表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁忌魔術、マニュアル化されました ―あなたの問題は、仕様外です―  作者: 青谷 静


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/29

第16話 感情は記録対象外です

「……欄、無いですね」


アオイは、端末の入力画面を見つめて言った。


「無いな」


クロガネ課長は即答した。


画面の下部。


いつもあったはずの項目が、消えている。


・使用者の感情状態

・心理的影響

・主観的違和感


「……削除?」


アオイが聞く。


「はい」


カンザキが頷く。


「不要と判断されました」


「不要……?」


「数値化できません」


「……でも」


「扱えないものは、記録しません」


対応室。


今日も流れは速い。


「次の方」


詠唱。


光。


音。


空気。


「……成功です」


使用者は、少し戸惑った顔をしていた。


「……あの」


「はい」


「なんだか、変な感じが……」


アオイは、反射的に聞いた。


「どんな感じですか」


「……安心、なんですけど」


少し考えて。


「前より、軽い」


アオイは、入力しようとして止まった。


感情欄が、無い。


「……」


「記録を」


カンザキが促す。


「はい……」


・使用結果:成功

・異常:なし

・統合処理:完了


確定。


その瞬間。


使用者の表情が、さらに穏やかになった。


「……あ」


アオイは、気づいた。


「今、変わりましたよね」


「記録が確定しました」


カンザキが言う。


「処理完了です」


「……でも」


アオイは、声を落とす。


「この人、何か失ってません?」


「記録にありません」


カンザキは即答した。


「ですので、問題ありません」


昼前。


別の案件。


今度は、使用者が泣いていた。


「……怖かったんです」


「何が?」


「理由は、分かりません」


「感情の記録は」


カンザキが言う。


「不要です」


「……不要」


アオイは、歯を噛んだ。


詠唱。


光。


音。


空気。


「……成功です」


使用後。


使用者は、泣き止んでいた。


「……楽になりました」


「……何が?」


「分かりません」


アオイは、何も入力できなかった。


入力欄が、無い。


「……課長」


事務室に戻って、アオイは言った。


「これ」


「ん?」


「感情、消えてませんか」


クロガネは、しばらく黙ってから言った。


「消えたかどうかはな」


「はい」


「記録できなくなっただけだ」


午後。


シラベが、珍しく黙っていた。


「……どうしたんですか」


「ん?」


「今日、静かです」


シラベは、少し考えてから言った。


「……私」


「はい」


「前より、気にしなくなった」


「何を、ですか」


「……全部」


アオイは、背筋が冷えた。


端末が鳴る。


改訂通知

第6.5版

記録仕様変更

「感情に関する問い合わせは、対応不要」


「……対応不要」


アオイは、画面を見つめた。


その日の最後。


アオイは、個人メモを開いた。


・感情は記録されない

・記録されないものは、問題にならない

・問題にならないものは、消えていく?


クロガネが、帰り際に言った。


「アオイ」


「はい」


「人間ってのはな」


少しだけ、疲れた声で。


「記録されなくなってから、壊れる」


アオイは、何も言えなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