第36話
俊は鎧を脱いで旅人の服装へと着替えて急いで門の方へと歩き出した。
「早いね、あんなに簡単な説明でよかったの?」
「重要な部分はすべて伝えてある。他の部分はフェン王女から聞くだろ。」
「てか、さりげなく俺のこと交渉材料にしてなかった?」
「協力してくれるんだろ?」
「は~。」
今さらながら、俊たちの会話を当然のように盗み聞いている集に俊は何も言わない。すでにこの2週間で慣れていた。
「で、どうやって移動するんだ?」
「大丈夫、こいつを使えば1週間で着くよ。」
集が左手を上げてそこに乗っている朱雀を指さす。
「乗れるのか?」
「ああ、朱雀大きくなってくれ」。
『わかりました。』
炎に包まれて集たちを乗せれるように大きくなる朱雀に俊は驚いた。
「神獣って結構便利?」
「ああ、基本的に最強だし大きさ変わるし、こいつの場合死なないし。」
『この人に最強を言われても実感持てませんね。というか、便利ってなんですか。』
朱雀の言葉を無視して俊と集が朱雀に乗る。
「じゃあ、急いでジュリカ国に行ってみよう!」
集の掛け声と一緒に朱雀が飛び立つ。
『は~。休みなしで行きますよ。掴まってください!』
急加速して朱雀がジュリカ国の空へと消えて行った。
ちなみに急加速して瞬間地面が燃えたのは余談だ。
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(この世界はもう嫌!)
勇者召喚という面目でこちら側の世界に拉致されてきた地球の人間の1人である、大泉 薫は城に設けられた自室に籠っていた。
こちらの世界に来てから自分の体がおかしかった。ありえないほど足が速くなり、感覚もそれに伴っているかのように鋭くなった。何より地球では一度も触ったことのない剣もすぐに扱えるようになって今では国内最強の一人になった。力も地球に比べて強くなってその女の腕ではありえない力を出していた。
(なんでこんな化け物みたいになってるの!?)
薫は心の中で悲痛の叫びをあげていた。しかしそれを表に出すことはない。
(私がしっかりしないと。葵ちゃんは1年前に兄弟2人も行方不明になってしかもこんなことに巻き込まれているんだもの、私が支えないと。何よりここで弱みなんて見せてしまえばすぐに取り込まれてしまうわ!)
薫はこっちの世界に来てすぐに命の軽さに気が付いた。そして周りが召喚された4人を取り込もうとしているのにも気が付いた。男2人はこの国で王の次に偉い公爵家と手を組んでいる。手を組んだ理由が女を自由にしていいという腐った理由だった。この理由は男だからこそ通じているだけであり、女の薫がどういう扱いになるかは目に見えている。しかも橘川 葵という少女と薫は向こうの世界でもかなりの美形に属していた。そんな2人を放って置くような奴はジュリカ国にはいない。
「ただいま」。
薫が1ヶ月ほど前に決意したことを思い出していると葵が帰ってきた。
「おかえり、今日はどうだった?」
自分の感情を押し殺して葵に笑顔で接する薫に葵は暗い表情のまま答える。
「今日も、また魔法の練習。疲れた。」
これだけの会話だったが薫には十分だった。
葵の兄弟が行方不明になって1ヶ月ほど葵は精神的に追い詰められていた。そんなこともあり葵は寝込んでしまった。それがさらに2ヶ月続きある日突然葵は元気になった。それでも兄弟がいたころのように笑わなかったがそれでも心は持ちこたえた。少しずつ家族と話すようになり薫とも話せるようになった。それまでもずっと薫は葵に話し続けていた薫は葵の変化を大いに喜んだ。そして兄弟の行方不明から1年経ってついに葵は薫と話し始めた。
しかし、世の中そんなにうまくいかなかった。
しばらく薫が心を開き始めた葵と下校しているとナンパされた。それはいつものことだったので適当にあしらおうとすると急に見ている景色が変わった。召喚されたのだ。
それでも葵に大した変化はなかった。もともと絶望していた葵に世界が変わっても意味がなかった。
葵と幼馴染な薫はそんな葵に希望を持ってもらいたくて必死にいろいろしていた。
「そう、なら早めに寝よ。」
「うん。」
その一つに葵を守ることが入っていた。
行方不明になった葵の兄弟に少なからずの不満を思い出しながらベットの中に入っていった。
(兄弟なら葵ちゃんのことぐらい守りなさいよ!)
葵を守るように抱きながら薫は意識を沈めて行った。
2人は百合ではないです。
そこのところ間違えないように笑
一応キャラの情報載せますね!!
橘川 集
(永遠の)17歳
クラスA
魔天空神
男
スキル 武の体現者・匠・全知・氣功師・天才
次回は俊を載せます