
「ここら辺でいいか。」
集が何かを呟いて一瞬視界が捻じ曲がったと思ったらそこは今までに見たことのない場所だった。
「ここは?」
一番最初に復帰した俊が集に確認を取る。
「急造した異世界だよ。ここなら世界を壊すほどの力を使っても問題ない。生命体は俺たち以外にはいない。」
俊たちが周りを見渡すと動物や木がなく草はまったく見当たらない。空は暗いのに周りははっきり見渡せて地平線が見える。
「それじゃあ、ルールを説明するよ。ま~、簡単だから2回も説明しないからね。」
集の言葉に慌てて意識を集に戻して耳を傾ける。
「3時間以内に俺に攻撃もしくは触れること。3時間経ったら強制的に地球に返す。質問は?」
「攻撃ってなんでもいいの?」
「ああ、魔法でも物理でもなんでも。攻撃と判断できるものは何でもいい。」
「審判は?」
「一応下級神に見張らせてる。」
俊は自分で聞いておきながら下級心に同情した。
「他はないね。それじゃあ、始めよう。」
ふぁん。
奇妙な音が鳴ったと思ったら目の前の空間が裂けてそこから1匹の犬が出てきた。
「これって・・・。」
「やばくない?」
「容赦ないな。」
上から葵、薫、俊。
3人の目には全身を裂け目から出した3つの頭を持つ犬、ケルべロスがいた。
「ちなみにこいつは基本的に俺の方にお前らを来させないようにするだけだから。倒してから来るのもいいし、隙をついて潜り抜けるのもいいよ。」
無防備にしゃべる集を尻目に俊と薫が駆け出す。葵は逆に距離を開けて魔法を唱える。
俊は両手剣に鎧(完全装備)で本気で来ている。普通ならできない動きも身体能力が上がっていて薫よりも速く走っている。
薫は装備自体は胸当てなどの必要最低だが、ただ武器だけが異様に存在感を出している。今までは細剣を使っていたが今はごつい大剣を背負って向かって来ている。
(どこまでも本気だな。てか、薫はそっちの方が強いのか?)
ケルベロスの近くを通ろうとして妨害された2人から視線を葵に移す。
まさに、魔法使いのような格好で三角帽子にローブそして杖を持っている。今も同時に4つの魔法を使ってケルベロスの意識を自分に向かわせながら集に魔法を飛ばしてくる。
(威力より数を優先したか?)
しばらくしてやっぱりというか俊が最初に抜け出して集との距離を詰めてくる。
「もらった!!」
「甘いよ、兄さん。」
「やっぱり、防御するか。」
切りかかってきた俊を引き離してまたケルベロスに相手をさせる。集の手にはさっきまで布に包まれていた武器があった。やりに斧の刃が付いたような形状をしている。
「ハルバードか・・。」
「市販のものだけどね。」
そういって苦笑する集を一瞥して俊が薫を引っ張ってケルベロスから距離を取る。
「俊さん!下がるの?!」
「あいつも防御できるんだ、作戦をたてないと勝てない。」
「俊兄。あいつ魔法が効きづらい。」
「ああ、毛のくせに硬すぎるだろ。」
3人はケルベロスが動かないことを確認してから作戦を立てる。
「一応、番犬だからそんな簡単に潜り抜けることはできないと思うよ~。」
集の声を聴いて3人が動き出す。
今度は、薫だけがケルベロスに突っ込む。俊と葵は後ろで魔法を唱える。
「げ、陣魔法使うの?」
魔法の中で一番手間が掛かるかわりに威力が上がる魔法。詠唱魔法に無詠唱魔法に比べて不便だが使う人は結構多い。
2人は魔力で陣を描いていく。それに気づいたケルベロスが止めようとするけど薫がそれをさせない。
「邪魔はさせないわよ!!」
鬱陶しそうに薫を振りはらおうとするけど薫は踏ん張っていく。
「行くぞ!」
俊の掛け声で陣が完成する。
≪ディザスター!!≫ ≪メテオ!!≫
俊が放つのは災害という名の風の魔法。その名に負けない威力の暴風が陣から生まれる。
葵は隕石を生み出した。それは音速を越えて火を纏いながら集に向かって突き進む火の魔法。
「うわ~、容赦がない!!」
流石のケルベロスも危険を感じて回避行動に出る。当然、邪魔が居なくなった魔法はすぐに集に届く。
(でも、選択が悪いね。)
集は自分の周りに風の結界を作り上げる。
「それで、防げるわけが!」
俊の放った魔法は風。風の結界にぶつかるとそのまま弾かれる。葵の魔法は火。だけど中には石が入っていたけど、ぶつかった瞬間に風に削られて無力化される。
「マジか・・・。」
「ウソ。」
全力で放った魔法をなんでもないように防がれて2人の顔が引きつる。魔法を見ていただけの薫も呆然としている。
「もっと本気じゃないと当たらないよ?」
余裕綽々の顔で立っている集を見て薫が一気に駆け出す。
「百花繚乱!!」
異世界に来て異常に強化された筋力をスキルを使ってさらに強化する。
「はあ!!!」
ケルベロスが追いつけない速度で集に迫り大剣を振るう。
ズガアアアン!
地面にクレーターを作って土煙が晴れていく。
薫の顔は蒼くなって驚愕の顔になっていて、その薫の大剣の先には集が片手にハルバードを持って大剣を防いでいる。
「殺す気かよ。」
軽口を叩きながらも薫を他の2人の場所まで弾き返す。
「くっ!!」
そうして、また振り出しに戻った。
キャラ紹介をしばらく中止します。