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禁忌魔術、マニュアル化されました ―あなたの問題は、仕様外です―  作者: 青谷 静


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第17話 判断コストが高すぎます

「……高い、ですか」


アオイは、会議室のホワイトボードを見ながら言った。


そこには、簡単な図が描かれている。


判断

時間

コスト


「高いな」


クロガネ課長は即答した。


「前からな」


会議室には、いつもの顔ぶれが揃っていた。

今日は業務改善会議という名目だ。


「最近の運用状況ですが」


カンザキが淡々と説明する。


「統合処理の導入以降、

対応時間は平均三割短縮されています」


「三割……」


アオイは小さく呟いた。


「クレームは?」


「減少しています」


「事故は?」


「ゼロです」


「異常は?」


「軽微のみです」


シラベが、椅子を少し揺らしながら言った。


「それ、全部いいことじゃん」


「はい」


カンザキは頷く。


「判断を減らした結果です」


「判断って」


アオイは、慎重に口を開く。


「そんなに悪いものですか」


「悪くはありません」


カンザキは即答した。


「ただ、高い」


「……高い?」


「人が必要です」


「……はい」


「時間がかかります」


「……はい」


「ブレます」


「……」


「説明が必要になります」


「説明が……」


アオイは、少し引っかかった。


「必要なのは、良くないんですか」


カンザキは、少しだけ間を置いた。


「説明が必要ということは」


「はい」


「理解できない人が出るということです」


会議室が、静まる。


「理解できない人は」


カンザキは続ける。


「不安になります」


「不安は」


「問い合わせになります」


「問い合わせは」


「コストです」


シラベが、軽く手を叩いた。


「わかりやすい!」


「ありがとうございます」


カンザキは淡々と答える。


「じゃあ」


アオイは、声を落として言う。


「判断しない方が、いい……?」


「最適です」


カンザキは言い切った。


「少なくとも、制度としては」


クロガネが、ゆっくり口を開いた。


「なあ」


「はい」


「判断を減らして」


「はい」


「誰が楽になる?」


カンザキは、少し考えた。


「……全体です」


「現場は?」


「楽になります」


「使う人は?」


「安心します」


「失うのは?」


クロガネが聞く。


カンザキは、すぐには答えなかった。


「……定義できません」


「だろ」


会議は、そのまま進んだ。


次のスライド。


判断工程削減案

・例外対応の縮小

・判断権限の集約

・自動化の推進


「……集約」


アオイは呟く。


「どこに、ですか」


「中央です」


カンザキが言う。


「中央って……」


「個人ではありません」


その言葉に、

アオイは妙な寒気を覚えた。


会議後。


廊下で、シラベが言った。


「ねえアオイ」


「はい」


「判断ってさ」


少しだけ、真面目な顔。


「コスパ悪いよね」


「……でも」


アオイは言う。


「無いと、怖くないですか」


シラベは、肩をすくめた。


「怖いのは」


「はい」


「迷ってる時間」


事務室に戻る。


端末には、新しい通知。


内部資料

「判断コスト最適化計画(案)」


アオイは、資料を開いて、すぐ閉じた。


「……これ」


「どうした」


クロガネが聞く。


「“判断”が」


言葉を探す。


「負債みたいに書いてあります」


クロガネは、苦笑した。


「昔からだ」


「……え?」


「判断ってのはな」


「はい」


「余裕がある時にしかしない」


その日の最後。


アオイは、個人メモを開いた。


・判断=悪ではない

・でも、高すぎるとされている

・削減対象になった瞬間、戻れない


帰り際。


カンザキが、ふと立ち止まった。


「アオイさん」


「はい」


「安心してください」


「……?」


「正しい判断は、残します」


「……どうやってですか」


カンザキは、少しだけ笑った。


「判断しなくても、正しい結果が出る仕組みを作ります」


アオイは、その言葉を

肯定も否定もできなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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