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悪役令嬢に転生したので魔王次男を攻略します  作者: Reine


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ダンジョンの赤毛玉と水晶の番人

魔界の永夜は墨を染み込ませた絨毯のようで、深紅の月がそっと淡い円斑を刻んでいた。クローディアが五歳になったその夜、草縄でぐちゃぐちゃの赤い髪をまとめ上げ、盗んだ片方の靴跟が欠けた長靴をはいて、猫のように身をかがめてクローディア家の城を抜け出した。


胸にはまだ余温の残る魔力パンを抱えていた。炊事のメイドが居眠りしている隙に手に入れたものだ。もう一方の手には刃のように尖った金属札を握っていて、表面に「深淵」と刻まれている——三日間前、護衛の酒樽の下から拾ったものだ。酔っ払った護衛が囁いていたのを聞いていた。これでダンジョンの「裏口」が開けるらしいが、入ったら帰ってこれるかどうかは全て運次第だと。


「まさにこれが欲しかった」と彼女はパンを一口かじる。麦の香りに少し焦げた味が混ざって舌の上に広がる。この三月間、城の訓練場をめちゃくちゃに荒らし尽くした。七階の雷暴術で鉄甲の人形を廃墟にするほどの実力があり、祖父が遣わしてきた教習役は彼女の衣角にも触れられない。だがゲームの中で、自分は十八歳になるとヒロインを好む兄に魔物の巣穴に投げ込まれる運命だ。それまでには、魔王の玉座をもひっくり返せるほど強くならなければ。


ダンジョンの「裏口」は城壁の隙間に隠れていた。隙間には刺すと痛い赤い蔦が這いつくばっている。クローディアが金属札を押し当てると、蔦は「シュッ」と縮まり、その後ろからは黒々とした人を飲み込むような穴が現れる。風がそこから吹き出して、鉄錆と腐肉の臭いが混ざってくる。


彼女は袖から魔法杖を取り出す。それは庭で雷に打たれた枝を削って作ったもので、先端に拾ってきた赤いガラス玉を嵌めてある。まるで薪割りの棒に見える。だが彼女だけが知っている。この薪割りの棒で三秒以内に半身の高さの雷柱を召喚できるという事実を。


「一層はゴブリン、二層は溶岩虫……何匹来ても皆打ち砕いてやる」と最後の一口を口に詰め込み、手の屑を払う。まるで逃げ出した小獣のように、彼女は暗闇の中へと飛び込んでいく。


その後四ヶ月、クローディアはダンジョンの「赤毛の小狂人」と呼ばれるようになり、毎日ダンジョンの中に浸っていた。


彼女はゴブリンの焚き火のそばで仮眠をする術を覚えた。彼らが見物に集まってくる頃に雷暴術を放てば、三日分の食料が節約できる。溶岩虫の硬い殻が雷系魔法に弱いことも発見した。もちろん、噴き出す溶岩を避けられることが前提だが。さらには石巨人の巡回ルートまでも把握して、その背を向ける瞬間に魔法の浮き板で飛び越え、関節の隙間に小さな爆破魔法を詰め込んで音を聞くのが楽しみだった。


毎日の訓練で服は早々にぼろ布になり、赤い髪は煤で褐赤色に染まっていた。ただその黒い瞳だけは驚くほど明るく、まるで二つの小火種を秘めているかのようだ。収納袋の中の魔力結晶は山のように積まれている。白色の低級結晶は魔物に投げつけるビー玉の代わりに使い、青色の高級結晶は粉に砕いて泉水に混ぜて飲む。「エネルギー補給だ」と彼女は言っていた。訓練の後は、まだ夜が明けないうちにこっそり家に戻り、何事もなかったかのようなフリをして淑やかな礼儀を習う。どうせゲームの中の悪役令嬢はとても淑やかだから。


その朝、彼女は九層のボスである三頭の地獄犬の頭を切り裂いた。ドロップアイテムの「暗影のマント」は姿を隠すことができる。マントを羽織った瞬間、どこからともなく湧いた直感に従って、ゲームの地図にもない通路へと曲がっていった。


通路の先は円形の石室だった。魔物は何もいない。ただ中央に洗面器ほどの大きさの黒い水晶が浮かんでいて、表面には銀色のルーン文字が流れている。まるで群れの小蛇が逃げ回っているようだ。石室の壁は生き物のようで、ルーン文字がゆっくりと這っている。無数の文字が記録されている。【ゴブリン撃破数:137】【溶岩虫の甲羅:29枚】【魔力ピーク:8.7階】……一番下の行は赤色に光っている。【警告:未登録生命体を発見。魔力増加率異常。疑似……】


