第21話
「今の貴様は神になっておるから、異常に強くなっておる。頑張って制御するのじゃぞ!」
消える瞬間アイテールがしゃべっていたのを聞きながら落ちる感覚に襲われた。
(やっぱり落ちるのか・・・。)
次の瞬間、生身の体に帰っていた。
「・・・。」
硬い床の上で目を覚まして、呆然とする。寝た時とは違う天井だった。
「ここは?」
「牢獄です。」
独り言に間髪入れずに帰ってきた。そっちを見るとレンが鎖に繋がれていた。
「なんで鎖?新しいプレイ?」
「周りを確認してください。」
言われた通りに周りを見回す集。基本周りは石で囲まれていて、1つの壁だけ檻になっていた。
「これは、いわゆる牢屋というものですね。」
「起きるのが遅いぞ。」
向かいの牢屋から聞きなれと声が聞こえて、そちらに意識を向ける。
「なんだ、兄さんもいるんだ。使えないね。」
「なんの根拠があって俺が使えないということになるんだよ・・・。」
は~、とため息を漏らす俊。
「とりあえず、脱獄する?」
「やめといたほうがいいんじゃないか?そろそろ俺たちの迎いが来るはずだから。」
「迎いって?」
ガチャ!ギイイイィィィ
集が質問している途中で何かが開くような音がする。
「出ろ!貴様たちに会いたいと言っているお方がいる。」
牢屋を開けて、集たちを連れ出す。それを手足鎖で塞がれた状態でおとなしく従っていく俊たち。
「(会いたいっていうか、会うために俺たちをよんだんだろ。)」
「(だよね。なら最初っからその人のところに連れていっとけばよかったのに・・・。硬い地面に寝たせいで体が痛いよ。…って、あれ?)」
「(どうした、集?)」
「(なんでもない。)」
自分の体になんの異常もないことに気付いた集。
(向こうで受けた傷はこっちには影響しないみたいだな。)
自分の体を確認していた集を心配してレンがオロオロする。
「大丈夫だよ。」
微笑みながらレンを撫でる。気持ちよさそうに目を瞑るレン。
周りから見たら手足が繋がれている少女が頭を撫でられて和んでいるというなかなかシュールな形だ。
「しゃべってないでさっさと来い!」
少し話した程度の二人に向かって吼えてくる。
「(こいつすげえビビってるぞ。)」
俊が集に耳打ちする。
集はそれを聞いて悪そうな顔をする。
「ねえねえ、名前何?」
ビクッと男の肩が震える。
(バカバカしい。)
俊は悪乗りをし始めた弟に飽きればがら口出しをしない。
「き、貴様に教える義務はない!」
震えた声で返す男の様子に触発されたのか、さらに集は追い詰めようとする。
「へ~、俺たちって3人で魔物の軍勢を殺し尽くしたんだよね~。だから、教えてくれても罪にはならないんじゃないかな?」
さらに、大きく肩が震える。
「わわわ、私はサササ、サスペンダントと言いイイます。」
あまりのビビりように敬語になって声が震えてしまった。
(なぜ私がこんな役目になってしまったんだろう・・・(・д・。)。ああ、神よ私を助けてください。)
男は心の中で本気で生きて帰れることを祈っていた。そんなことも知らずに、怯える男を見て集は最初にあったストレスを解消していた。最後の方には、顔が白くなりすぎて視認と比べようがなくなっていた。
「こ、ここです。」
男が開けたドアに入ったらそこにはソファが向かい合うようにあり、間に机があった。
(とりあえず、座るか。)
俊が先導してソファに座り、その後に集とレンが座った。
「誰が会いに来ると思う?」
集が体を伸ばしながら俊の方を向くと、手錠を壊して足枷を取り外そうとしていた。
「あ。なんだって?」
「なんでもないよ。」
鎖を壊すのは相手が来た目の前でやる方が効果的だと判断した集は鎖を外さずにしばらく待っていた。
その部屋唯一のドアがもう一度開いた。そこから顔を出したのは小さな少女だった。