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「無能な記録係」と捨てられましたが、私の綴る一字は世界の理。冷徹な第二王子に「君の全てを独占させろ」と溺愛され、私を捨てた国は歴史から抹消されました  作者: 星詠みミラ


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第17話:王宮崩壊、そして真実の戴冠

王都は、音を立てて「現実」を失いつつあった。


 かつて栄華を極めた城壁は、触れれば砂となって崩れ落ち。

 広場の噴水からは水ではなく、ドロリとした「黒いインク」が溢れ出している。


 簒奪者である王家が、その正当性を失った結果——。

 世界が、この都を「存在してはならない場所」だと認識し始めたのだ。


「ひ、ひぃっ! 助けてくれ! 誰か、王様はどこだ!」


「王様なら、さっき玉座の上で砂になって消えちまったよ!」


 逃げ惑う民衆。阿鼻叫喚のちまた

 その混乱を切り裂くように、地平線から銀の光が差し込んだ。


 空を駆けるのは、古代の翼を広げた魔導飛行艇。

 その船首には、黒い軍服を翻すジークヴァルト様と、銀のドレスに身を包んだ私が立っていた。


「……酷い有様だな。嘘の上に築いた砂の城の、これが末路か」


 ジークヴァルト様が、私の腰を片腕で引き寄せ、冷ややかに都を見下ろす。


「エルセ。君が望むなら、このまま都ごと消し去ってもいい。

 だが……この民たちは、ただ騙されていただけの羊だ。君の筆で、救ってやる価値はあるか?」


 私は、足元に広がる絶望の光景を見つめた。

 かつての私なら、恐怖に震えて逃げ出しただろう。

 けれど、今は違う。


「……救います。この国は、ジークヴァルト様が愛そうとした場所ですから」


 私は、愛用の銀のペンを天高く掲げた。

 覚醒した私の魔力が、白銀の雷鳴となって天を貫く。


『三月二十五日。王都ローゼルは、真実の支配者を迎えた』


 私は空中に、流れるような筆致で文字を刻んでいく。


『偽りの崩壊は止まり、街は真実の形を取り戻す。

 ——ここにあるべきは、偽物の王ではなく、民を守る強い意志だ』


 パァンッ!! という清らかな音と共に、銀の光が雨のように王都へ降り注いだ。

 砂になっていた城壁が元の輝きを取り戻し、黒いインクは清らかな水へと浄化されていく。


 民衆が、呆然と空を見上げた。

 そこに映るのは、神々しいまでの光を纏った私と、それを愛おしそうに、そして誇らしげに抱きかかえるジークヴァルト様の姿。


「「……お、おおお……女神様だ……! 真の王妃様が、降臨されたぞ!」」


 地を揺らすような、圧倒的な歓声。

 それは、ジュリアンがどれだけ求めても得られなかった、心からの忠誠だった。


 ***


 一方、王宮の最下層。

 誰にも気づかれないまま、暗い牢獄に閉じ込められていたジュリアンとメリーナ。


「お、おい! 外が騒がしいぞ! きっと私を助けに来たんだ!」


 ジュリアンが、ボロボロの爪で鉄格子を掻きむしる。

 しかし、牢の前に現れたのは、かつて彼が「ゴミ」だと切り捨てた……私の記憶を司るラピス様だった。


「……無駄ですよ、第一王子(仮)。エルセ様が記録を更新した瞬間、貴方の存在は『この国の歴史』から完全に抹消されました」


「な、何を言っている! 私は第一王子のジュリアンだ!」


「いいえ。貴方はただの、名前も持たない罪人。

 ……見てください。貴方の指先から、文字が消えていくのを」


 ジュリアンが自分の手を見ると、皮膚に刻まれていたはずの「王家の証」が、文字通り消滅していた。

 彼がどれだけ叫ぼうと、世界はもう、彼を「ジュリアン」だとは認識しない。


「ひ……ひぎゃああああっ!! 私はここにいる! 私は……私は誰だ!? 私は誰なんだぁぁぁ!!」


 アイデンティティすらも奪われる、究極の「ざまぁ」。

 メリーナもまた、己の顔が「名もなき平民」へと書き換わっていく鏡を見て、発狂し、泡を吹いて倒れた。


 ***


 王宮のバルコニー。

 ジークヴァルト様が、跪く数万の民を前に、私を抱き寄せた。


「皆に告ぐ。今日、この時をもって、偽りの王制は幕を閉じた。

 これより、この世界を綴る女神エルセと共に、私は新たな帝国を……真実の楽園を築くことを誓う!」


 熱狂的な拍手。

 私は、ジークヴァルト様の胸の中で、確かな幸せを感じていた。

 ……けれど。


「――ほう。感動的なシーンだな。だが、その『物語』。私が黒く塗り潰してやろうか?」


 不意に、王都の空が、ねっとりとした「黒い影」に覆われた。


 現れたのは、ヴォルガ帝国の皇帝、ヴォルガ・ディストピア。

 その手には、エルセの銀のペンとは対照的な——すべてを虚無に帰す「漆黒の万年筆」が握られていた。


「エルセ。世界を創り替えるのがお前の役目なら……すべてを消し去るのが私の役目だ」


 最強の敵、皇帝。

 彼が持つのは、エルセの力を無効化する「虚無の権能」。

 第2章、真のクライマックスが幕を開けようとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


王都への凱旋、そしてジュリアンの「存在抹消」という究極のざまぁ!

「自分さえ誰だか分からなくなる絶望感、最高ですわ!」

と思っていただけたら、ぜひ評価【☆☆☆☆☆】やブックマークをお願いいたします!


皆様の星の数が、皇帝の「黒いインク」を押し返すエルセの魔力になります。


次回、第18話は「虚無を刻む漆黒の万年筆」。

エルセの「記録」が、初めて皇帝の「抹消」に阻まれる!?

ジークヴァルト様は、愛するエルセをこの絶体絶命の危機からどう守るのか。

超長編ならではの、手に汗握る死闘にご期待ください!

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