クローディアの心臓が一拍止まった。これはダンジョンの核心データベースだ!ゲームの中では、魔王の側近だけがここを看守できるとされている。そしてカレン……十五歳までは、確かにこんな誰も手をつけたがらない仕事をしていたはずだ。


彼女は急いでマントを締めて姿を消し、目を水晶のそばに勢いよく向けた。


そこには少年が坐っていた。


彼女より少し年上のようだ。ぼろぼろのマントを着て、帽子は肩に滑り落ちている。銀灰色の短い髪が見える。まるで薄雪が積もっているかのようだ。彼は背を向けて、指を黒い水晶にそっと触れている。その触れる瞬間、赤色の警告文字は水で薄められたように、ゆっくりと柔らかい銀色に変わっていく。


銀の髪!


クローディアの呼吸が一瞬止まり、魔法杖を握る手が微かに震えた。是れ、必ずカレンだ!それも六歳の小さなカレンだ!


少年は誰かが入ってきたことに気づいていない。全ての注意力を水晶に集中している。細い指を伸ばして、水晶の中から一筋の銀色の光を摘み取る。その光は彼の指先でひねり回されているが、彼は辛抱強く指腹で撫でて、少しずつ小鳥の形に捏ね上げていく。


銀色の光の鳥は彼の手のひらで二回羽ばたき、細い「チュンチュン」という声を上げてから、光の粒になって散っていった。


彼は光の粒が消える場所を見つめ、紅い瞳の中に淡い失望が掠れる。また手を伸ばして水晶の中から光を摘み取る。今度はゆっくりと捏ねていく。指先が微かに震えている。まるで何か重大な仕事をしているかのようだ。


クローディアは石柱の後ろに隠れて、大きな呼吸もできない。彼のマントの襟が破れているのが見える。鎖骨が尖って浮き出ている。どうやら長い間満腹になっていないようだ。手首は小枝のように細く、手の甲には茶色の傷跡がある。火傷のようだ。


彼はどうやらあまり幸せに暮らしていないようだ。


その時、少年が光を捏ねている指が急に止まった。紅い瞳がキュッと回ってくる。


クローディアの心臓が一瞬喉まで上がってきた。ほとんど本能的に魔力を動かす——攻撃ではない。形を変えるのだ。


彼女の赤い髪は「シュッ」として毛糸のような赤に変わり、身についていたぼろ布は赤い毛に溶け込んでいく。体さえも手のひらほどの玉に縮んでいく。ただ黒い瞳だけが毛の中に隠れている。まるで土の中から這い出てきたばかりの赤毛玉の魔物のようだ——これはダンジョンで最も常見する低級魔物だ。攻撃力はなく、ただ転がり回ることしかできない。


少年の視線が彼女の上に落ちる。紅い瞳の中に少しの困惑が浮かぶ。彼はこの赤毛玉を数秒間見つめている。どうしてこんな小さな魔物がこんな場所に侵入できたのか不思議がっているようだ。だが手を出すことはない。ただ振り返ってまた光を捏ね始める。


クローディアはほっとするが、油断はできない。彼女は慎重に、赤毛玉特有の動き方——ゴツゴツと体を動かしながら、少しずつ彼のそばへと移動していく。


近づけば近づくほど、はっきりと姿が見える。肌はとても白く、唇はきつく閉じている。どうやらあまり話すのが嫌いらしい。光を捏ねている時、睫毛が垂れ下がって眼下に薄い陰を作っている。まるでこの年齢には合わない静けさを湛えているかのようだ。


彼はまた一羽の光の鳥を捏ね上げた。今度は鳥の口に光の葉っぱをくわえさせている。彼は光の鳥を見つめて、唇が極めて微かに上がっている。まるで氷の面に細い裂け目が入ったかのようだ。


クローディアの心が急にどっと柔らかくなった。ゲームの中では彼は孤独で冷淡だと書かれているが、誰が想像できるだろう。彼がこんな場所で冷たい石の塊に向かって、一羽また一羽と真剣に光の小鳥を捏ね上げているなんて。


彼女が見とれている時、少年が急に動作を止めてまた振り返ってきた。今度は視線の中に少しの探究心が含まれて、まっすぐ赤毛玉の方を向いている。


しまった!発見されたのか?


