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第28話

「申し訳ございませんでした!」

目の前で騎士が土下座をしている。侍女は信じられない光景を目の前で繰り広げられて顔を引き攣らせる。

(あの、プライドの高い騎士がこんなにもあっさり地面に頭を付けるなんて・・・。まあ、これを見せられてしまったら仕方ありませんか。)

侍女は騎士から視線をあげて目の前の惨状を凝視する。侍女の目に映るのは1人の少年、集だった。自分を報酬にする代わりに味方に付けた冒険者である。その本人もかなり焦った顔をして惨状の収束に尽力を尽くしていた。

騎士と集との勝負は最初の一振りで勝負は決まってしまった。掛け声と同時に抜かれた刀に一番前にいた騎士は真横に両断された。最初はそれだけだと思っていた。集ですらその後に起きた現象に戸惑っていた。剣先から刀の軌道をなぞるかのように炎が噴き出した。しかもそれは最初の居合には負けるが、かなり鋭い斬撃として騎士たちに襲い掛かった。突然の事態に残りの騎士たちも反応することができなかった。結果、一番最後尾にいた騎士だけが生き残った。その前にいた2人の騎士にぶつかり勢いを殺された斬撃は最後尾の騎士の鎧を切り裂いて溶かすだけで止まった。それだけでも重度のやけどを負ったが命に別状はなかった。

結局生き残ったのは最初に気絶した騎士とやけどを負って降参した騎士だけだった。

集は斬撃の衝撃で燃え移った火などを消すのに奮闘しながら後ろから送られる視線に気が付いていた。

(これは恐怖と期待の感情がこもっているな~。いろいろめんどくさいことになっているけどメイドさんが手に入ったからそれでいいか。)

視線の正体は当然騎士と侍女だ。騎士は当然だが、侍女は自分たちの目標を達成してくれそうな人材を目のあたりにして興奮していた。

集は最初は火を消すのに苦労をしたが、最終的に空気を固めて炎を消す方法を思いついて一気に鎮火していく。

「今回は、ありがとうございました。」

後ろから侍女の声がして集が振り返ると体中を傷だらけにしているのに初めて気が付いた。

「ちょっと、失礼。」

集は侍女に手を翳す。すると、体中の傷が次々と消えて行った。

「これは?」

「体の細胞を一気に活性化させることで超速で傷を治療しているんだよ。」

「?とりあえず、治療をしてくださったようでありがとうございます。」

集の説明は理解できなかったが直してくれたことだけは理解できたからとりあえず礼を言う侍女。

「あなたさまはなんとお呼びすればいいでしょうか?」

「ん?俺は、集。橘川 集。好きなように呼んでいいよ。」

「それでは、ご主人様とお呼びいたしますね。私はレイナと言います。」

「グフッ!」

(そういえば、このメイドさん俺のものになったんだった。朱雀のせいで忘れていたよ。)

「いかがいたしましたか?」

「なんでもないです。」

動揺して敬語になってしまう。

「おやめください。ご主人様は私の主なのですから敬語などいけません。」

「わかった。それで、あの馬車には誰がいるの?」

会話が途切れる。レイナは気まずそうにうつむいてしまう。

集としてはただ単に外の戦闘が終わったのに出てこない馬車の主に興味を持っただけであったがレイナがうつむいたせいでもあって少し焦りを感じ始める。

『主様、敵はいないようです。』

「ナイスタイミングだ、朱雀!」

今まで周りの索敵をしていた朱雀が帰ってくることでその場にあった微妙な空気が壊れる。

そのかわりにレイナの目が驚いたように大きく開かれる。

「魔物がしゃべっている?」

『魔物とは失礼な。私は神獣であって魔物という括りから外れておるはずじゃ。』

「っ!申し訳ありません。ただ、なぜ神獣様が使い魔の真似事などしてらっしゃるのですか?」

「神獣様?ああ、確か神獣を崇拝する宗教もいるぐらい凄い存在だったね。だいぶ忘れていたよ。」

『それは主様が異常なだけであって普通の人は神獣を使い魔にしようなんて思いませんよ。ちなみに私が主様の使い魔をやっている理由は、私が完膚なきまでに敗北して私の方から使い魔にしてもらったのです。』

「っ!」

今日何回目かわからない絶句をして朱雀と集を交互に見るレイナ。

(なぜかとんでもない人の侍女になってしまったようですね。それほどまでに実力があるなら・・・。)

レイナに1人で騎士たちの後処理を任せて集たちは馬車の近くまで歩いて行った。

「これは、豪華な馬車だな。防音、耐衝、耐斬、耐魔。いろいろ付与してるね。」

いい加減、中の人の神経の図太さにいらいらしながらドアに手をかける。

(非戦闘員に戦わせるなんて何を考えてるんだ?顔を拝んでやるよ。)

ドアに手をかけて一気に開く。

そこにいたのは手に短剣を持った貴族っぽい格好をしていた。しかし、その体制は・・・。

「来ないで!来たら自分でのどを切るわよ!」

自分ののどに短剣を突き立てた女子であった。


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