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不条理と片足ニーソと花精霊記  作者: 山吹祥
最終話『花精霊記』

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四十六輪目「逃飛行」

 春区アニクシ

 昼間は無数の人々で活気溢れる大商業通りだが、おかしなことに異様な空気が広がっている。


 とある集団が進むに連れ、自然と人混みが割れていく。


「遠征か?」

協力進攻レイド?」

「まさか深層に!?」

「ネームドモンスターでも討伐するのか!?」

「でも、ギルドからは何も案内が出てないぞ?」

「確かに……けどよ、あのメンツで他に何があるよ?」

「つか――――」




「「「「――先頭を歩くやつ誰だ????」」」」」




 お答えしよう。僕だ。

【ニーソ・フラトリア】団長オア・レヒムです。

 理由とかは聞かないでくれ。

 僕にも未だ理解が追い付いていないから。


 ちなみにこの行進はレイドじゃない。


 手元をよく見てほしい。

 持っているものは武器じゃないでしょ?

 誰がどう見たって『熊ちゃんの串焼きスブラキ屋』の印が入った紙袋だ。

 これじゃモンスターを倒せない。



 ……いや、竹串でも普通にやってのけそうなメンバーだけどさ。



 でも今日は違う。

 ただ、みんなでスブラキパーティへ向かう途中なだけだ。

 それなのに……


(……ほんと、どうしてこうなったんだろう?)


 昨日した冒険からの帰還。

 ニーソ様の「絶対安静!」命令で休みが決まった。

 そこに【オダマキ・フラトリア】から招待が届き、急遽開催が決定したスブラキパーティ。


 参加者はニーソ様と僕。それとハイエルフのアニスだ。


 せっかくだから美味しいスブラキを食べたい。

 ということで、春区アニクシにある一見さんお断りの『熊ちゃんのスブラキ屋』へ買い出しに出ることになった。


 手持ち無沙汰だったし、それに店主クトスさんの売上にも貢献できるから丁度よかった。

「オレの勘は間違っていなかったぜ!」

 この短期間で何回も買いに来る僕を見て、得意げに鼻先をこするクトスさんと話していたら、


「ハイエルフ様誘拐事件の当事者から詳細を聞きたかったところだ」

 と、

 団員数最大派閥の花精霊ラベンダー様とケス・パプル様が涼やかに現れた。

 僕捕まっちゃうの!? と、ビクビクしていたら今度は、


「試作の体力回復薬(ポーション)をハイエルフ様に飲ませたと? 是非とも、感想をお聞かせください」

 と、

 医療系最大派閥の花精霊コンミフォラ様とヴァルル・リュケ様がふわりと現れた。

 次から次に現れるリーエンの有名人。

 店主クトスさんが僕に向けた驚きの顔がやけに印象が残っている。と、思えば、


「【花精霊羽織ニーソ・ヒマティオン】の使い心地を聞かせてほしい」

 と、

 鍛治系最大派閥の花精霊サルビア様がメラメラと現れ、さらには、


「報告を纏め上げるのに必要な人物らが一塊に……私たちも同行しましょう」

 と、

 冒険者ギルド長花精霊アイリス様とギルド職員代表としてメアリお姉さんが。

 そして最後。

 ポカンと混乱する僕とクトスさんに止めを刺す人物が。


「私はオアと三年前から約束しているのに」

 と、

 探索系最大派閥【イバラ・フラトリア】に所属する【奇跡の花姫デュナミス・フロラ】セフィ・アークシュさんが舞い降りた。



 錚々たる顔ぶれ。眼前に広がる圧巻の光景。

 改めて。



 ……どうしてこうなった?



 気が付けば……なんか増えた。

 あれよあれよと増えた。街で騒がれても仕方がない。

 みんなが僕の後に付いて歩く。

 チラリと後ろを見てみるが、うん。まるで英雄行進パレードだ。



 僕、ここに居ていいの?



