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Ⅰ時限目(6)

 さて、次の問題は。

「お久しぶり。私を覚えているかな?」

 寝そべっていた小人達は、ピョコ、と擬音を入れて跳ね起きた。

「だ」

「くわんと」

「てんぽ!」

「こーめ すたい?」

 相変わらず、抜群のチームワークだ。

「どうにかうまくやっているよ」

 田端先生を慎重に下ろして、私は答えた。

「まこと!」

「おおきくなったね」

「すっかり」

「おにいさんだ!」

 三十路過ぎは、おじさんではないだろうか。

「ところで、君達はなぜジゲンⅢに来られたのかな?」

 踊っていた四人は、急停止した。萩が付いた帽子の小人が、バランスを崩して転んだ。

「しらない」

「どうだって」

「いいこと」

「でしょ?」

 この子達に、邪念は全く無い。質問を工夫するか。

「ジゲンゲートが開いて、遊びたくなった?」

 小人が横に並んで、組体操の扇を作った。

「そうだね」

「げーとがひらいたんだから」

「おそとにいこうと」

「きめたんだ」

 朝顔を付けた帽子の小人が、腕を震わせていた。私は、倒れないように手を添えてやる。

「ゲートの場所は、分かる?」

『わかんない!』

 つい頭を下げてしまった。そこは合わせるのか。

「ロロは、まだなのかな?」

 《アヴェ・マリアを歌う少女》を指して、訊ねる。

「ロロねえちゃんは」

「だいせいどうだよ」

「きょうこうさまの」

「だいじなおはなしをきいてるよ」

 大聖堂は、ジゲンⅡの中枢機関だ。トップである教皇が、一住人の彼女に何の用だろう。

「そんなことより」

「たいくつ!」

「このへや」

「せまい!」

 じっとしていられないようだ。この子達は、言い出したら聞かない。他に惹きつけられる物はあるか? 

「君達、ラジオを聞かないか」

 たまたま目に止まったラジオに救いを求める。矢印ボタンでFMはんなりに合わせた。十七時の時報が鳴り、スティールパンのオープニングが流れる。

《クローバー近藤の、ゆうがたリフレッシュ!!》

 アレンジされた童謡に、小人達はラジオが置いてある机をよじ登ってきた。作戦成功だ。

《お仕事・お勉強等々、お疲れ様です! さあ、この時間はわたくしクローバーとリゾート気分に浸りましょう。早速リクエスト曲、参ります!》

 電子楽器の疾走感あるイントロに、小人達は群がった。音声合成ソフトの歌か。名ばかりの歌手より聞きやすい。

「すごい」

「はやくちことばみたい」

「てっぺんかけたか、ほーほけきょ!」

「きゃはは」

 曲が終わったら、ジュースを飲ませるとしよう。

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