Ⅳ時限目(6)
記録はここまでだった。翌日、私が緑の鍵と接触したせいで、親父が異なるジゲンへと姿を消す。七年後の神無月二日が死亡日となる。
「ロロ、もし、誰かが私を傷つけていたら、どうする?」
「その方に、すぐやめてくださいませと申します」
ロロは頑張って、眉を吊り上げた。
「やめなかったら?」
「マホーで、その方をクッキーにします。反省されないようでしたら、おやつとしていただきます」
早口になっていて、愛くるしい。私のために怒ってくれるこの子に、感謝すべきだ。
「私が大事に至らなくても、その人は許せないかな」
「もうお会いしたくありません。坊ちゃんがお元気になったことを確かめてから、おうちに帰ります。泡のお風呂ですっきりして、ふかふかのマシュマロおふとんにくるまりますよ」
「家に……か」
他のノートを検めつつ、机の引き出しを探してみよう。
「一段全てが消しゴム? 無駄なストックだ」
「おじさまは、物を集めることがお好きでした。四段目は鉛筆でございますよ」
側面に数字やロボットの絵がある。私の世代でも流行った「バトル鉛筆」だ。少年の心を持ち続けていたらしい。
「坊ちゃん、こちらの頁をご覧ください!」
ロロがノートを開いたまま、小走りした。
「ジゲンⅢのスクエイアの証について、書いてありました」
Tシャツの裾で手を拭き、ノートに目をやった。
鍵が丸まってから、粉をまきだした。涙か? 寂しがっているのだろう。粉は糸状に空気中を漂っている。注意しないと見えない。おれにマホーが使えたらなア。