 頑張って存在感消しておこうっと。


 ちなみに後日知ったことだけど、

 クトスさんのスブラキ屋は増々繁盛したらしい――――。




 到着した夏区カロケリ。【オダマキ・フラトリア】ホーム。

 顔を引き攣らせたジョンさんらが受け入れてくれた後。


 代わる代わる、矢継ぎ早に飛んでくる質問の嵐。

 一つずつ答えていき、ようやく息をつく瞬間がやってきた。


(つ……疲れた――)


 とんでもない経験を積んだ気がする。


「オア君、お疲れ様。はい、あーん」


「メアリお姉さ……んぐっ!?!」


 ぐいっと蜜漬串焼きメリスブラキが口に突っ込まれた。


「オア様、口周りが汚れましてよ」


 メアリお姉さんと反対に位置取ったアニスが、サササとタレで汚れた口周りを拭いてくれる。

 温かい、適温のタオルが気持ちいい。


 美女と美女に尽くされる、偉い人になった気分だ。

 感覚的には姉と妹なんだけどさ。


「綺麗になりましたっ! はわっ、オア様の横顔が凛々しくて此方こなたはもう……」


 こてんと腕に枝垂れ掛かる、年下に見える年上お姉さん。

 僕が染まるのを見て、頬がニヤついているから揶揄っているのだろう。


「ふふ――。どれ、ロッシェの恨み節も怖いし、お姉さんはちょっと働いてくるとしますか。【カルミア・フラトリア】の処理も今日の内に済ませないとならないし。オア君、残りは自分で食べてね」


 と、蜜漬串焼きメリスブラキを受け取る。

 メアリお姉さんから教えてもらった話によると、ダンジョンから生き延びた【カルミア・フラトリア】は潔くギルドに出頭した。


 本来は冒険者資格の剥奪、そしてリーエンからの追放が罰となるところ、アニスを傷付ける目的はなく、さらに命懸けでアニスを守った。

 アニス本人の擁護もあり、一年間ダンジョン探索の禁止。

 その間【ラベンダー・フラトリア】に付いて街の警備、奉仕を罰として命じられたそうだ。


「あの方は、将来は私のお姉様にもなられるのですね。オア様?」


「ぶっ……な、何言ってんのアニス!?」


「でも、此方にはセフィ・アークシュさんという強力な恋敵ライバルがいるようです」


「アニス!?」


「先ほどからチラチラと目で追っておりますよ、オア様」


「それね~、関係性は私も気になるな~?」


 サラさんが青鈍色の尻尾をゆらゆらと揺らし、会話に混ざる。


「か……関係性も何も、セフィさんと僕は偶然知り合ったというか何という、か?」


 しどろもどろで中途半端な返答をしたせいか、両端から鋭利な視線が突き刺さる。

 凄まじい重圧プレッシャー、とんでもない窮地だ。


 ここを乗り切ったら僕もレベル2になれるかもしれない。


「どうしてオアが居るからって~? あの有名な【奇跡の花姫デュナミス・フロラ】がうちのスブラキパーティに乗り込んで来たのかな~?」


「そ、それよりサラさん! レベル2への昇格おめでとうございます!」


「オア様、今晩はお約束した林檎酒が飲みたいです。当然に二人切りで」


「何それ? オア、王女様を軟派でもしたの?」


「はいっ、素敵な夜を過ごそうとお誘い頂きましたっ」


 ああああああ……アニス~~~~!? ぱあっと花開く笑顔は可愛いけど!


「それ僕言ってない! 言ったのアニス!」


「はて、そうでしたか? 激しくも刺激的なひと時でしたので、此方の記憶が曖昧のようですね。ですが、オア様は頷いてくれましたよね? そこはしっかりと覚えております」


 確かに頷いた。

 というか、あの時は頷くしかなかった。

 逼迫した状況だったじゃん!?


「……へぇ、随分と仲良いんだ~? てかオア、私にはそんな洒落たお誘いしてくれたこともないじゃん。団長が言っていたけど男はやっぱりお姫様属性が好きなんだ」


「それは人によるんじゃ――」


「ケダモノ」


 ゴブリンでも見るような冷たく蔑む目付きだ。


「野獣のようなオア様、此方は大歓迎ですっ!」


「アニスはもう黙ってて!」


「はい、喜んでっ!」


 どうしてそんなに嬉しそうなの!?


