第33話
「やっと、ここまで来たか。」
今、集たちはディンペンド国の首都の隣の町まで来ていた。
ここまで集は約1ヶ月かけてきていた。
(兄さんとレンに一応会いに行くか・・。)
「悪いけど、今日は俺別行動するから。」
「え~。じゃあ、お金頂戴!」
レイナとフェンが酔いつぶれてからの旅はすべて金を集が管理していた。レイナは確かに無駄遣いはしないがフェンに甘くてすぐに金を出してしまう。その結果、緊迫した状態の旅になってしまった。
(ここからなら、少し贅沢してもいいかな?)
集は後少しでディンペンドの首都に着くからと普段より多めに金を渡す。
それを手に取って興奮した様子でレイナを引っ張って人ごみに消えて行った。
最後の方でレイナが心配そうに集を見ていたが集はそれに気が付かなかった。
「・・ハァ・・・。さてと、行くか。」
集も小さくため息をついて俊たちがいる宿の方に歩き始める。
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そのうち、迷わずに1つの宿の前に立ち止まる。
「ここか。」
ため息をついて宿に入る。受付の人に声をかけられるが場所がわかると断って会談を上っていく。この宿に食堂はなく、一階は宿の主人の家族の部屋になっている。階段を昇って3階まで上がる。部屋の前まで来てドアを叩く。
「はい?」
俊の声が聞こえてくる。
「宿の者ですけど、お客様に会いたいというものがいますけどいかかいたしますか?」
完全にふざけて対応する。
「わかりました。すぐに行きます。」
カツカツカツカツ・・・。
俊の足音がドアの目の前で止まる。
「久しぶり!」
ドアが開いた瞬間に手を広げて抱きつこうとする。
「久しぶりだな、集。1年ぶりか。」
「そこまでクールに返さなくてもよくない?」
両手を広げた状態でアイアンクローをされて身動きが取れなくなった。
そのまま部屋に投げ込まれてドアが閉まる。
床に尻餅をついたまま集が話し始める。
「変わったね、兄さんは。」
「お前もなんか雰囲気が変わったな。俺は仕事柄、常に冷静であることを心掛けていたらこうなった。」
「そっか、騎士になったんだよね~。俺もいろいろあったけどギルドカードを見ればわかると思うよ。ぶっ!」
背中から来る衝撃を避けずにもろに受けとめた結果、変な声を出した集は衝撃の主を撫ぜながら話す。
「レンも久しぶり。身長伸びた?実力も上がってるみたいだね。今度手合せしようか。」
150㎝ぐらいだったのが155㎝まで伸びているレンにいろいろ話しかける。
「うん、寂しかった。」
その言葉を聞いて集は申し訳ない気分になる。
「とりあえず、ギルドカードを見せ合わないか。いろいろ変わったところあるだろうし。」
そういって俊は近くにあった鞄からカードを取り出して集に渡す。
「これは、いろいろすごいね。」
実際、ありえないスキルに驚く。
橘川 俊
19歳
クラスA
人間
男
スキル 魔力無限・創造魔法・剣王・無限の魔眼・天才
剣王はそれ剣だけで1国の兵力と対等に渡り合えるという称号でもありさらに剣術の力を上乗せするというチート能力である。
「兄さん、全魔法使用可能はどこ行ったの?」
「なんか魔法使いまくったら消えた。」
(なるほど、スキルではなく兄さん個人の力として消化されたのか。)
これ以上進化できない全魔法使用可能のスキルはカンストを起こしてそのまま俊の体に消化されてスキル欄から消えてしまっていた。
「これがレンのか。」
レン
16歳
白虎族
女
スキル 獣化・隠密
隠密はそのままの意味でそれ以外に変化は見当たらなかった。
集の眷族の証としての痣は消えていないから力は上乗せされている。
「新しいスキル覚えたんだ。偉いね~。」
カードを返してレンの頭を撫ぜると気持ちよさそうに目を細めた。
「で、お前のも見せろよ。」
「うん、驚かないでね。」
集がカードを取り出して二人の見える位置に置く。
橘川 集
17歳
クラスA
魔天空神
男
スキル 武の体現者・匠・全知・氣功師・天才
「人間やめてんじゃねえか!」
「wwww」
「笑いごとじゃねえよ!」
「常に冷静にあるんじゃないの?」
「限度があるだろうが!雰囲気が変わってるように見えるのは人間やめたからか!?」
「兄さん、少し落ち着いてよ。うるさいよ。ん?レンはどうした?」
背中から抱きついていたレンがあまりにも静かになっているから絶句してるのかと思うと、
「あんましゃべらないと思ったら寝てるのか。」
もともとしゃべるような性格ではないことを知っていた集もカードを見て何かしらの反応をするだろうと楽しみにしていたのにこれは落胆して、
(でも、寝顔GOODJOB!)
いない。
「とりあえず、俺はこの後も少し用事あるからここから移動するけどお前はどうする?」
「ああ、その件についてなんだけど。」
「ん?」
この後集に話されたジュリカ国王女のフェンについて聞いた俊は、手間が省けた事とどうやって集のことを説明するか小1時間悩んでいた。