第31話
GWまさに無意味な過ごし方してます!
許してください!
副隊長は猛省していた。
半年経ってだいぶ自分の仕えている人のことは理解できていたつもりだった。
「どうやって情報を得たのかは知りませんけど、姫様に教えたのは失敗でしたね。」
サンテリアは今にも1人で乗っている馬をとばしていきそうになるのを抑えながら隊長が声をかける。
「(まったくだ。この国は比較的安全だと思ってたら戦争吹っかけられるし、騎士になったと思ったら姫さんの子守で振り回される。不幸すぎるだろう。)」
「声に出てますよ。結構溜まってきてるようですね。」
ストレスを過剰に溜め込んで自分の心の声までもが外に漏れ始めてしまう始末だった。幸いサンテリアには聞こえてないようなので不敬罪に問われることはないだろう。
今回、俊が手に入れた情報は贔屓にしている情報屋から買ったものだった。本人曰く、ほとんどの情報を持っているとのことだ。
(あの爺さんの情報のおかげでジュリカ国の臨戦準備の情報をいち早く手に入れることができたのはよかったけど、必ずしも情報をすぐに教えたらいいというわけじゃないことを知ることができたという事でいいかな。)
頭の片隅でどこかで見たことのあるような爺さんだったので一瞬思案するがなかなか思い出せないですぐにあきらめてサンテリアの後を追う。
「で、姫様はどこに向かっているのですか?」
「決まってるじゃない、そのジュリカ国の王女のところよ!」
「どこかわかっているのですか?」
「え?」
今まで先頭で馬を走らせて興奮気味だったサンテリアが一気に熱が冷めたかのようにゆっくり道端によって降りてくる。
「どこにいるの?」
「わかりません。自分は亡命しようとしているという情報だけを入手したため亡命用の経路はまったく存じていません。」
少し拗ねたように聞いてくるサンテリアに俊が率直に答えるとサンテリアは立ちくらみを覚えて地面に両手両膝を付けてしまう。所謂orzだった。
「姫様ともあろうお方が地面に手をついてはいけません。」
隊長がサンテリアを立たせる。
「ありがとうアリナ。で、どうするの?」
2人の視線が俊に集まる。
「自分の考えでは近衛隊員を使って亡命経路を見張らせるつもりでしたので。姫様が1人で飛び出した時点でこれは無理ですね。」
「い、いいじゃない!少数の方が動きやすいと思ったのよ!」
「今回は動きやすさよりも人数が必要でしたけどね。」
「ほら、他の部隊に気付かれたら大変よ。」
「こういうことは国が動くべきものなのでは?」
「え?う、動かないかもしれないじゃない。」
「それでも姫様の近衛隊を動かせましたよ。」
「うっ。」
サンテリアが言い訳を並べるがそれをアリナがすべて一蹴する。
サンテリアは姫である。しかし第3王女でほとんど王位継承権ないのと同じだった。上にはまだ2人の王女と1人の王子がいた。故に第3王女であるサンテリアは比較的に自由に育てられた。その結果が後先考えない姫になった。王はそれを反省してサンテリアの双子の弟と妹には厳しい教育をした。
サンテリアは後先考えない行動に騎士たちは振り回されるが他の兄弟と違って無駄に王家として威張らずに騎士たちから親しみやすい姫として接されてきた。そのせいで王家としての敬意は少なく周りから説教をされることは日常風景でもあった。
サンテリアはアリナからの糾弾から逃れるべく俊に助けを求めた。
「俊!何かほかに策はないの?」
「ないですね。」
サンテリアが俊を見た時から決めていたセリフで突き放す。
しかし見てられなくなって俊は助け船を出すことに決めた。
「ただ、候補を2通りに絞っていくことでどうにかしましょう。かなり運試しですけど可能性の高い場所から埋めていきましょう。」
「ほんとに!さすが俊ね!」
自分の期待に応えてくれた俊に対して絶賛を送り抱きついてくる。この場に他の隊員がいれば殺さんばかりに敵意を向けられていただろう。
多少邪魔だと思いながらサンテリアを離して回る場所について話す。
アリナとサンテリアが安全でかつ距離が短くて済む場所。
俊がディンペンド国とジュリカ国の戦線とは別の最短ルートを行くことになった。
「なんで、私が最短ルートじゃないの!?」
「よく見てください。国境にティカトスの森があるじゃないですか。危険すぎます。」
サンテリアは小さいころからティカトスの森の怖さを毎晩お伽噺風に話されていて尻込みしてしまう。
そのまま、隊長がサンテリアを引っ張って安全なルートの方に出発した。
「俺らも行こうかな。な、レン。」
どこかに隠れてついてきているだろうレンに語りかけながら俊は馬を走らせ始めた。
(ついでに道中で集を回収していくか。)
弟のことを考えてあげられる優しい兄であった。