「さて、名残惜しいですが時間のようです。オア様と話したいと考えている方が大勢いらっしゃるようなので、お譲りいたしましょう――」


 花紋を刻むという目的を果たしたアニスは、今日アカデメイアの森へ戻るらしい。

 本当はもっと早い時間に出る予定だったようだが、お世話になった挨拶とお詫びを名目にパーティへ無理矢理参加した。


 と、可愛らしく「えっへん」と胸を張っていた。


「最後に花精霊アイリス様へご挨拶して帰ると致します。オア様、サラ。改めて、この度は大変お世話になりました」


「アニスと一緒に冒険できて楽しかったよ」


「あんまりお転婆したらダメですよ~?」


「ふふ、はい! ――オア様! 絶対にすぐに絶対の絶対に必ず貴方様の元へ戻りますから!! 両親を説得して戻りますから、林檎酒の約束はその時に! それで、えっと…………此方を【ニーソ・フラトリア】へ受け入れて下さいますか?」


 ほとんどのハイエルフは森に住む花精霊様の花紋が刻まれる。

 それ以外の花紋が刻まれることは稀中の稀。

 ヒューマンの【フラトリア】へ加入することは前代未聞。


 ましてやアニスは二十歳で刻まれた異例の子。

 ハイエルフの中でどんな仕来りやルールがあるか分からない。でも。


「もちろん!」


 アニスを拒絶する理由にはならない。


「オア様!!」最後に僕へ抱き着いたアニスは、迎えに来た護衛や従者を連れて、ニーソ様とアイリス様の元へ姿を移して行った。


「モテモテだね、オア」


 太ももに巻き付く尻尾がギュッと締まる。

 跡が残りそうな締め付け具合だ。


「サラさんと一緒で僕を揶揄っているだけですって」


「……別に、もうサラでいいよ。オアはもう立派な一人の男性なんだから」


「…………サラ?」


「…………ん、オア?」


 名前を呼び合っただけなのに気恥しさで一杯だ。

 まるで恋人のように甘いひと時。

 見つめ合う僕らだったが、影が覆った。


「げっ、団長」


「いい感じのとこ悪いが、サラ。お前の休憩は終わりだ」


「え~、やだやだ! もうあの地獄キッチンに戻りたくないよ~!」


「シアンを見ろ――。あの調子だと暫らくあの笑顔が顔に貼りつくぞ!?」


 パーティ主催者ホストの【オダマキ・フラトリア】は現在進行形で調理してくれており、庭園にはスブラキ以外にも様々な料理が立食形式で用意されている。


 身内だけの気楽なパーティの予定が一転、世界でも有名な人が集まったことで手は抜けず、キッチンは地獄のような激務に襲われているらしい。


「ま、なんだ。オアは気にせず、ゆっくり楽しんでくれ――」


「主役のオアをもてなすのに、イチャイチャご奉仕遊びしてた方が楽なのに~~……」


 どう反応していいか分からず、苦笑いで去って行く二人を見送る。

 でも、やっぱり僕は揶揄われていたんだ。

 サラさん、もしかして……僕のことを? とか思ったのに。くそっ――。



 俯かせていた顔を上げると、目を眩ます白光がもの凄い勢いで飛翔してきた。


「オア君!! さっきから見ていれば、なんだいイチャコラと!! アマナが珍しくせっせと働いているのに、オア君ときたらとっかえひっかえ美女と戯れてっっ!!」


「ごめんなさい! ニーソ様!!」


 くるくる、くるくると僕の顔を中心に旋廻するニーソ様。

 帰って来たなって感じがする。


「お詫びに今度デートしてもらうかんね!」


「ははは、僕でよければ喜んで」


「やったね、約束だぞ!?」


「はい」


 ニーソ様は両腕をシャカシャカとさせ謎の喜びの舞を披露した。

 言わないけど、オダマキ舞い二十三の構えの一つ『歓喜の型』に似ている。


「そういえば、ニーソ様」


「ん? なんだい? やっぱり駄目とかはなしだぜ?」


「約束は守りますよ。それで、アイリス様から聞きましたけど――」


「何をだい!? あ、いや……聞きたくない! アイリスが言ったことなんて忘れてくれ! 何かの間違いだからっ!! キミとセフィなんちゃらの婚姻なんてアマナは絶対に認めない!!」


