Ⅳ時限目(8)
翌朝、スクエイアは止水緑地公園に集合した。風車の丘でビニールシートを敷くのは、先月ぶりだ。
「配慮してもらって、すまんのう。二次会が長かったのじゃ」
ジゲンⅠのスクエイア・クロエ王が、シートに寝転がった。ジゲンⅢでは、パンチパーマの数学教師・目黒を名乗る。
「私達の都合で、遅らせてしまったんです。それで腹拵えを兼ねて、段取りの説明をさせていただこうと」
ジゲンⅡのスクエイア・ロロは、スープジャーから汁物をよそう。
「田端のおばさま特製、しじみのお味噌汁でございます。温まりますよ」
「恒河沙美味そうじゃのう」
私は、遠くのベンチに腰掛けている跡見さんに、朝食を持って行った。
「跡見さん……今日はアドミニスさんだね。どうぞ」
着物とドレスを折衷させた装いだった。休校日というよりは、ジゲンⅣのスクエイアとして来ているからである。
(教師は普通、孤立している生徒を無理にでもグループに加わらせるのではないかしら)
得意の憎まれ口に、私は苦笑した。
「団体行動が苦手な私に、そんなお節介を焼けると思うか?」
生徒の立場になって考えたら、教師に鬱陶しい以外の感情を抱けない。
「公私に支障が出る場合だけ、他人と関われば充分だ」
ロロ達の方へ歩いてゆくと、目を覆われた。
(滑稽だと笑わないの、ウグイスダニ? 私の愛は、重いわよ)
もはや、伝承かつ他人事ではないのだ。その場を動かず、私は答える。
「笑わないよ。『鍵を持つ人』達も、そうだったように」
(律儀なのね)
風車のブレードの網に差し込む陽光が、まぶしかった。
「長所、短所、どちらにもなりうるな」
クロエ王の食が進んでいる。だし巻き玉子が無くなりそうだ。阻止しなければ。




