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禁忌魔術、マニュアル化されました ―あなたの問題は、仕様外です―  作者: 青谷 静


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第27話 書かないという選択

その日は、朝から通知が多かった。


数は多いが、内容は似ている。


・影響軽微

・再現性なし

・仕様外

・対応不要


「……増えたね」


シラベが、端末を見ながら言った。


「うん」


アオイは、否定しなかった。


「同じ種類」


シラベは続ける。


「でも、全部ちょっとずつ違う」


アオイは、画面をスクロールする。


言葉は違う。

表現も違う。

だが、結論は同じ。


「……これ」


アオイは、小さく息を吐いた。


「全部、処理できない」


「処理“しない”じゃなくて?」


シラベが聞く。


「……できない」


アオイは、言い直した。


午前中、三件。


午後、さらに二件。


どれも大きな問題ではない。


どれも、数値化できない。


「前と、何が違うんだろ」


シラベが言う。


「前は」


アオイは、少し考える。


「“迷っていい”って前提があった」


「今は?」


「迷う場所が無い」


処理画面を開く。


入力欄は、必要最低限。


・事象分類

・再現性

・影響度


自由記述欄は、無い。


「……書く場所が無い」


アオイは、独り言のように言った。


「書いたら?」


シラベが言う。


「メモとか」


アオイは、一瞬だけ迷った。


そして、首を振る。


「……公式には、残らない」


「公式じゃなきゃ、意味ない?」


「公式じゃないと」


アオイは、言葉を探す。


「世界には、影響しない」


シラベは、それ以上聞かなかった。


午後の最後の一件。


内容は、短かった。


魔術使用後、

なぜか「前に戻れない感じ」がする


「……感じ」


シラベが笑う。


「仕様に無い言葉だ」


「うん」


「で?」


アオイは、画面を見つめる。


処理フロー。


結論は、決まっている。


だが、

確定ボタンを押す前に、

指が止まった。


「……課長」


アオイは、クロガネを呼んだ。


「どうした」


「これ」


画面を見せる。


「どうしますか」


クロガネは、しばらく黙っていた。


「……仕様外だな」


「はい」


「記録は?」


「残せません」


「……だろうな」


少しの沈黙。


「アオイ」


クロガネが言う。


「書かないってのも、判断だ」


「……でも」


「責任は、軽くならん」


アオイは、深く息を吸った。


確定。


処理結果:対象外

対応:不要


画面が戻る。


「……終わり」


シラベが言う。


「終わり」


アオイも言った。


帰り際。


廊下は、静かだった。


「ねえ」


シラベが言う。


「それ、楽?」


アオイは、少し考えた。


「……前よりは」


「じゃあ、いいじゃん」


「でも」


アオイは、歩きながら言った。


「楽ってことは」


「うん」


「慣れてきたってことだから」


夜。


個人メモを開く。


書こうとして、やめる。


代わりに、一行だけ書いた。


・今日は、五件

・全部、書かなかった


少し迷って、もう一行。


・判断はしていない

・でも、選んだ


端末を閉じる。


外は、静かだった。


正しく運用された世界。


そして今日もまた、

問題は発生していないことになっている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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