「へ? 僕とセフィさんの婚姻? どうしてアイリス様が……そんなことを?」


 僕は期待を籠めて、もじもじとニーソ様に聞き返す。


「ふー、なるほど。その件じゃないのか……聞かなかった。いいね、今のは聞かなかったことにするんだオア君。【ニーソ・フラトリア】を存続させたければ、触れない方がいいこともある。分かったかい?」


「ええ……」


 理不尽極まりない圧。無理難題。

 気になって仕方ないけど、こうなったニーソ様は梃子でも動かない。


 僕は頷いた。


「キミはとてもいい子だ」


 一段落ついたところで、脱線してしまった本題へ移ることにしよう。


「――ニーソ様は、オオニソガラムという名前なんですね」


「……さてはクロリスだな」


「? いえ、アイリス様からですけど……僕が知ったらダメでしたか?」


「その前にオア君。アマナの名を知った感想を聞かせてほしい」


 古代花形文字フロラグリフでは鳥やミルクを意味していたはず。

 それと別の意味があって確か……『11時の貴婦人』だったかな。


「すごく格好良いと思います!!」


 意味もそうだけど、音の響きもいいと思う。心くすぐってくる。


「……だからだよ」


「へ?」


「アマナはオア君に格好良いより可愛いと言われたいってことだっ!」


 なるほど、それはそうだ。僕が迂闊だった。でも――


「ニーソ、だと可愛いんですか?」


 僕としては略さないオオニソガラムでも十分可愛いと思うんだけどな。

 そう考えての質問。

 この言葉足らずな返答が、僕とニーソ様に亀裂をもたらした。


「え~~ん、アイリス~~!! オア君に遅れてやってきた反抗期でアマナは傷付いた~~――」


 ニーソ様は蛇行しながらアイリス様の元へ飛んでいった。

 本当は今すぐ行きたいけど、後で謝りにいこう。


 けして、アイリス様の目付きが怖いからとかじゃない。

 ニーソ様とアイリス様が触れ合う時間の邪魔をしてはいけないからだ。


 そんな言い訳をしつつ僕はメリスブラキにかぶり付いた。

 すると、ウィスタリア色の目と視線が重なった。


 瞬間。


 庭園に集まる人混みをするするとすり抜けて、清涼風と共にセフィさんが現れた。


「オア、それ一口でいいからちょうだい」


 セフィさんは食べ掛けのメリスブラキを指差した。


「え、でもこれ僕の食べ掛けですよ? 新しい方がいいんじゃないですか?」


「もう一本も残っていない。それに、オアの食べ掛けなら私は平気」


「~~~~!?」


 自分でも分かるくらいカーッと顔が熱くなった。

 間違いなく秋区フティノポロで有名な紅葉にも負けない染まり具合だ。


「ダンジョンでは水や体力回復薬ポーションを仲間と共有することもあるから」


「なるほど……それなら――」


 いいかな、と思ったところでニーソ様の言葉を思い出す。


『食べ物や飲み物の共有は禁止だ。地上でもダンジョンでも!』

 と。

 花精霊具ニーハイを光らせてまで厳命されていたことを。


「ごめんなさい、ニーソ様から禁止されていて……」


 セフィさんは見るからにシュンと落ち込んだ。

 ダンジョンで圧倒的な力を揮っていた人には見えない、お人形のような愛らしさだ。


(こ……心が痛い!)

