第31話 同じ種類の案件
一覧を見た瞬間、
アオイは理由もなく目を細めた。
「……増えてる?」
シラベが、隣から言う。
「数は、そんなでもない」
件数は、二十三。
昨日より三つ多いだけだ。
「でも」
シラベは、画面を指でなぞる。
「並び方が同じ」
アオイは、一覧をもう一度見た。
影響軽微
再現性なし
仕様外
対応不要
それぞれ、微妙に文言は違う。
だが――
「……読む前から」
アオイは、ぽつりと言った。
「結論が分かる」
午前中。
一件ずつ、確認する。
魔術使用後、
大きな問題は起きていないが、
以前の自分と連続していない感覚がある
「……これ」
アオイは、画面を止める。
「前にもあった」
シラベが即答する。
「似てる?」
「違う」
シラベは首を振る。
「同じ」
「……同じ」
別の案件。
周囲との会話に齟齬が生じる
ただし、日常生活は維持できている
「これも」
「同じ」
「理由は?」
アオイが聞く。
シラベは、少し考えた。
「……分からない」
「でも?」
「分かる」
二人とも、しばらく黙った。
「ねえ」
シラベが言う。
「これ、分類できる」
「……分類?」
「仕様外、じゃなくて」
少しだけ声を落とす。
「同じ種類の“仕様外”」
アオイは、息を吸った。
午後。
クロガネに呼ばれた。
「上からだ」
クロガネは、端末を示す。
仕様外案件について
傾向の共有を求めます
「……傾向」
アオイは、言葉を繰り返した。
「対策じゃない」
クロガネが言う。
「説明用だ」
「説明……」
「困ってるわけじゃない」
クロガネは続ける。
「ただ、分からないのが嫌なんだ」
対応室に戻る。
「傾向、だって」
アオイが言う。
「きたね」
シラベは、少しだけ笑った。
「どう書く?」
アオイは、一覧を開く。
指が、止まる。
「……書けない」
「でも」
シラベは、画面を指す。
「分けられる」
「……分ける?」
「これ」
シラベは言う。
「“生活は続くけど、前と同じじゃない”」
「……」
「名前、つける?」
アオイは、首を振った。
「まだ」
「じゃあ」
シラベは、少しだけ真面目な顔になる。
「数だけ出そう」
夕方。
簡単な共有資料が出来上がった。
仕様外案件:増加傾向
内容:生活継続可/主観的変化あり
共通点:説明困難
それ以上は、書けなかった。
クロガネが、資料を見て言った。
「……これでいい」
「いいんですか」
「いい」
クロガネは、即答した。
「分からない、って分かった」
夜。
個人メモを開く。
・同じ種類の案件がある
・理由は説明できない
・でも、区別はできる
最後に、一行だけ書く。
・これは判断ではない
・整理だ
端末を閉じる。
外は、変わらず静かだった。
正しく運用された世界。
その中で、
同じ種類の“何か”が、
確実に増えている。
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