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第30話

「暇だ。」

集は馬車の上に乗って砂鉄を集めていた。

最初は馬車の中にいたけどフェンのチラチラ見てくる視線を狭苦しさに耐えかねて上に逃げ出した。すでに馬車で移動を初めて3日が過ぎていた。馬車の上は集の定位置に御者がレイナ、中に朱雀とフェンになっていた。

「あと1日の辛抱です。そうすれば街に着きますよ。」

そう、あと1日耐えたら街に着く。だけどそれはディンペンドではなく、カラスカと呼ばれる街だった。そこからさらにいくつかの街を転々として約1ヶ月でディンペンドにつく予定だ。

(単身で一気に移動距離を縮めた方が良かったかな?)

周りに不信がられるデメリットがあるけど暇をしなくて済む。

砂鉄を1つにまとめて圧縮する。それだけで1つのピンポン玉サイズの黒い球が完成する。それをこの3日間やり続けていた。おかげでかなりの数の砂鉄の球が完成していた。

この3日間すれ違ってきた行商の馬車などに例の噂を流して確認させに行ったりしていた。

「今日はここら辺までにしましょう。」

馬車が道の端に寄せられて止まる。

レイナが御者台から降りてドアを開けてフェンの降りる手助けをする。

いちいちそんな無駄ことする必要あるのか疑問に思った集だがそういう文化なんだと思って自分を納得させた。

完成した砂鉄の球をしまって馬車から飛び降りる。

「今日も特に問題はありませんでしたか?」

「ああ、問題なかったよ。」

何回か森から魔物らしき影が見えたことは言っていない。

(どうせ、朱雀の気配を察してあきらめたんだろうな。)

ティカトスの森から離れたとはいえまだ周りは森におおわれている。あと少しすればもう少し見晴らしのいい場所まで出るだろう。そこから少なくとも年に100件程度の被害が出るだけで済んでいる。

「かなり、順調に行っていますね。魔物も出てきませんしなかなかこういう移動はありませんよ。」

しかし、魔物ならまだいい方であった。手が付けられないのは人間である。人間といってもごく一握りの屑たち、盗賊たちであった。集たちとの力の差もわからずに突っかかってくる可能性がある。しかも、人間だから魔法使いもいるだろうし女だと最低犯される可能性がある。

「ご主人様、申し訳ありませんが・・・。」

「わかってるよ、適当に肉を狩ってくるよ。」

この3日間集のやっていることは昼間に昼寝をして夕飯のための肉を確保しに行き夜の警護をしている。

その日も何も起こらずに終えた。

場所は変わってディンペンド国の王城の一室にて、1人の男が山のようにある書類を片付けていた。

「第3席!また隊長と副隊長を連れて姫様が居なくなってしまいました!」

ピタリと男の持つペンが止まる。このペンは副隊長が発明した墨をいちいちつけなくても済む筆でペンと呼ばれるものらしい。

「俺に書類を押しつけといて何勝手に遊びに行ってんだよ!今度こそはその報いを受けさせてやる!!!!」

普通では出ない叫び声をあげて部屋を出て行こうとするその男を報告しに来た男が必死になって行く手を塞ぐ。

「こここ、今回は書置きがありまして、私ではよくわかりませんので第3席の意見を聞きたいと思っております。」

自分の行く手を塞いだ部下に睨めつけながら差し出された紙を奪い取って中の文字を読んでいく。

[今回は、ジュリカ国から1人の王女が亡命してくるとの情報を手に入れたのでとりあえず保護をしに行ってくるね。どうせ、私の護衛はあの2人がいれば足りるだろうしみんな邪魔だからおいていくことにしたから。いつものことだけど今回はそれなりに理由があるから許してね。

追伸

久々に外に出る理由ができてその衝動に任せてみました。探さないでください。

みんなの宝物サンテリア=K=ディンペンドより❤]

その瞬間、目の前が真っ白になる感じがした。

どこからその情報を手に入れたのかもわからないし、そもそもこの国はその情報を掴んでいない。それでもそれを知ることができたのは副隊長のおかげだろう。

副隊長と呼ばれる男はこの半年でディンペンド国の第1王女の近衛隊の副隊長に抜擢されるほど他の人間とは格が違った。

(また、あの男がいらぬことを姫様に伝えたのか~!)

第3席と呼ばれた男は副隊長の顔を思い出して一気に気持ちが冷めていくのを自覚した。

(あの男がいる限り姫様に害は及ばないだろう。皮肉なことにな。)

第3席は副隊長のことを憎いと思う気持ちを持ちながらもその実力を認めて静かに書類の山と闘うことにした。


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