クローディアは急いで玉のように体を縮め、驚いたフリをしてその場で二回転がり回った。赤い毛がそれに伴ってゆすれている。


少年は彼女が転がり回るのを見て、紅い瞳の中の探究心がゆっくりと薄れていく。彼は手を伸ばし、指先を彼女の頭の上から数センチのところにかざしている。しばらくそのまま止まっていた後、やっとそっと彼女の赤い毛に触れた。


彼の指先はとても冷たい。水晶の冷気を帯びているが、羽のように軽く、少しの悪意も感じられない。


クローディアはその場で固まった。まるで毛が逆立つような感覚がした。彼の指先から伝わる魔力がはっきりと感じられる。淡いが、とても清らか。まるで渓谷の水のようだ。


少年の指先は彼女の毛の上に二秒間停まってから、引っ込められた。彼は立ち上がって、どうやら行こうとしているようだ。行く前に黒い水晶を見て、また地面に縮まっている赤毛玉を見た。突然マントのポケットから何かを取り出して、そっと彼女の前に置いた。


それは親指の大きさの青色の魔力結晶だ。幽玄な青い炎の光の下で優しい輝きを放っている——これは中級魔法使いでさえも争って欲しがる宝物だ。


彼は結晶を置いて、何も言わずに通路に沿って歩いていった。足音はとても軽く、マントの裾が地面を掃いて「シャシャ」と音を立てる。すぐに姿が消えていった。


クローディアは三十分も待って、彼が本当に行ってしまったことを確かめてから、やっと形を元に戻した。彼女は少女の姿に戻って、しゃがんで青色の魔力結晶を拾い上げた。指先に冷たい触感が伝わり、結晶の中の魔力は優しくて豊かだ。


これは……自分にくれたのか?


彼女は結晶を握っている時、突然第一章 ダンジョンの赤毛玉と水晶の番人


魔界の永夜は墨を染み込ませた絨毯のようで、深紅の月がそっと淡い円斑を刻んでいた。クローディアが五歳になったその夜、草縄でぐちゃぐちゃの赤い髪をまとめ上げ、盗んだ片方の靴跟が欠けた長靴をはいて、猫のように身をかがめてクローディア家の城を抜け出した。


胸にはまだ余温の残る魔力パンを抱えていた。炊事のメイドが居眠りしている隙に手に入れたものだ。もう一方の手には刃のように尖った金属札を握っていて、表面に「深淵」と刻まれている——三日間前、護衛の酒樽の下から拾ったものだ。酔っ払った護衛が囁いていたのを聞いていた。これでダンジョンの「裏口」が開けるらしいが、入ったら帰ってこれるかどうかは全て運次第だと。


「まさにこれが欲しかった」と彼女はパンを一口かじる。麦の香りに少し焦げた味が混ざって舌の上に広がる。この三月間、城の訓練場をめちゃくちゃに荒らし尽くした。七階の雷暴術で鉄甲の人形を廃墟にするほどの実力があり、祖父が遣わしてきた教習役は彼女の衣角にも触れられない。だがゲームの中で、自分は十八歳になるとヒロインを好む兄に魔物の巣穴に投げ込まれる運命だ。それまでには、魔王の玉座をもひっくり返せるほど強くならなければ。


ダンジョンの「裏口」は城壁の隙間に隠れていた。隙間には刺すと痛い赤い蔦が這いつくばっている。クローディアが金属札を押し当てると、蔦は「シュッ」と縮まり、その後ろからは黒々とした人を飲み込むような穴が現れる。風がそこから吹き出して、鉄錆と腐肉の臭いが混ざってくる。


彼女は袖から魔法杖を取り出す。それは庭で雷に打たれた枝を削って作ったもので、先端に拾ってきた赤いガラス玉を嵌めてある。まるで薪割りの棒に見える。だが彼女だけが知っている。この薪割りの棒で三秒以内に半身の高さの雷柱を召喚できるという事実を。


「一層はゴブリン、二層は溶岩虫……何匹来ても皆打ち砕いてやる」と最後の一口を口に詰め込み、手の屑を払う。まるで逃げ出した小獣のように、彼女は暗闇の中へと飛び込んでいく。


その後四ヶ月、クローディアはダンジョンの「赤毛の小狂人」と呼ばれるようになり、毎日ダンジョンの中に浸っていた。


彼女はゴブリンの焚き火のそばで仮眠をする術を覚えた。彼らが見物に集まってくる頃に雷暴術を放てば、三日分の食料が節約できる。溶岩虫の硬い殻が雷系魔法に弱いことも発見した。もちろん、噴き出す溶岩を避けられることが前提だが。さらには石巨人の巡回ルートまでも把握して、その背を向ける瞬間に魔法の浮き板で飛び越え、関節の隙間に小さな爆破魔法を詰め込んで音を聞くのが楽しみだった。


