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不条理と片足ニーソと花精霊記  作者: 山吹祥
第六話『冒険』

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三十九輪目「アニス・アーカ・エクシリスの目的」

「おい、あれ……あれッッ!!?」


 ダンジョン六階層。

【カルミア・フラトリア】の団員四人とハイエルフの女性一人、計五人からなる一組のパーティが上を向く。


「まじか、ライラックロウだ!?」


「本当にいたぞ!? 光る角、間違いねえぞ!?」


「お前ら静かにしろ――」


 団長ラム・キールは興奮する団員を諫めつつも、その内心は歓喜に満ち溢れていた。

 ダンジョン内部を照らす唯一の明かり、オミッサ花の薄赤色に突如として差し込んだ七色の光。


 赤や橙、黄、緑、青、藍、紫の全七色の光が順に、頭上から降り注いだからだ。


「団長さん、あの鳥さんが黄金の林檎の生る場所まで案内して下さるのですね?」


 ハイエルフ『アニス・アーカ・エクシリス』の問いに、キールは抑えきれずに上がった口角を向ける。


「その通りですぜ、王女様」


此方こなたの魔力がお役に立てたようですね」


「ええ。ですが逃がしたら大変ですんで、こっからは静かにお願いしますね」


 アニスは宝石のような碧眼を輝かせ、小さく頷いた。

 これに首肯したキールは、アニスの頭上で悠然と旋廻するライラックロウへ視線を移し観察する。


 戦闘力が皆無のライラックロウでも、矢やナイフの投擲を防ぐくらいの力は持っている。

 焦れば一攫千金の機会を棒に振ることになるため、魔法を持たない【カルミア・フラトリア】は天井が低くなる場所まで慎重に追い続けなければならない。


 やがて、アニスが秘める潜在的魔力に満足したのかライラックロウが移動を開始した。

 団員二人を先行させ、キールともう一人はアニスの安全を確保しながら二股路・・・を進む――。



 一方で、【カルミア・フラトリア】と違った意味でアニスも浮付いていた。


(占い師さんによれば、黄金の林檎を食べさえすれば此方にも花紋が――)


 アニスはハイエルフなのに花紋が刻まれていない。

 下界の楽園エデシアでは、十六歳までに花紋が刻まれる確率は約五割とされている。


 だが、森で花や植物と共生しているエルフは生まれながら高い魔力適正を備えており、約八割の確率で花紋が刻まれると言われている。


 中でも王族のハイエルフに限っては、過去百パーセントの確率で花紋を刻まれてきたのだが、アニスは例外だった。


 その結果、アニスはアカデメイアの森内で少々過保護気味に軟禁されることになった。

 幸いにもアーカ族は仲間意識が強く家族愛に強い、当のアニスが元から備える天性の明るい性格もあってお転婆に育ち、今年二十歳となった。


 ささやかなお祝いとして、有名な占術師がアカデメイアの森へ招かれアニスは占われた。


【ひと月の内】

【リーエン】

【鳥】

【刻む】

【癒し】

【黄金の林檎】


 時期や場所、人、何が起こるかが抽象的に占われるこの結果に、アニスは食べたら花紋を刻む黄金の林檎があると予想して、それを目的にリーエンにまでやって来た。


 従者がギルドや街で聞き込みを行ったことで、ダンジョンに鳥型レアモンスター『ライラックロウ』の目撃情報があったと分かる。


「ライラックロウが食べたら花紋を刻む黄金の林檎へ導いてくれるのよ!」


 自らダンジョンへ赴きたいと、従者や護衛らに訴えたが認められなかった。

 アニスは護衛らが認めてくれないなら冒険者を雇えばいい、と閃いた。


 そして、護衛らが留守の間に、眠りの秘薬を混ぜた林檎酒を姫付きの従者に振舞い、ギルドを抜け出したところで【カルミア・フラトリア】と出会った。


「なるほど……ちょうどライラックロウを調べていたところで、なんでも巣の近くには光る林檎があるとか、なんとか」


 と、世間知らずのアニスにうそぶき、ダンジョン案内を申し出たことで現在に至る。


「――団長さん」


「どうしやした?」


「お礼をと思いまして。無理を言ってお連れ下さりありがとうございます」


「礼にはまだ早いと思いますぜ」


「確かにそうですね。ですが、此方にも花紋が刻まれると思うと気が逸ってしまいまし、て――!?」


 突如、前方から剣撃音が届いた。


「!? 王女様下がってくだせぇ!」


 直後。


『団長! 罠だぁーー!!』

『ブラックゴブリンだーー!!!!』


 先行していた団員の叫び声がダンジョンに響いた。

 即座に警戒態勢を取るキールら。

 団員の元へ駆け付けようとするが「団長さん!」とアニスが叫んだ。


「――チッ、よりにもよって……最悪だ」


 冒険者を殺し奪ったと考えられる剣、槍、弓、盾を持つ四体のゴブリン。


 その後ろに控える狡獪なブラックゴブリンが、


 キールを馬鹿にするように指差し『ブ、ギギャッギャッ』と、鋭い歯を見せ哄笑した。


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