序章 私
私の生きる国では『女性』という性別が無い。
女性と言う名詞があったということは、昔には女性という性別があったということだ。
それがどれほど昔なのかは分からないが、歴史はある。
昔、我が国に他の国が攻めてきたことがある、戦争だ。
その国は領土を求めて海を渡り我が国まで来た。
聞いた話によればその国に住む人種は理性というのがあまりなく、自分の欲望に常に忠実で道徳と言うものが存在しないらしい。
そんな奴らに攻められた我が国は抵抗はしたものの圧倒的戦力の差で滅んでしまった。
だから我が国は、言い換えれば私にとっては奴らの国なのだ。
人の三大欲求は「食欲」「睡眠」「排泄」である。
しかし人間には「性欲」という欲もある。
本来なら子孫を残すために行う行為であるが、この行為には快感を伴う。
なぜ快感を伴うのか私にはわからない。
奴らは理性が働かない。
お腹が空いたらご飯を食べる。眠くなったら寝る。トイレに行きたい時はトイレに行く。
そして、女を犯したい時は女を犯す。
スーパーで食材が売っているように。
トイレという施設があるように。
また、女と言う性欲処理専用のモノがある。
それが、私だ。
そう教えてくれたのは店長だった。
店長は奴らの人種ではない。
しかし、この商売は儲かるため、元我が国の人間でもこういった店を開く人がいる。
店長もまた理性があまり働かない人だ。
幸い、私は商品であるためこの店長に犯されることはない。
商品を汚してしまったら、質が落ち値段が下がり儲けにならないからだ。
この店には私を含めた5人がいる。
見た目や性器の具合から値段はピンキリだが、10万以上のモノならまぁまぁと言ったところだ。
ちなみに私は13万。
他の人達は、8万とか20万とかがいる。
1人だけショーウィンドウに入っている人だけは100万の値札が付いている。
一体彼女と私との間に何の差があるのだとよく思う。
女は常に性欲処理の道具に過ぎない。
道具はしっかりと役目をこなさなければいけない。
だから私は逃げられないように四肢が無い。
いつ無くなったかは分からない。
気がついた時にはすでに無かった。
でもこれが悲しいだなんて思ってはいない。
昔っから周りの皆も同じ状況、同じ身体。
私の世界はこうだから、せめてもの願いは早く買われて役目をこなすことだ。
今日また、他の子が買われていった。
悲しいそうでも、嬉しそうでもなかったけど、私は良いなと思った。