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不条理と片足ニーソと花精霊記  作者: 山吹祥
第二話『僕は患っていない?』

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九輪目「おめでとう」

 陽が昇り、人々が活動を始めリーエンの街が賑わい出した頃。


 ダンジョンを管理・運営する冒険者ギルドの中も同じくして、一日で一番の活気もとい喧噪で溢れ始める。


 依頼書を眺め吟味する者や目的にあった依頼を受ける者。

 成長レベルアップを目指しがむしゃらにダンジョンへ潜る者。

 生活のため日銭を稼ぐ者や花紋を刻まれ冒険者登録をする者。

 他の【フラトリア】と交流を図り情報収集に励む者。


 多くの冒険者や関係者が集まり、そしてパラパラとギルド内部に設置してある『封印門ダンジョンゲート』を進み地下へと潜っていく。


 やがて太陽が頭上を過ぎ、冒険者ギルド受付嬢達が『花墨インク』の乾いた羽ペンをクルクルと回し、暇を潰し始めた頃。


 一人生真面目に書類整理していたメアリ・リーンが、ダンジョンゲートから飛び出してきた一人の冒険者に気付く。


(【オダマキ・フラトリア】のサラ・イズラータ氏? 今は確か……!??)


「――リーン! メアリ・リーンはいるうぅぅぅぅーーーーッ!?」


「ここです、イズラータ氏! オア・レヒム氏の身に何かありましたか!?」

 メアリはサラの元へ早足で駆け寄る。


「えとえと……そう! オアが、オアが叫んだ! 目が、目がーって!」


「目? レヒム氏が目に傷を負ったということでしょうか?」


「傷? 傷と言えば傷かな……? あ、じゃなくてモンスターがやばいの! 四階層!」


「は!? レヒム氏はまた四階層へ下りたのですか!? 彼は無事なのですか!?」


「ちが、ちがくて……あぁーん、助けて団長ぉ~、シアン~、オア~……私、報告苦手~~!!」


 細かい事が苦手で、報告は団長や団員任せにしていたツケが回る。

 賢く要領もいい普段のメアリならば、これだけで察する事ができたがオアを心配する余り、人並み外れた判断力を曇らせ顔を蒼白に染める。


「レヒム氏……オア君は無事なんですかッッ!?」


 慟哭にも等しいメアリの叫声に、サラも追随するように叫び応酬する。


「ぶ……無事! 団長? あれ、シアン? と、とにかく! うちの誰かにおぶられて地上に向かってる! 傷もない! 両目に花紋が刻まれただけッッ!!」


「無事……花紋……」


「そう花紋! オアはおめでただけど、四階層からちょっとやばい空気がしたの!!」


 オアの無事を知れたことで、メアリは落ち着きを取り戻す。

 冷静に戻った頭で状況を瞬時に理解、把握したメアリはすぐさまギルドを見渡す。


(駄目、いない。異常への対応はレベル3以上。けど、調査だけなら――)


 四階層で発生したと予想される異常の調査及び、可能ならこれの対処を【オダマキ・フラトリア】へ緊急依頼クエストすることをメアリは決断する。


 今なお必死に説明を続けているサラへメアリが顔を向けた時――


「――何かあったんですか?」


 はなだ色の綺麗な長髪をした一人の女性が声を掛けた。

 メアリとサラは声のした方、階段を下りる人物へ視線を向けた途端、揃って驚きの表情を浮かべた。


「【奇跡の花姫デュナミス・フロラ】!?」

「セフィ・アークシュ氏!?」


 そのままメアリの前にまで移動して来たセフィは同じ問いをする。


「何かあったんですか?」


 真っすぐ見つめてくるセフィにメアリは姿勢を正し状況を説明する。


「本日【オダマキ・フラトリア】とダンジョンへ潜っていたオア・レヒム氏が、三階層で花紋を刻まれました。現在地上へと向かっておりますが、四階層で異常が発生したと予想されます。つきましては、ギルドから【イバラ・フラトリア】団員セフィ・アークシュ氏及びに【オダマキ・フラトリア】へ緊急依頼クエストを――」


「そっか……やったね、オア」

「――っ!?」


 草木が芽吹く温かな春を感じさせる優しい微笑み。

 セフィが咲かせた花にメアリとサラ、さらには様子を窺っていたギルド職員や冒険者達が言葉を失い時間を止めた。


「――私が、行く」

 微笑みを解き、凛々しい表情へと戻したセフィが言った。


「お、お待ちを! お一人では危険です。アークシュ氏の身に何かあっては、ギルド長花精霊アイリス様とイバラ様に顔向けできません!!」


「たぶん大丈夫です」


「っ!? それに報酬も!!」


「私はただダンジョンへ潜るだけ。だから報酬はいらない」


「そういうわけには――」


「じゃあ、その話は戻ってからする――【歓喜喝采アプローズ・サントリー】――」


「魔法!?」メアリが言い終える頃にはセフィの姿は見えなくなっていた。


 行き先は考えるまでもない。


 オアとセフィがした三年前の冒険をメアリは知っている。

 そして、ダンジョンゲートの先まで奔る残光が教えてくれている。


「(また、三年前みたいにどうかオア君をお願いします――)


 メアリはウィスタリア色の軌跡に思いを託した。




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