第24話
あれから、まだ3分しか経っていない。
(どうやったら、状況から抜け出せるのじゃ!)
冷や汗を掻きながら必死に打開策を出そうとするギルマス。
この部屋の特性上嘘をつくことはできない。
集は、持ち前の答えを導きし者を使って嘘がないか徹底的に追い詰める準備をする。
俊は、どんな道筋を立てて追い詰めようか策を考える。
レンは、1人気を張って逃がさないようにしている。
「あれは、こちらの手違いで兵士たちが怯えて牢屋に入れてしまったのじゃ。」
部屋の空気からして逃げられそうにないことを把握するギルマスはとりあえずあやふやにすることにした。
(嘘でもないし、すべてが本当というわけでもないがな。)
「嘘でもないしけど、すべてではないな。さっきまで、兵士は俺たちが魔物を退けたことを知らなかったみたいだ。途中から気付いておびえてたぞ。」
(なんだ、知らなかったからあんな偉そうな態度を取ってたんだね。)
俊の鋭い突っ込みにギルドマスターは言葉を失い、集は兵士に悪いことをしたと反省した。
(もう少し遠回りな方向で追い詰めてくるものだと思っていたが、随分と直球で来るの~。)
「まー、なんで俺たちを牢に入れたのかは、この際どうでもいい。」
「「?」」
ギルマスとレンは急な方向転換に首を傾げる。
「問題は、俺たちを牢に入れて自分たちの実力を過剰に強く見せようとして何を求めていたのかだ。」
「っ!」
ギルマスがこれまで以上に体を強張らせる。
実際はギルドの実力を大きく見せて最後まで鎖を付けてやろうとしたが、オーク用の鎖は斬られて圧倒的な実力差を見せつけられては意味がなかった。
ギルマスは3人をただの脳筋だと思い、今後の話しの後は適当に放り出すつもりでいた。
(まずいぞー。これほどの実力者に恨みを買われたら将来儂の立ち位置が無くなってしまう。この者共を手放さないためにも、何か提示しなければ!)
集は顔から笑顔を消して氣を操作して圧力を増やす。ついでに風を飛ばしてレンの鎖を切る。
突然起きた現象にギルマスが震え始める。
俊はギルマスの動向を見逃さないように目を細めて見ている。
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「え~と、つまりじゃな。我々ギルドはクエスト以外にも国が戦争するときに協力する契約をしてその国にギルドを構えとる。じゃから、その時に我々は冒険者を提供するという形式で一時的に貸し出しておる。その時に、実力の高いものほど値段が高くなる。」
2人は知らない情報が出てきたことに少なからず驚いていたが、表情に出さないように意識して話に耳を貸す。
「他にも、ギルドが国から金を受け取る方法はある。」
「「それは?」」
「冒険者を国に売る方法じゃ。」
(なるほど、やろうとしたことはこれのことか。)
俊が一瞬眉にしわをよせて怪訝な顔をする。
「気付いたようじゃな。そうじゃ、儂はそれをやろうとした。しかし、これには最大の難点がある。」
「その冒険者を完璧に掌握できていることか?」
「そうじゃ、それでその方法を国に冒険者と同時に売り渡すのじゃ。」
「だけど、今回はかなり意味のない処置を取ったんじゃない?」
集が未だ今回の行動を理解できてなかった。
俊がそれを聞いて肩を竦める。
「いや、この後は簡単だよ。ギルドが強大な力を持っていると思わして俺たちを精神的に追い詰める。そこで、ギルマスがその回避策を打ち明ける。」
「それが国に所属するという事・・・。それでギルドが国に冒険者を売ったという事が成立するわけだね。」
ギルマスは参ったとばかり手をあげる。
「そうじゃ、貴様たちは3人で魔物の軍勢を壊滅させるほどの実力者じゃ。かなりの高値で売れるじゃろうと思ってこんな形を取っておった。」
そこまで聞いて集は天を仰いで目を瞑る。
「どうする?」
「とりあえず、口止めじゃね?」
「そうだね。ねえ、ギルマス。これ以上俺たちにちょっかい出したら存在消すよ?」
ギルマスの顔が青白くなっていく。忠告通りのことができるだけあってこの安い脅しにも意味があった。
「わ、わかっておる。もうこれ以上貴様らには迷惑はかけん。それと、迷惑料や魔物の軍勢を退けた報酬としてランクをあげといてやる。また今度更新に来るのじゃな。」
「お!それはいい。俺の実力があることがわかるから国に売りつけやすい。」
「結局国に所属するんだ・・・。」
「当然だろ、安定した収入がほしいからな。お前は自由に生きればいいさ。」
2人でだべりながらレンを連れて部屋を出て行った。