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禁忌魔術、マニュアル化されました ―あなたの問題は、仕様外です―  作者: 青谷 静


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第30話 それでも、残ります

朝の一覧は、少しだけ長くなっていた。


「……増えてる」


アオイは、端末を見て言った。


数は、たいしたことがない。


十件もない。

多くて、二十件。


「でもさ」


シラベが言う。


「前は、こんなに並ばなかった」


「……うん」


一覧の項目は、すべて同じだ。


仕様外


対応不要


問題なし


「全部、終わってるんだよね」


シラベが言う。


「処理は、終わってる」


アオイは、訂正した。


「でも」


シラベは、画面を指す。


「消えてない」


アオイは、黙って頷いた。


午前中。


一件ずつ、確認する。


内容は、似ている。


前と同じ生活ができない


何かが欠けた気がする


理由は説明できない


「……同じ言葉が増えた」


アオイは、呟く。


「増えたんじゃないよ」


シラベが言う。


「残った」


「……残った」


処理画面を見る。


完了。


完了。


完了。


「終わってるはずなのに」


アオイは、端末を閉じた。


「一覧から、消えない」


「消す理由が無いから」


昼休み。


クロガネが、珍しく端末を見ていた。


「……これ」


クロガネが言う。


「“仕様外案件一覧”」


「はい」


「前は、こんな項目なかった」


「……作ったんですか」


「上がな」


クロガネは、淡々と言った。


「消せないから?」


「いや」


クロガネは、少し間を置く。


「無視できなくなった」


午後。


会議室。


軽い共有が行われた。


「件数は、微増です」


カンザキが言う。


「ですが、全体影響はありません」


「……影響は」


誰かが聞く。


「ありません」


「対応は?」


「不要です」


会議は、すぐ終わった。


廊下に出てから、シラベが言った。


「ねえ」


「うん」


「“一覧”になった瞬間」


「……うん」


「問題っぽくなったよね」


アオイは、答えなかった。


午後の最後。


アオイは、一覧をもう一度開いた。


数字は、小さい。


だが、

ゼロではない。


「……残るって」


アオイは、小さく言う。


「消えないってこと」


シラベが、頷いた。


「神でも、処理できなかった」


「……処理は」


アオイは、首を振る。


「されてる」


「じゃあ」


シラベは、少し笑う。


「片付いてないだけ」


帰り際。


クロガネが、いつものように聞く。


「問題は?」


アオイは、少しだけ考えた。


「……ありません」


そして、続けた。


「でも」


クロガネは、何も言わず待った。


「残っています」


クロガネは、静かに頷いた。


「そうだな」


夜。


個人メモを開く。


・処理は終わっている

・だが、一覧から消えない

・数になると、無視できない


最後に、一行だけ書いた。


・残るものは、仕事になる


端末を閉じる。


外は、相変わらず静かだった。


正しく運用された世界。


それでも、

処理されなかったものは、

今日も一覧に残っている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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