第26話
テンプレで修業してきます!笑
レンと一緒に寝た次の朝早くに起きてしまった3人はギルドに更新をしに行ってそのまま集は森に修行に行った。
・
あれから1年が経った。
・
集は森の出口の近くにいた。
「ふー、大自然と戯れるのにも慣れてきたから出るのは楽だな~。」
そう、この森は未開の森。ティカトスの森と呼ばれているものだ。
目印なんてものはない。そのため、必然的にすぐに迷子になる。最初、集は寝床の確保をしようとした。しかし、いいところを探すのに3日。それも汚い洞窟だった。それまでに大量の魔物との戦闘で体力はともかく不眠不休の行動は精神的につらい部分があったから仕方なく、そこを拠点にした。
それからも、最初の1ヶ月は大変だった。寝こみを襲われて強力な魔物の軍勢に洞窟は壊されかけるは、散々な目にあった。
それでも、1ヶ月を過ぎると周りの魔物たちもそこが集の縄張りであることを知って集を恐れて基本的に近寄らないようになった。
半年が過ぎると、拠点から遠いところに行かない限り勝負を仕掛けてくる魔物はいなくなってしまった。それだけじゃなく、集を見かけたら服従のポーズをして必死に生きようとする。
「ここまででいいよ。ありがと。」
集は自分が乗っていた物を制止する。それは鳥だった。しかし、それは鳥なんて生半可なものではなかった。火の鳥、不死鳥と呼ばれる神獣だった。集が屈服させた魔物たちの中でも一番強く気に入っている奴だった。
「クルゥ。」
甘えた声を出して別れを惜しむようにゆっくりと地面に近づいていく。集は不死鳥の上で胡坐をかきながら不死鳥を撫ぜてやる。ようやく、地面に到着する。不死鳥は、身をかがめて降り易い体勢を取る。降りた後も未練がましく見てくる不死鳥に罪悪感を感じ始めた集は言い訳をする。
「もうちょっと、小さければ連れていってやれるんだけどな。」
集はその瞬間それを聞いた不死鳥が一瞬目を光らせたように見えた。悪い予感がしたから、一歩下がる。
「クウォ!」
不死鳥が爆発して炎に囲まれる。しばらくして、炎が収まったところには鷹のサイズになった不死鳥がいた。
「そこまでして、ついてくるつもりか。」
諦めた表情をして、不死鳥と使い魔契約をする。使い魔契約と奴隷契約と大差はない。それを魔物か人かどちらにするかの違いだ。
しばらくして、集が歩き出すと肩まで飛んできてそこに止まる。
「そこがいいのか?」
『はい、ここが気持ちいいです。』
「っ!?」
驚いて、首を不死鳥の方に向ける。驚いている理由は単純だ。鳥がしゃべっている。
「おまえ、話せたのか?」
『っ!ようやく、主様と言葉を交わすことができるのですか!?本当に私の言葉を理解できていますか?』
「できてるから、そんなに身を乗り出すな。邪魔くさい。」
『すみません。あまりの嬉しさに我を忘れていました。』
不死鳥を飼い慣らしたのは今から3か月前。これまでに一度としても言葉を交わしたことがなかった。不死鳥は言葉を理解しているらしく、ペットとしては賢い者だった。
「使い魔になったから武器化で知るよね?やってみて。」
『はい。』
使い魔になった魔物は武器化というスキルを手に入れる。武器の形は同じ魔物でも主が違えば形は変わる。強さは主と使い魔の強さによって変わってくる。
今回は方や神で方や神獣。どういう代物が出てくるか期待を膨らませながら集は形を作り始めている炎の中に手を差し込む。
炎の中から取り出した武器は鞘に納められている剣だった。それでも外観からそれが反りを持っていて片刃であることがわかる。俗に言う、刀である。
「刀か!」
武器の形を知って興奮した集は一気に鞘から刀を抜く。
刃は、紅蓮に色に染まっていてきれいなその色に集は見惚れてしまう。柄には鳥の紋様が描かれていて不死鳥であることを示していた。
「きれいな刀だな。」
『きれいだなんて、照れますよ。』
「!その状態でもしゃべることができるのか!」
『一応、私は神獣ですから。普通はできません。』
適当に相槌を打って刀を鞘にしまう。武器化できるのは上位の魔物だけ。それでもしゃべることができるのは、神獣だからだろう。
「どこかで、威力を試してみたいな。」
『私は、お勧めしませんよ。』
不死鳥の呟きは集の耳には届かずに集は出口に向かって、走り始める。
しばらくして、街道が見えてきて、集がスピードを落としていく。
(さすがに、この速度で走っている人がいたら驚くだろうね。それにこの森から出ていくのは人には見られたくないし。)
静かに街道に出て、周りを見渡して誰もいないことを確認してから不死鳥に話しかける。
「そういえば、お前名前は?」
『魔物に名前があると思いますか?』
「ないな~。」
(これって、また俺が名前を付けてあげる感じな流れ?)
『主様、もしよろしければつけてくださいますか?』
集は天を仰いだ。どういった、名前がいいのか思いつかないのだ。
「え~と、それじゃあ何にしようか。・・・よし!お前は今日から朱雀だ!」
『スザク?』
「そうだ、いい感じじゃないか?」
『スザク、うふふふふ。私は今日からスザク。うふふ。』
「聞こえてるか?気に入ったならそれでいいけどね。」
なぜか、トリップしてしまった朱雀を放置して、街道を歩いていく。目標は、ディンペンド。俊たちがいる国だ。最初に訪れた町グリスカは、ジュリカ国に所属している。集はディンペンド国の首都ディンペンドに行くつもりでいた。
「国と首都が同じ名前って珍しくないけど捻りがないね。」
くだらないことを言ってしばらく朱雀としゃべりながら歩いていく。
「今までで一番おいしかった肉って何?」
『やはり、デュンエルの肉ですね。脂がのっていて肉もやわらかい。そして何より食える部分が多いんです。』
「そうか、今度食いに行くか。おい?あっちの方でなんかドンパチやってるぞ。何やってるんだ?」
『いくら平坦な道とはいえこの距離で見えるのは主様だけですよ。』
かなり先の方で馬車が襲われているように見えて集は調子に乗って近くまで見に行く。
そこでは、たった1人の女騎士が装飾された馬車を守っていた。
「ものすごくテンプレな感じがするんだけどスルーって有り?」
『主様が決めてください。』
テンプレものだからスルーしてみたい気持ちもあるけど、良心がそれを許してくれそうにない状態だった。自分の欲望を取るか、気持ちを汲むか。
「暇つぶしになってくれたらそれでいいか。」
結局、暇な現状から脱することができるようなことであればいいという事で落ち着いた。