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第3話:都の目と初めての取引

朝の光が差し込む店の窓から、今日も天音は調合台に向かっていた。昨日訪れた黒いマントの男――錬金術ギルドの下級員――のことが頭をよぎる。あの人物の意味はまだ分からないが、街での評判が都にも届きつつあるのだろう。


「まずは、今日も街の人たちを助けるところから……」


薬草を量り、火加減を調整しながら、天音は自分の手で作る薬の一つ一つに心を込める。小さな傷薬、栄養強化薬、魔力補助の湯薬――どれも、現代の薬学知識と異世界の素材を組み合わせた唯一無二の処方だ。


昼を過ぎ、店の扉が静かに開いた。そこに立っていたのは、都の薬職組合の使者らしい男性。

「天音様……いや、有栖川様でお間違いないでしょうか。都からお話を伺いに参りました」


天音は少し身構えた。都の役人に呼ばれるのは、この街で評判になった証。けれども、善意だけでは済まないのも知っている。

「ええ、わたしが天音です。どうぞ、中へ」


使者は控えめに薬屋の奥を見回す。

「こちらの薬……市販のものとは違い、魔力の流れにも作用すると聞きました。都では、特定の薬草と魔力補助の組み合わせは、貴族や冒険者の能力向上にも用いられます。御社の処方を一度、都で取り扱わせていただきたいのです」


天音は考えた。都で取り扱われれば、街の住民の生活も安定し、弟妹たちの未来も守れる。しかし一方で、都の権力や薬職組合の思惑に巻き込まれる可能性もある。


「わかりました。ただし条件があります。薬の価格と流通は、この街の住民に損がないようにしてください」


使者は驚いた表情を浮かべたが、すぐに微笑む。

「承知いたしました。都でも、その条件で進めさせていただきます」


天音の胸の奥に、少しの緊張と、希望が入り混じる。街の小さな薬屋の少女が、都と接触する――これは、さらなる奇跡への第一歩だ。


夕方、店の外で弟妹たちと話す天音の耳に、街の人々の声が届く。

「天音さんの薬、ほんとに効くんだね!」

「もう少しで、町のみんなが元気になりそうだ」


天音は微笑んだ。小さな奇跡が、今、確実に人々の生活を変えている。そしてその背後では、都の権力と、錬金ギルドの目が、静かに天音に向けられていた――。

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