表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁忌魔術、マニュアル化されました ―あなたの問題は、仕様外です―  作者: 青谷 静


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/27

第11話 第16条は発動しません

「……発動、しないんですか」


アオイは、静かに聞いた。


「しない」


クロガネ課長は即答した。


対応室の中央には、何もない。


正確には、

「あるはずのものが、なかった」。


「状況を説明します」


カンザキが淡々と言う。


「使用者は禁忌魔術を使用しました」


「はい」


「成功しました」


「……はい」


「その後、周囲半径三メートルの情報が、

一部欠落しました」


「欠落……?」


アオイは喉を鳴らした。


「具体的には?」


「“昨日”という概念です」


「……え?」


「この範囲では」


カンザキは続ける。


「昨日が存在しません」


「……それ」


アオイは声を絞り出す。


「軽微、ですか?」


カンザキは資料をめくる。


「第15条には、記憶の順序の入れ替わりが含まれます」


「順序じゃないです!」


「結果として、生活は継続可能です」


使用者が、不安そうに言った。


「……昨日のこと、思い出せないんです」


「今日があります」


カンザキは言う。


「明日もあります」


「……でも」


「生活に支障は?」


使用者は、言葉に詰まった。


「……今のところは」


「では」


カンザキは言った。


「軽微です」


アオイは、唇を噛んだ。


「……第16条は?」


「発動条件を満たしていません」


「どこが!?」


「第16条は」


カンザキが読み上げる。


「使用者が増えた場合。

曜日が変わった場合。

過去の自分と目が合った場合……」


アオイは、遮る。


「昨日が無いのは!?」


「昨日は」


カンザキは一拍置いてから言った。


「曜日ではありません」


室内が静まり返った。


「……じゃあ」


アオイは震える声で言う。


「どこまで行ったら、発動するんですか」


カンザキは、少しだけ考えた。


「発動しないよう、設計されています」


「……え?」


クロガネが、低く言った。


「最初からだ」


「……課長?」


「第16条はな」


クロガネは、壁を見つめたまま言う。


「安心するために書かれた」


「止めるためじゃねぇ」


その時。


床の白い線が、もう一本増えた。


「……増えてる」


シラベが言う。


「昨日、一本だったよね」


「昨日……?」


使用者が首を傾げる。


「……今」


アオイは、はっとする。


「この人、昨日が無い……」


「問題ありません」


カンザキが言う。


「記録上は」


アオイは、端末を見つめた。


・使用後異常:軽微

 時間情報の欠落(昨日)


入力欄の下に、注釈が表示される。


※第16条発動条件未達


「……これ」


アオイは呟く。


「発動しない前提で、

“未達”って……」


「改訂です」


端末が鳴る。


改訂通知

第5.3版

第16条

「発動は、原則想定しない」


「……原則?」


シラベが笑った。


「じゃあ、例外は?」


カンザキは答えた。


「ありません」


使用者が帰ったあと。


アオイは、椅子に座り込んだ。


「……課長」


「なんだ」


「第16条って」


言葉を探す。


「誰のためにあるんですか」


クロガネは、しばらく黙っていた。


そして、言った。


「読む側だ」


「止めるためじゃない」


「……」


「安心するためだ」


その夜。


アオイは、個人メモを開いた。


・第16条は、使われない

・最後の安全装置は、存在しない

・でも、書いてあるから安心する


最後の通知が届く。


改訂通知

第5.4版

備考

「重大インシデントは、現在まで確認されていない」


アオイは、静かに端末を閉じた。


クロガネが、ぽつりと言った。


「……そろそろだな」


「何が、ですか」


「“重大”の定義が変わる」


アオイは、対応室の床を見た。


白い線が、いつの間にか

部屋の外まで伸びていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