毎日の訓練で服は早々にぼろ布になり、赤い髪は煤で褐赤色に染まっていた。ただその黒い瞳だけは驚くほど明るく、まるで二つの小火種を秘めているかのようだ。収納袋の中の魔力結晶は山のように積まれている。白色の低級結晶は魔物に投げつけるビー玉の代わりに使い、青色の高級結晶は粉に砕いて泉水に混ぜて飲む。「エネルギー補給だ」と彼女は言っていた。訓練の後は、まだ夜が明けないうちにこっそり家に戻り、何事もなかったかのようなフリをして淑やかな礼儀を習う。どうせゲームの中の悪役令嬢はとても淑やかだから。


その朝、彼女は九層のボスである三頭の地獄犬の頭を切り裂いた。ドロップアイテムの「暗影のマント」は姿を隠すことができる。マントを羽織った瞬間、どこからともなく湧いた直感に従って、ゲームの地図にもない通路へと曲がっていった。


通路の先は円形の石室だった。魔物は何もいない。ただ中央に洗面器ほどの大きさの黒い水晶が浮かんでいて、表面には銀色のルーン文字が流れている。まるで群れの小蛇が逃げ回っているようだ。石室の壁は生き物のようで、ルーン文字がゆっくりと這っている。無数の文字が記録されている。【ゴブリン撃破数:137】【溶岩虫の甲羅:29枚】【魔力ピーク:8.7階】……一番下の行は赤色に光っている。【警告:未登録生命体を発見。魔力増加率異常。疑似……】


クローディアの心臓が一拍止まった。これはダンジョンの核心データベースだ!ゲームの中では、魔王の側近だけがここを看守できるとされている。そしてカレン……十五歳までは、確かにこんな誰も手をつけたがらない仕事をしていたはずだ。


彼女は急いでマントを締めて姿を消し、目を水晶のそばに勢いよく向けた。


そこには少年が坐っていた。


彼女より少し年上のようだ。ぼろぼろのマントを着て、帽子は肩に滑り落ちている。銀灰色の短い髪が見える。まるで薄雪が積もっているかのようだ。彼は背を向けて、指を黒い水晶にそっと触れている。その触れる瞬間、赤色の警告文字は水で薄められたように、ゆっくりと柔らかい銀色に変わっていく。


銀の髪!


クローディアの呼吸が一瞬止まり、魔法杖を握る手が微かに震えた。是れ、必ずカレンだ!それも六歳の小さなカレンだ!


少年は誰かが入ってきたことに気づいていない。全ての注意力を水晶に集中している。細い指を伸ばして、水晶の中から一筋の銀色の光を摘み取る。その光は彼の指先でひねり回されているが、彼は辛抱強く指腹で撫でて、少しずつ小鳥の形に捏ね上げていく。


銀色の光の鳥は彼の手のひらで二回羽ばたき、細い「チュンチュン」という声を上げてから、光の粒になって散っていった。


彼は光の粒が消える場所を見つめ、紅い瞳の中に淡い失望が掠れる。また手を伸ばして水晶の中から光を摘み取る。今度はゆっくりと捏ねていく。指先が微かに震えている。まるで何か重大な仕事をしているかのようだ。


クローディアは石柱の後ろに隠れて、大きな呼吸もできない。彼のマントの襟が破れているのが見える。鎖骨が尖って浮き出ている。どうやら長い間満腹になっていないようだ。手首は小枝のように細く、手の甲には茶色の傷跡がある。火傷のようだ。


彼はどうやらあまり幸せに暮らしていないようだ。


その時、少年が光を捏ねている指が急に止まった。紅い瞳がキュッと回ってくる。


クローディアの心臓が一瞬喉まで上がってきた。ほとんど本能的に魔力を動かす——攻撃ではない。形を変えるのだ。


彼女の赤い髪は「シュッ」として毛糸のような赤に変わり、身についていたぼろ布は赤い毛に溶け込んでいく。体さえも手のひらほどの玉に縮んでいく。ただ黒い瞳だけが毛の中に隠れている。まるで土の中から這い出てきたばかりの赤毛玉の魔物のようだ——これはダンジョンで最も常見する低級魔物だ。攻撃力はなく、ただ転がり回ることしかできない。


少年の視線が彼女の上に落ちる。紅い瞳の中に少しの困惑が浮かぶ。彼はこの赤毛玉を数秒間見つめている。どうしてこんな小さな魔物がこんな場所に侵入できたのか不思議がっているようだ。だが手を出すことはない。ただ振り返ってまた光を捏ね始める。


