Ⅲ時限目(16)
笛を荒々しく吹いたような音と共に、砂嵐が発生した。砂は黒く、蒼い紙を私達の傍らへかき集めた。
「ロロ殿が狼狽しておっての、様子を伺いに来たぞよ」
直方体の黒瑪瑙を頭に乗せた目黒先生が、ゆっくり歩を進めた。スクエイアの証で空を飛んでいたのか。
「真坊ちゃん!」
目黒先生の脇に抱えられていたロロが、器用に抜けて私の元へ走った。
「こんなにお怪我を……治しますね!」
呪文を唱える前に、ロロは跡見さんに目を合わせた。
「坊ちゃんとクロエ様に、謝ってくださいませ」
「ロロ、もういいんだ。彼女を追い詰めたのは、私なんだ」
「え……?」
目黒先生が、ロロと私の肩を叩いた。
「スクエイアが揃ったということじゃ」
ロロが指を折って数える。
「ジゲンⅢのスクエイアはいらっしゃらないようですが」
私は片手を胸に当てた。
「これから話そうとしていたんだけれど、それは私なんだ」
ロロは目を丸くし、目黒先生はうなずいた。
「なんと幸せな一日なのでしょう……!」
「そなたなら覚ると信じておったぞよ」
遠巻きにして眺めている跡見さんに、私は声をかけた。
「時間を進めてくれないか。閉会後、直ちにつながりの塔へ行こう」
跡見さんは飛行機を折って、こちらへ放った。
(ウグイスダニ、スクエイアの証は? ゲートへ辿り着くには必須よ)
ジゲンⅠは黒瑪瑙、ジゲンⅡは黄玉、ジゲンⅣは蒼玉、ジゲンⅢは緑柱石だったな。
「持っていないよ。一体、どこでもらえるのかな?」
跡見さんがやや怪訝な顔をした。
(ウグイスダニミノルが預かっていたはずよ)
「親父が?」
ここまで来て、新たな課題がスクエイアを阻んだ。




