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「無能な記録係」と捨てられましたが、私の綴る一字は世界の理。冷徹な第二王子に「君の全てを独占させろ」と溺愛され、私を捨てた国は歴史から抹消されました  作者: 星詠みミラ


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第1話:『お前の記録など、ゴミ同然だ』

数ある作品の中から、本作を見つけていただきありがとうございます!


「無能だと捨てられた少女が、実は世界の全てを握っていた」

そんなカタルシスと、ちょっと重すぎる愛を詰め込んだ物語です。


もし「面白い!」「ざまぁに期待!」と思っていただけたら、

ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援いただけると、執筆の大きな力になります!


それでは、エルセとジークヴァルトの物語、開幕です。

きらびやかなシャンデリアの光が、今の私には刺すように痛い。


 王立アカデミーの卒業記念パーティー。

 華やかな音楽が流れるその中心で、私の婚約者である第一王子・ジュリアン様は、冷酷な声を響かせた。


「エルセ・フォン・アルメット! 貴様との婚約を、今この場をもって破棄する!」


 ……ああ、やっぱり。


 私の指先は、無意識に愛用の古い手帳をなぞっていた。

 銀の髪が震える。灰色の瞳に映るのは、勝ち誇った顔の婚約者と、その隣で可憐に微笑む一人の令嬢。


「ジュリアン様……それは、私が何か不手際をいたしましたか?」


 震える声を絞り出す。

 本当は、理由はわかっている。

 彼の隣にいるのは、男爵令嬢メリーナ。

 最近、この国に現れた『光の魔法』を操るという、自称・聖女だ。


「しらじらしい! 貴様のその『万象記す(アーカイバー)』という無能なスキルには、もう反吐が出るのだ!」


 ジュリアン様は、私の手帳を忌々しげに指差した。


「見たものをただ記録するだけの能力。そんなものは、そこらの書記官でもできる!

 第一王子の妃ともあろう者が、パーティーの最中も、執務の間も、隅っこでこそこそとメモを取るばかり……。

 美しくもなく、華もない。お前はただの、血の通わない『記録機械』だ!」


 会場から、くすくすと嘲笑が漏れる。


「それに引きかえ、メリーナは違う。彼女の光は人々を癒やし、国を照らす。

 彼女こそが真の聖女であり、私の隣にふさわしい。

 貴様のような薄暗い女、我が王宮には必要ないのだ!」


 メリーナ様が、上目遣いで私を見た。

 その瞳に、隠しきれない優越感が揺らめく。


「ごめんなさいね、エルセ様。私の光が……あまりに眩しすぎたのかしら?」


 その言葉に、また周囲が沸く。

「無能令嬢」「記録オタク」「第一王子の汚点」。

 そんな蔑称が、雨あられのように私に降り注ぐ。


 ……けれど。

 彼らは知らないのだ。


 私の『万象記す(アーカイバー)』が、単なる記憶術ではないことを。

 この国を支える巨大な魔法陣の維持、王宮の収支管理、貴族たちの不祥事の監視……。

 そのすべてが、私の「記録」という名の「事象固定」によって成り立っていたことを。


「……そうですか。私の記録は、もう必要ないのですね」


「ああ、ゴミ同然だ! その手帳と一緒に、今すぐ消え失せろ!」


 ジュリアン様が、衛兵に合図を送る。

 私は身一つで、夜の闇へと押し出された。


 外は、激しい土砂降りだった。

 卒業パーティーのために新調した、なけなしのドレスが泥に汚れる。

 王都の路地裏で、私は膝をついた。


「寒い……っ」


 家にも帰れない。

 実家のアルメット公爵家は、第一王子を盲信している。

 婚約破棄された私など、即座に勘当されるだろう。


 手帳だけを、胸に抱きしめる。

 この手帳には、私がこれまで守ってきた国のすべてが記されている。

 私がこれを閉じれば……この国は、明日をも知れぬ混乱に陥るというのに。


(……もう、いいかな)


 あんなに尽くしたのに。

 ゴミだと、機械だと言われて。

 私の心は、冷たい雨に打たれて砕け散ってしまった。


 視界が、暗くなる。

 意識が遠のいていく中、重厚な馬車の音が近づいてきた。


 闇の中から、一人の男が降りてくる。

 黒い軍服。氷のように冷たいのに、どこか熱を帯びた金の瞳。


 ……第二王子、ジークヴァルト様。

 王位継承権を自ら捨て、北の国境を守る「氷の獅子」。


「……見つけたぞ」


 その低い声が、私の耳を震わせた。


 彼は泥にまみれた私を、まるで高価な宝石でも扱うかのように、迷わず抱き上げた。

 高価な外套が、私の冷え切った体を包み込む。


「ジュリアンは、本当に救いようのない愚か者だな。

 ……これほどの『世界の至宝』を、雨の中に捨てるなど」


「ジーク……ヴァルト、様……?」


「もういい、エルセ。何も書かなくていい。

 これからは、私が君を守る。君を捨てた者たちが、絶望の中で君の名前を呼ぶまで……私は君を、誰にも渡さない」


 ジークヴァルト様の腕は、驚くほど温かかった。

 私はその温もりに身を任せ、意識を失った。


 手帳の最後のページに、雨粒が一滴落ちた。

 そこに記された「第一王子の加護」という文字が、じわりと滲んで、消えていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「エルセ、そんな奴ら放っておいて幸せになっちゃえ!」

「ジークヴァルト様、もっと執着して!」

と少しでも思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から応援をいただけると執筆の励みになります。


ブックマークもぜひ、よろしくお願いいたします。

あなたの「しおり」が、エルセを救う光になります。


次回の更新は、ジークヴァルト様の「甘すぎる檻」での生活編です。

当面の間は1日3話を投稿予定です。お楽しみに!

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