 何か、何か話題を変えよう。


「えっと、セフィさんはどうして冒険者に?」


 三年前から訊きたかったことだ。


「千年前に起きた真実を知りたい。だから、最奥の攻略、かな?」


「人類の悲願……叶えましょう」


「うん――。私からもいい?」


「はい、なんでも聞いて下さい」


「オアはこれからどんな冒険者になりたい?」


 三年前にも似たことを訊かれたな。

 あれから紆余曲折あったけど、


「不条理な冒険者になりたい、考えは変わっていないです」


「そっか――。三年前に聞いた時は理解らなかったけど、オアの戦う姿を見たらオアが言う不条理の意味が伝わった。昨日のオアは格好良い冒険者だったよ」


「僕なんてまだまだです。でも、ありがとうございます。嬉しいです」


「うん――。また一緒に冒険しようね」


 三年前と同じだ。


「はいっ!」


 僕とセフィさんの新たな約束。


「やっぱり今から行く?」


「今から!?」


「昨日は邪魔が入ったし」


 邪魔とは誤解を招きかねないけど、

 アニスもいてすぐに【オダマキ・フラトリア】のみんなとも合流できたから、結局二人切りで冒険とはいかなかった。


「そうだ、その前にスブラキを買って腹ごしらえしよう」


「はらごしら、え?」


 セフィさんは僕の食べかけのメリスブラキを見ていた。


「近道を知っている。オア、付いて来て」


「え?」そう戸惑う間もなく、セフィさんは即行動に移った。

 庭園の塀にひょいと乗り、そこからさらに民家の屋根へと飛び乗った。


 僕は残りのメリスブラキを口に詰め込み、セフィさんの後を慌てて追う。

 満足そうに頷いたセフィさんは次の屋根へと飛び移ったが、


(結構、距離があるな……)


 屋根と屋根が遠い。

 僕が躊躇する間に、セフィさんはどんどん進んで行く。

 これ以上距離が開くのは避けたい。僕は思い切って跳ぶ、が――


「こら、抜け駆けは許さないぞ~~!!」


「っ――!?」僕らに気付き追い掛けてきたニーソ様に驚き足を踏み外してしまった。


「オア!?」

 もの凄い速さでセフィさんが戻ってくる。けれど、


「平気です! ――花精霊羽織ニーソ・ヒマティオン!!」


 前方の屋根を掴んだ花精霊羽織ニーソ・ヒマティオンの力で落下を回避する。

 グングンとセフィさんの近くまで飛び――――


「は?」

「え?」


 ――あろうことか花精霊羽織ニーソ・ヒマティオンはセフィさんをぐるぐるに捕縛してしまった。

 勢いのまま砲弾のように空を跳ぶ僕とセフィさん。


 遠くでニーソ様が何かを叫んでいるけど、風の音が邪魔で聞き取ることは難しい。


「ふふふ――すごい!! 私、今空を飛んでる!」


「すみません、すぐにほどきます!」


「いい! このまま!!」


「いいんですか!?」


「空に連れて行ってくれる約束!!」


 飛ぶというよりは跳ぶ。

 だから僕の想像とは違ったけど、


「本当にオアは面白い。空を飛ぶだなんて不条理な冒険者だね!」


 まあ、セフィさんが楽しそうだからいいか。


 僕らは空の逃飛行デートを楽しんだのだ。



 ▽▲▽



「まったく見せつけてくれる……――いってらっしゃい、オア君」


 二人を見送った花精霊ニーソは、懐から二冊のノートを取り出した。


名も無き忘却の巨人(ネームレス)』に致命傷を与え、封印にまで追い込んだ英雄がいた。


 英雄は世界の危機を救った。

 けれど、わたしを救いはしなかった。



 千年の眠りから覚めてすぐ一人の少年と出会った。

 その少年は冠に恥じぬ輝きをもって、闇夜からわたしを救い出してくれた。



 花言葉は希望や純粋、そして才能。

 花の名はオオニソガラム。またの名を、





【スター・オブ・ベツレヒム】





 救われたわたしは星心に誓った。


 いつか別れが来たとしても。


 彼が到達する未来。


 彼が、オア・レヒムが成し得る偉業を、彼の生涯全てを見届ける。




 わたしは、アマナが――――





「キミの不条理な【花精霊記フラトリア】を継いでみせる」



 了




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