クローディアはほっとするが、油断はできない。彼女は慎重に、赤毛玉特有の動き方——ゴツゴツと体を動かしながら、少しずつ彼のそばへと移動していく。


近づけば近づくほど、はっきりと姿が見える。肌はとても白く、唇はきつく閉じている。どうやらあまり話すのが嫌いらしい。光を捏ねている時、睫毛が垂れ下がって眼下に薄い陰を作っている。まるでこの年齢には合わない静けさを湛えているかのようだ。


彼はまた一羽の光の鳥を捏ね上げた。今度は鳥の口に光の葉っぱをくわえさせている。彼は光の鳥を見つめて、唇が極めて微かに上がっている。まるで氷の面に細い裂け目が入ったかのようだ。


クローディアの心が急にどっと柔らかくなった。ゲームの中では彼は孤独で冷淡だと書かれているが、誰が想像できるだろう。彼がこんな場所で冷たい石の塊に向かって、一羽また一羽と真剣に光の小鳥を捏ね上げているなんて。


彼女が見とれている時、少年が急に動作を止めてまた振り返ってきた。今度は視線の中に少しの探究心が含まれて、まっすぐ赤毛玉の方を向いている。


しまった!発見されたのか?


クローディアは急いで玉のように体を縮め、驚いたフリをしてその場で二回転がり回った。赤い毛がそれに伴ってゆすれている。


少年は彼女が転がり回るのを見て、紅い瞳の中の探究心がゆっくりと薄れていく。彼は手を伸ばし、指先を彼女の頭の上から数センチのところにかざしている。しばらくそのまま止まっていた後、やっとそっと彼女の赤い毛に触れた。


彼の指先はとても冷たい。水晶の冷気を帯びているが、羽のように軽く、少しの悪意も感じられない。


クローディアはその場で固まった。まるで毛が逆立つような感覚がした。彼の指先から伝わる魔力がはっきりと感じられる。淡いが、とても清らか。まるで渓谷の水のようだ。


少年の指先は彼女の毛の上に二秒間停まってから、引っ込められた。彼は立ち上がって、どうやら行こうとしているようだ。行く前に黒い水晶を見て、また地面に縮まっている赤毛玉を見た。突然マントのポケットから何かを取り出して、そっと彼女の前に置いた。


それは親指の大きさの青色の魔力結晶だ。幽玄な青い炎の光の下で優しい輝きを放っている——これは中級魔法使いでさえも争って欲しがる宝物だ。


彼は結晶を置いて、何も言わずに通路に沿って歩いていった。足音はとても軽く、マントの裾が地面を掃いて「シャシャ」と音を立てる。すぐに姿が消えていった。


クローディアは三十分も待って、彼が本当に行ってしまったことを確かめてから、やっと形を元に戻した。彼女は少女の姿に戻って、しゃがんで青色の魔力結晶を拾い上げた。指先に冷たい触感が伝わり、結晶の中の魔力は優しくて豊かだ。


これは……自分にくれたのか?


彼女は結晶を握っている時、突然気づいた。黒い水晶の表面に、新しいルーン文字が浮かんでいた。赤い光で輝く文字が、一行一行、ゆっくりと形をなしていく——


【登録完了:赤毛玉(仮称)。魔力レベル:0.1。特性:転がり回るのが好き。】


クローディア:「!!!」


こ、これは……自分を登録したの?


彼女は驚いて水晶に近づき、指で文字をなぞる。すると、文字が波打つように動き、さらに一行追加された。


【備考:カレンにより、特別観察対象に指定。今後、毎日の魔力変動を記録する。】


カレン……彼の名前だったのか。


クローディアは結晶を握りしめ、手のひらに熱を感じる。先ほどの少年の姿が頭に浮かぶ。薄雪のような銀髪、紅い瞳に映る光の粒、そして最後に置いていった青色の結晶……


「待ってるよ」と、彼女は小声で言った。石室の壁がその声に共鳴し、ルーン文字が一斉に明るく輝いた。


外に出ると、夜のダンジョンは更に暗くなっていた。魔物の鳴き声が遠くから聞こえるが、クローディアは怖くない。むしろ、胸の中にある高鳴りが止まらない。


彼女は青色の結晶をポケットにしまい、魔法杖を振るって光の道標を作った。「次回は、きちんと名前を言うよ」と独り言を言いながら、通路の奥へと進んでいく。


背後の黒い水晶は、まだ赤い光を放っていた。その中には、少女の背中をしっかりと記録するルーン文字が、静かに輝いていた——


【観察ログ1:対象は好奇心旺盛。転がり回る技術は上級レベル。】


【観察ログ2:青色結晶を喜んで受け取った。今後、魔力結晶を与えることで、さらなるデータ収集が可能かもしれない。】


【備考:カレンの主観的評価——赤い毛、意外と可愛い。】

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