表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁忌魔術、マニュアル化されました ―あなたの問題は、仕様外です―  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/43

第35話 増やさないでください

それは、反対意見というほど強いものではなかった。


「……ひとつだけ」


アオイは、会議の終わり際に言った。


誰も、驚かなかった。

この場で誰かが何かを言うのは、珍しくない。


「追記の話ですが」


アオイは、ゆっくり続ける。


「今後も」


言葉を選ぶ。


「検討は続けるんですよね」


「もちろんです」


カンザキは、穏やかに答えた。


「説明のために」


「現場の負担を減らすために」


「……はい」


アオイは、頷いた。


一拍、間を置いてから言う。


「増やさないでください」


空気が、止まった。


怒りはない。

責める声でもない。


ただ、

静かすぎて、誰もすぐに言葉を返せなかった。


「……何を、でしょうか」


カンザキが、慎重に聞く。


「言葉を」


アオイは答えた。


「分類を」


「説明を」


「これ以上」


「……増やさないでください」


「理由を、聞いても?」


アオイは、少し考えた。


「増えると」


言葉を探す。


「拾えない人が、増えます」


誰かが、息を吸った。


「今でも」


アオイは続ける。


「拾えていません」


「でも」


「これ以上、線を引くと」


「線の外が、広がります」


カンザキは、すぐには答えなかった。


「……それは」


少しして言う。


「現状維持、という提案ですか」


「はい」


「代案は?」


アオイは、首を振った。


「ありません」


会議室が、静かになる。


「……分かりました」


カンザキは、ゆっくり頷いた。


「今日は」


そう前置きしてから言う。


「ここまでにしましょう」


誰も、反対しなかった。


対応室に戻る。


「言ったね」


シラベが言う。


「……言った」


「勇気いるやつ」


「勇気じゃない」


アオイは、首を振る。


「これ以上、できなかった」


午後。


問い合わせが、一件来た。


このケースは、

どこに分類されますか


アオイは、画面を見つめた。


分類表を、開かない。


「……個別です」


短く答える。


確定。


処理完了。


「ねえ」


シラベが、ぽつりと言う。


「今日のアオイ」


「うん」


「止めたよね」


「……止めた」


「進めなかった」


アオイは、少し考えた。


「進めると」


言葉を選ぶ。


「壊れると思った」


夜。


個人メモを開く。


・追記を止めた

・代案は出していない

・でも、線は引かなかった


最後に、一行。


・増やさないことも、仕事になる


端末を閉じる。


外は、変わらず静かだった。


正しく運用された世界。


その中で、

何も足さないという選択が、

ひとつ残った。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