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禁忌魔術、マニュアル化されました ―あなたの問題は、仕様外です―  作者: 青谷 静


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第3話 マニュアルは最新版を使用してください

「……増えてません?」


アオイは、机の上の紙の山を見て言った。


「増えてるな」


クロガネ課長は即答した。


「朝より」


「ですよね?」


アオイは時計を見る。


まだ午前十時だ。


改訂通知

第3.8版 → 第3.9版

改訂箇所:第6条 使用環境

追記:「湿度が高すぎる場合」


「……湿度」


アオイは呟いた。


「さっきまで無かったですよね」


「湿度は変わるからね」


シラベが軽く言う。


「いや、そういう意味じゃなくて……」


「アオイ」


クロガネが言う。


「最新版、持ってるか?」


「え、ええと……」


アオイは鞄を開け、冊子を確認する。


「第3.8版です」


「ダメだ」


「もうダメなんですか!?」


「最新版じゃねぇ」


その瞬間、端末が鳴った。


改訂通知

第3.9版 → 第4.0版

全体構成見直し


「……」


アオイはゆっくり顔を上げた。


「今、4.0って……」


「節目だね」


シラベが言った。


「第4.0版、配布します」


カンザキが部屋に入ってきた。

両手に、分厚い冊子を抱えている。


「え?」


「紙です」


「え?」


「正式には、紙です」


アオイは受け取った。


重い。


明らかに、昨日より重い。


「……昨日より、厚くないですか」


「改訂がありました」


「理由は?」


「記載されていません」


「じゃあ、どこが変わったんだ?」


クロガネが聞く。


「全体です」


「全部?」


「はい」


シラベがパラパラとめくる。


「……あれ?」


「何か、違います?」


「詠唱の順番、逆になってる」


「えっ!?」


アオイがマニュアルを確認する。


「……本当だ」


「朝は、違ったよね?」


「違いました!」


その時、また通知が鳴った。


改訂通知

第4.0版 注釈追加

「詠唱順は現場判断とする」


「……現場判断?」


アオイの声が裏返る。


「またそれですか!」


「カンザキ!」


アオイは同期を見る。


「これ、どう判断すれば……」


「最新版に従ってください」


「最新版が、今変わったんだけど!」


「では、さらに最新版を待ちます」


三分後。


改訂通知

第4.1版 発行

第11条 詠唱

「噛んだ場合は最初からやり直すこと」

※ただし、噛んだことに気づかなかった場合は除く


「……戻りました?」


アオイは呟く。


「戻ったね」


シラベが頷く。


「進んで戻るのが、今のトレンド」


「なあ」


クロガネが立ち上がる。


「今日、何か使う予定あったか?」


「あります」


カンザキが言った。


「あります!?」


「市民対応が一件」


「また!?」


対応室。


今度は、女性だった。


「……あの」


不安そうに言う。


「マニュアル、どれを使えばいいんでしょうか」


アオイは固まった。


「え?」


「講習では3.6版でした」


「……」


「今、いくつですか?」


アオイは、ゆっくり答えた。


「……第4.1版です」


女性は目を見開いた。


「えっ」


「でも」


アオイは続ける。


「使った時点の最新版で問題ありません」


シラベが親指を立てる。


「ナイス説明」


「では……」


女性が深呼吸する。


「第4.1版に従います」


詠唱が始まる。


途中で、少し噛んだ。


「……今」


アオイが言いかける。


「気づいてません!」


シラベが即座に言った。


「続行!」


魔法陣が光った。


少し遅れて、音がした。


空気も、たぶん変わった。


「……成功、ですか?」


女性が聞く。


クロガネは頷いた。


「概ねな」


「では」


アオイは報告書を書く。


・使用結果:概ね成功

・使用マニュアル:第4.1版

※使用中に改訂あり(第4.2版)


書き終えた瞬間、通知。


改訂通知

第4.2版

第12条 成功定義の明確化(予定)


「……予定?」


業務終了後。


アオイは自席で、個人メモを開いていた。


・改訂の理由が書かれていない

・成功の定義が揺れている

・最新版が、現場を追い越す


そこに、クロガネが来る。


「気にすんな」


「気になりますよ!」


「マニュアルはな」


クロガネは言った。


「追いつかせるためのもんだ」


「何に?」


少し間が空く。


「現実に」


その夜。


アオイの端末に、最後の通知が届いた。


改訂通知

第4.3版

表紙文言変更

「最新版を使用してください」


アオイは、静かに端末を閉じた。


「……最新版って」


誰に向けた言葉なのか、もう分からなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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