第40話
(なんであいつらは俺が居なくなる瞬間に重要なことを教えるのかな~。)
「きゃあああああああああああああ。」
俊たちのいる世界に戻ってきた集が聞いたのは悲鳴だった。
後ろを見ると目を覚ました薫が腰を抜かしていた。
「うるさいよ。」
「しょ、しょうがないじゃな!いきなり人が何もない空間から出てくるんだから。」
「そうか、悪かったな。」
「え?」
素直に集が謝ったことに拍子抜けした顔をする薫を見て集は仮面の奥で笑っていた。
(薫のこういう表情はなかなか見られないから貴重だな。)
今の悲鳴で起きた俊が集の隣まで歩いてきて小声で話しかける。
「(おい、何をしたんだ。)」
「(いや、神界から戻ってきたら驚かれた。ていうか、いい加減に普通にしゃべろよ。別にこいつらにばれても問題ないだろ?)」
「そうだな。」
「「しゃべった!!」」
「しゃべるに決まってるだろ!」
2人が俊がしゃべったことに驚くとすかさずツッコミを入れた。
「いい加減、これをなくしても問題ないか。」
そうやって俊は鎧を脱いでいく。
「俊兄!」
「俊!・・・・ていうことはそこの白仮面は・・。」
薫が集のことをジト目でにらんでくる。集は静かに、そして最高ににやけた顔をしながら仮面を外す。
「久しぶりだね。葵、薫。どうだっぶふぉ!」
集がしゃべっている間に薫が鉄拳制裁を加える。
「ぐふ、召喚で強化されてるからなかなかの威力だね。」
「私、これでも前衛ですから。ちゃんと鍛えてるのよ!それよりどうしてあなた達がこっちの世界にいるわけ?」
「殴った後にそれを聞く?」
よく見れば俊も腹を抱えて苦しんでいる。2人とも攻撃してくるとは考えてもいなかったので完璧な1発をもらってしまっていた。
「当然よ、私がどれだけ苦労したと思ってんのよ!本当に苦労したのよ・・・。」
薫が最後の方に消えそうなほど静かな声で呟く。
俊と集が目くばせをする。今まで黙っていた葵もそこに参戦してきた。
(どうする?予想以上に精神的にやばそうだよ。)
(とりあえず、慰めてくれ葵!)
上から集、俊そして2人に助けの視線を向けられた葵も顔を横に振って必死に否定する。
(兄さん、説明できる?)
(こういう時に神様が活躍しないでどうする!)
(今まで頑張ったじゃん!残りは兄さんがやってよ。)
(だが、断る。)
俊に目線だけで完全に拒否されて集が説明を始める。
自分たちは神にさらわれたこと。そこで必死にこの世界で金を稼ごうとしていたこと。俊のせいでモンスターの大群が町に来たこと。それを3人で撃退してランクを上げて金を手に入れた事。そこで神に覚醒した集が修行に行ったこと。俊がその間に違う国に渡って国に所属して王直属の部隊近衛隊の副隊長に就任したこと。などなど、今までのことを話した。
「神なら異世界ぐらい渡れないの?」
「ん?できるよ。」
「「「・・・・・。」」」
なんでもなさげにさらりととんでもないことを暴露する集に避難するような視線が集まる。
「いや、なんで非難されるような目で見られてるの、俺?」
「なら、なんで帰ってこなかったの?」
「いろいろ事情があったんだよ。」
「俺だけでも地球に返せよ。」
「1年いないからもう死んだことになってるよ。」
「でも、私には連絡くれた」。
薫と俊に非難されているところに落とされた葵の一言で沈黙が訪れる。
「どういうこと?」
薫がさっきよりも怒気を強くして集に詰め寄る。
「い、いや。連絡と言っても夢に出て励ましただけだよ。」
「うん。そうだった。私も普通の夢だと思ってたけど、今日会って確信した。あの時のは会いに来てくれたんだって。」
薫はいつ集が葵の夢に出てきたのか察して引き下がる。
「よくわからないから、俺にもわかるように説明してくれ。」
「わかってるよ。でもこれだけは先に言っとくよ。・・・・・。俺のせいじゃない。」
説明より先に自分の弁明をする集に、それでも神かよ。という言葉を飲み込んで俊は話に耳を傾けた。
「俺らが居なくなって葵が情緒不安定になって倒れてやばそうだったから夢に出現してフォローしたってこと。」
「端折りすぎだけど、大体分かった。」
ふ~、とため息をついて俊は腰を下ろす。そのまま木に背を預けて目を閉じる。
「集、殴っていいか?」
「そうならないように事前に俺のせいじゃないって言ったんだよ。俺も葵が寝込んでいるのに気付いてのは神になって全知のスキルを使った時だよ。それまで全知を使ったときに流れてくる情報をうまくコントロールできる訓練をしていたんだよ。」
「どういうことだ?」
集から初めて聞く話に俊は首を傾げて聞く。
そこに話の流れをよく理解できない葵を薫が干渉してきた。
「ちょ、ちょっと待って。今、神って言った?」
「ん?さっきも言って普通に受け入れてなかった。」
「無理無理無理、一編にいろいろ話されて処理できてないよ。」
「ていうか、集兄神だから人の夢に干渉できたの?」
「薫、もっと早くに気付くべきだよ。葵、それは他の神に頼んで手伝ってもらった。」
薫は1人考え込むような体制で動かなくなって葵は他の神のことをしつこく聞いてきた。
「と、とにかく。兄さんの国に移動しようか。ほら、朱雀起きて!またすぐに移動するよ!」
逃げるように朱雀の元に行って大きくなってもらって背に乗る集を急いで追いかけて俊たちも乗る。
『ここからは1週間ほどかけてディンペンド国に移動しますよ。』
バスの運転手みたいにしゃべりながら朱雀が飛び立つ。
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追記しておくが移動中は集はひたすら質問を回避するのに時間に費やしていた。
(果たして、説明するのと言い逃れ続けるのとどっちの方がめんどくさいかね?)
食事も朱雀の上で俊にご飯を創造してもらってみんなで食べながら移動した。
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結果、片道1ヶ月かかる道のりを2週間で往復するというとんでもないスピードだった。
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1人ディンペンド国に近づくほど元気をなくしていく俊に同情しながら4人はディンペンド国に近づいて行った。
レイナ
21歳
クラス未加入
人間
女
スキル 暗器使い