第44話
「失礼します。お客様をお連れしました。」
そういって客間に入ったのは集。約束のサンテリアとの面談の日だった。
「よく来たわね。」
少し、威圧的に接してくるサンテリア。
(こういう上から抑え付ける感じ流行ってるのか?)
1年前のギルドマスターの幼い顔を思い出していた。実際、サンテリアは王女としての対応であるけど昨日からイラついている集には関係がなかった。ついでに、ギルドマスターの時は逆に集たちが脅していたのは割愛する。
「で、なんの用?」
「っ!」
一瞬、アリアナが剣に手をかけるがサンテリアが一瞥して抑える。
「いえ、ただ重要な人物の護衛のお礼をしようと思って。」
「報酬はいらないよ。もうもらってるから。」
「そう。」
「で、いい加減本題に入ってくれない?」
あからさまにイラついた様子で切り出す集。サンテリアの後ろに控えている俊はため息をついてアリアナは爆発寸前なほどに集を睨みつけている。
(後ろの隊長さんが鬱陶しいな。)
肌に敵意を感じながら一瞥もせずにサンテリアを待つ。
「・・・・・。あなた、この国に仕える気ない?」
「ない。」
「考える余地もない?」
「全くない」。
「どうしても?」
「そう。」
サンテリアが俯く。
「それじゃあ、約束は果たしたから帰らせてもらうよ?」
そういって集は立ち上がってドアまで歩く。その後ろから気配を消した俊が近づく。
「どうしたの?」
「レンたちのところまで案内する。(あからさまに拒絶しすぎだ。)」
「(変に期待させて付け込まれるより突き放した方が楽だよ。)」
レンたちがいる部屋まで案内しながら小声で会話をする。
「(あの人は結構落ち込みやすいんだよ。フォローするこっちのことも考えてくれ。)」
「(いや、知らないよ。てか、王女がそれでいいのか?)」
普段からわがままばかりで近衛隊を振り回すサンテリアを思い出して俊は反論できなかった。
しばらく集たちは歩きながら話していく。
「ここだ。」
ある1つのドアの前で止まって叩く。
「どうぞ。」
返事はすぐに返ってきて俊は静かにドアを開けて集を招いた。
入った瞬間に集は懐に飛び込もうとする影を見つけて受け止めた。
「2週間ぶり。」
「うん。」
飛び込んできたレンを行儀が悪いと注意して離れさせる。
高級そうな椅子に座ってティーカップで飲み物を飲んでいるフェンとその後ろに立っているレイナしかいない。
「(監視みたいなのはいないの?)」
「(一応、客扱いだから。)」
小声で集と俊は話す。近くにいる獣人のレンには聞こえていたけど、フェンとレイナは少し眉に皺を寄せる。
「失礼いたしました。レイナ様、フェン様とお別れです。」
「わかりました。」
(喚かないのはレイナに匹敵する対価を払えないってわかっているからか?)
集はフェンが大人しく俯いているのを静かに観察していた。フェンはまだ16歳だ。いやだと粘るかと集は思っていた。
(王家の意地か誇りかそれとも他の何かか。)
「レイナ、行くよ。」
「・・・、はい。」
表情に影を差しながらレイナが集の方へと歩いてくる。集は近くに来たレイナに気まぐれの励ましを送る。
「大丈夫だよ、根性の別れじゃないよ。」
それを聞いた俊が機嫌がよくなったのかと疑問に思ったけどそれはないと切り捨てた。ただ単に気まぐれだと気付いた。
「それじゃあ、さっきの話よろしくね。」
「ああ。」
集と俊以外の人は首を傾げるけど2人は内容を教えようとしない。
「それじゃあ、行こうか。」
「「はい。」」
レンとレイナの言葉が重なって集は王城を出ていく。王城の中で誰一人とも会わずに静かに宿へと戻っていった。
レイナ
21歳
クラス未加入
人間
女
スキル 暗器使い
スキル暗器使いの説明は本編のどこかでしたいと思います