第18話
とりあえず、しゅーりょー
「さあて、兄さんはどうでもいいからレンを助けてくるか・・・。」
周りを見渡してレンを探す。すぐに見つけた。
「いや、あれは凄い・・・( ̄ω ̄;)」
獣化の能力だろうか、完全な白い毛の虎になっている。体の所々を怪我しながら魔物たちの反応できない速度で次々に殺していく。
ドガアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
レンの戦いを見てやることのなくなった俺は雷で適当に魔物を消していく。
「はー、今回の収穫は気と魔神だけか・・・。魔神はまだまだどういう能力かわかってないし、要研究だな…。」
魔神の力を収めてミノタウロスの使っていた壊れた斧を持ちあげる。斧を魔物たちが大量に集まっているところに投げる。回転して飛んで行った斧は魔物たちを半分ほど薙ぎ払ったところで弾き飛ばされた。
「馬鹿野郎!俺を殺すつもりか。」
「兄さんがいるとは思わなかったよ。(*⌒∇⌒*)テヘ♪」
兄さんが魔物たちの群れの中から抜け出してこっちまで来た。レンもそれに気づいて魔物たちを振り払ってくる。
「で、スキルはどうだったの?」
「スキル自体はチートだ。けど、剣がそれに追いつかなかった。」
「じゃあ、その剣は何?」
「創造魔法で作ってみたやつだ。けど、複雑なものを作ろうとするともろくなるだろう。」
へ~、そこまで理解できてるんだ・・・。
さりげなくレンのほうを見る。そこには遠目ではわからなかったけど、美しい白い虎がいた。体は細いけど強靭な筋肉に覆われていて無駄なものがない。それに雰囲気がすでに強者のようなものだ。
「へー、獣化ってそうなるんだ~。」
俺が、感心したような声を出すと兄さんも乗ってくる。
「確かに、すごくきれいだな。」
レンは、照れた様子で目をそらす。
俺はそれを見てにやけて語りかける。
「そろそろ、飽きてきたから終わらせない?兄さんの殲滅系の魔法でどうにかならない?」
俺の提案を聞いた兄さんは少し考えた様子で答える。
「なくはないけど、巻き込まれるかもよ?」
「愚問だな、俺がレンを守ればいいだけだろ?だよな、レン?」
今まで俺たちの代わりに魔物たちを牽制してくれていたレンに話しかける。
レンが静かに頷いた。
「じゃあ、決定!兄さん、ヨロシク!」
俺はレンを呼んで近くに来させてから周りに風で結界を張る。1断層に高速で回転する風の結界、2断層に1断層とは逆の回転の風の結界を張る。3断層に完全な真空にして熱や振動を伝えないようにする。これで完璧だ。
「これじゃあ、外で何が起きてるのかわからないけどいいか!」
レンを方を見て話しかけるといつの間にか人の姿に戻っていて驚いた。服も全て元のままでところどころが切れたり汚れたりしていた。ただナイフだけが腰になかった。
「ナイフはどうしたの?」
「壊れた。」
なるほど、戦闘中に壊れたのか。それで獣化したのか。
「よく頑張ったな。」
褒めて頭を撫でてやると、照れたのか顔を赤くして背ける。
途中、怪我した左腕を見ると傷跡があるだけで何の異常もない。気操作のスキル強すぎじゃない?今度、軽気功を使ってみよう。
レンがこっちを見て心配そうな顔をしていた。怪我がないか心配しているらしい。元が無表情だから1週間ぐらい暇がなかったら表情が読めなかっただろう。
「大丈夫だよ。」
優しく笑ってレンを撫でる。しばらくそういう風に和んでいたら、突然結界が切り裂かれた。俺は切り裂いた相手を見て軽く笑った。
「随分時間が掛かったね。」
「うるせえ。ほとんどの時間がお前の結界を壊すのに使ったんだよ。」
少し、呆れた調子で返された言葉に首を傾げる。結界を張ってからまだ5分も経っていない。それなのに結界破るのに時間を使うって本当に一瞬で魔物たちは死んだんだね~。ご愁傷様。
「ひどい惨状だね。」
俺たちが立っているところを除けば棘で囲まれているここら辺一帯はすべて氷漬けされている。兄さんが氷を剣で叩く。ヒビが入り一気に砕けていく。
「これ、なんて魔法?」
「中級魔法の『白い息吹』ってやつを360°に使っただけだ。」
なるほど、俺の風は氷漬けにされる前に回転していたから助かったのか・・・。
「これって、証拠隠滅にならないかな?」
「無理だろうな。俺たちがやったことだってばれちまうだろう。」
兄さんの言葉にため息をつきながら棘を全部消してから町に戻っていった。
はい、王国に責められるか入るかわかりませーん